標本相関rが相関の2変量正規分布からの標本を使用する場合、次の統計量
は、自由度がn-2であるStudentのt分布に従います。
相関rの単調変換(Fisher, 1921)の場合、
統計量zは、次の平均と分散を持つ近似正規分布に従います。
ここで、です。
変換されたでは、近似分布は相関から独立になります。また、の分布が厳密な正規分布ではない場合であっても、の任意の値の標本サイズが大きくなると、同分布は急速に正規性を持つようになります(Fisher, 1973, pp. 200–201)。
帰無仮説で、p値を計算するには、次の式
を平均ゼロで分散がである正規ランダム変数として扱います。ここで、です(Fisher 1973, p. 207; Anderson 1984, p. 123)。
CORRプロシジャでは、帰無仮説に基づいてp値を計算する場合、必ずバイアス調整が使用されます。
FISHERオプション内のALPHA=オプションは、信頼水準の値を指定します。RHO0=オプションは、帰無仮説での値を指定します。BIASADJ=オプションは、信頼限界でバイアス調整を使用するかどうかを指定します。
TYPE=オプションは、信頼限界の種類を指定します。TYPE=TWOSIDEDオプションは、帰無仮説の下での両側信頼限界とp値を要求します。片側信頼限界の場合、TYPE=LOWERオプションは、帰無仮説の下での下側信頼限界とp値を要求します。TYPE=UPPERオプションは、帰無仮説の下での上側信頼限界とp値を要求します。
相関の信頼限界は、バイアス調整の有無にかかわらず、パラメータの信頼限界を介して導かれます。
バイアス調整を行わない場合、の信頼限界を計算するには、次の式
が平均ゼロで分散がである正規分布に従うものとして扱います。
すなわち、の両側の信頼限界は次のように計算されます。
ここで、は標準正規分布の番目のパーセント点です。
バイアス調整を行う場合、の信頼限界を計算するには、次の式
が平均ゼロで分散がである正規分布を従うものとして扱います。ここで、バイアス調整関数(Keeping, 1962, p. 308)は次のようになります。
すなわち、の両側の信頼限界は次のように計算されます。
続いて、上記のおよびに関して計算された信頼限界の変換を元に戻すことにより、相関の信頼限界が導かれます。
バイアス調整を行う場合、CORRプロシジャは次のような相関推定値も表示します。
Fisher (1973, p. 199)は、次に示すようなz変換の具体的な応用を紹介しています。
母集団相関が指定の値に等しいかどうかのテスト
2つの母集団相関が等しいかどうかのテスト
異なる標本から計算した相関推定値の結合
オブザベーション数がで標本相関がである標本からの母集団相関が、与えられたに等しい場合、まずおよび: およびに対してz変換を適用します。
続いて、p値を計算するには、次の式
が平均ゼロで分散がである正規分布に従うものとして扱います。
標本推定値およびは、それぞれおよびというオブザベーションの2つの独立した標本から計算されます。2つの母集団相関およびが等しいかどうかをテストするには、まずz変換を2つの標本相関であるおよびに対して適用します。
p値は、等しい相関の帰無仮説の下で導かれます。すなわち、差は、平均がゼロで分散がである正規ランダム変数として分布されます。
さらに、2つの標本が同じ相関をもつ母集団から抽出されたと仮定すると、結合された相関推定値を計算できます。z値の重み付き平均は次の式で表されます。
ここで、重みは、それらの分散に対して反比例します。
このため、結合された相関推定値は、およびとなります。これらの応用に関する詳細は、例2.4を参照してください。
なお、この手法は、複数の標本を含めるように拡張できます。