Fisherのz変換 |
標本相関が相関の2変量正規分布からの標本を使用する場合、次の統計量
は、自由度がであるStudentの分布を持ちます。
相関の単調変換 (Fisher 1921)の場合、
統計量は、次の平均と分散を持つ近似正規分布を持ちます。
ここで、となります。
変換されたでは、近似分散は相関から独立になります。また、の分布が厳密な正規分布ではない場合であっても、の任意の値の標本サイズが大きくなると、同分布は急速に正規性を持つようになります(Fisher 1970, pp. 200–201).
帰無仮説で値を計算するには、次の式
を平均がゼロで分散がの正規ランダム変数として取り扱います。ここで、です(Fisher 1970, p. 207; Anderson 1984, p. 123) 。
CORRプロシジャでは、帰無仮説に基づいて値を計算する場合、バイアス調整が必ず使用されます。
FISHERオプション内のALPHA=オプションは、信頼水準の値を指定します。RHO0=オプションは、帰無仮説での値を指定します。BIASADJ=オプションは、信頼水準でバイアス調整を使用するかどうかを指定します。
TYPE=オプションは、信頼限界のタイプを指定します。TYPE=TWOSIDEDオプションは、帰無仮説の下での両側信頼限界と値を要求します。片側信頼限界の場合、TYPE=LOWERオプションは、帰無仮説の下での下側信頼限界と値を要求します。TYPE=UPPERオプションは、帰無仮説の下での上側信頼限界と値を要求します。
相関の信頼限界は、バイアス調整の有無にかかわらず、パラメータの信頼限界を通じて導かれます。
バイアス調整を行わない場合、の信頼限界を計算するには、次の式
が平均ゼロで分散の正規分布を持つものとして扱います。
すなわち、の両側の信頼限界は次のように計算されます。
ここで、は標準正規分布の番目のパーセント点です。
バイアス調整を行う場合、の信頼限界を計算するには、次の式
が平均ゼロで分散の正規分布を持つものとして扱います。ここで、バイアス調整関数(Keeping 1962, p. 308)は次のようになります。
すなわち、の両側の信頼限界は次のように計算されます。
続いて、上記のおよびに関して計算された信頼限界の変換を元に戻すことにより、相関の信頼限界が導かれます。
バイアス調整を行う場合、CORRプロシジャは次のような相関推定値も表示します。
Fisher (1970, p. 199)は、次に示すような変換の具体的な応用を紹介しています。
母集団相関が指定の値に等しいかどうかのテスト
2つの母集団相関が等しいかどうかのテスト
異なる標本から計算した相関推定値の結合
オブザベーション数がで標本相関がである標本からの母集団相関が、与えられたに等しい場合、まずおよび: およびに対して変換を適用します。
続いて、値を計算するには、次の式
を平均ゼロで分散の正規ランダム変数として扱います。
標本推定値およびは、それぞれおよびというオブザベーションの2つの独立した標本から計算されます。2つの対応する母集団相関およびが等しいかどうかをテストするには、まず変換を2つの標本相関であるおよびに対して適用します。
値は、等しい相関の帰無仮説の下で導かれます。すなわち、差は、平均がゼロで分散がである正規ランダム変数として分布されます。
さらに、2つの標本が同じ相関をもつ母集団から抽出されたと仮定すると、結合された相関推定値を計算できます。対応する値の重み付き平均は次の式で表されます。
ここで、重みは、それらの分散に対して反比例します。
このため、結合された相関推定値は、およびとなります。これらの応用に関する詳細は、例2.4を参照してください。
なお、このアプローチは、複数の標本を含めるように拡張できます。