SAS最新調査 マネーロンダリング対策のプロ、AIの活用領域を拡大するも導入進度は依然として鈍化
SASとKPMGが実施したACAMS対象のグローバル調査、 AIと機械学習(ML)の統合は進行しつつも本格導入はゆるやかに進行
データおよびAIのリーディング・カンパニーである米国SAS Institute Inc.(以下SAS)は、パートナーであるKPMGとともに、マネーロンダリング対策(AML)におけるAI技術の活用が、法令遵守と金融犯罪対策に取り組む金融機関にとって必要不可欠であることを明らかにする調査結果を発表しました。KPMGとの提携によりまとめた最新のAML技術に関する調査によると、AIへの関心は高まっているものの、本格的な導入は遅れている現状が示されています。Association of Certified Anti-Money Laundering Specialists(ACAMS)の会員850人を対象にしたグローバルな調査では、次のような結果が得られました。
- AIおよび機械学習(ML)の導入は依然限定的:調査によると、実際にAI/MLソリューションを運用していると回答したのはわずか18%にとどまりました。その他18%はAI/MLソリューションを試用中で、25%は今後1年〜1年半以内にAI/MLを導入予定、40%は現状AI/MLの導入予定はないと回答しています。
- 生成AI技術への関心は堅調を保ちつつも、その採用には慎重な構え:調査対象者の約半数が、現在、生成AIを試用中(10%)または調査段階にある(35%)と回答しました。新興技術としては高い関心度が見られる一方で、55%が生成AIの導入は現在のところ検討していないと回答しています。
今回発表した調査結果「The road to integration: The state of AI and machine learning adoption in anti-money laundering compliance(AMLコンプライアンスへのAI/ML導入状況)」は、2021年に公開された類似調査を補足するもので、マネーロンダリング対策へのAI/MLの導入状況を掘り下げています。また、SASが公開しているデータダッシュボードでは、ユーザーは調査結果からのインサイトを地域や組織の規模ごとにフィルタリングし、視覚的に確認できます。
ACAMSのチーフアナリスト兼コンテンツ編集担当ディレクター、キアラン・ビア(Kieran Beer)氏は、次のように述べています。「本調査で明らかになったのは、AML担当者が、AIは規制当局により冷視されていると考えていることです。規制当局がAI/MLのイノベーションを推進・奨励していると回答したのは51%であり、2021年よりも15ポイント減少しています。規制当局はAI/MLの導入について懐疑的または慎重であるという回答は28%から36%に上昇しました。また、規制当局を「変化に抵抗姿勢である」と見る回答者は、6%から13%に倍増しています」
KPMG Internationalの不正・金融犯罪トランスフォーメーションリードを務め、KPMGドイツのパートナーであるティモ・プルコット(Timo Purkott)氏は、次のように述べています。「AIと機械学習が、全ての金融犯罪に関する問題を即座に解決できるわけではありません。しかし、特に大量のデータを扱う分野では、その効果は確実に高まっています。具体的には、取引監視におけるアラートの自動化、企業全体のリスク評価の作成、疑わしいふるまいの報告、AMLチェック、誤検知の削減への取り組みなどが挙げられます。鍵となるのはデータ活用です。AIおよびMLの価値を最大限に引き出し、金融犯罪を抑制するためには、組織によるデータ管理基盤への投資を強化する必要があります」
完全導入して初めてもたらされるAIとMLの価値
本調査により、マネーロンダリング対策におけるAI技術の活用方法や企業が運用全体への導入に慎重である理由に関し、多くのインサイトが導き出されました。
組織はAI/MLのさらなる使用用途を模索:2021年に実施した最初の調査では、回答者の78%がAI/MLの導入の主な理由として挙げたのは、「調査および規制の成果の質の改善(40%)」または「誤検知の削減(38%)」でした。今年の調査では、回答はより多様化しました。上述の上位2つの回答は前回同様最も高かったものの、合計は11%減少し、67%にとどまりました。一方、複雑なリスクの検出は17%から21%に増加し、「それ以外」という回答は5%から13%に急増しています。
AI/MLの導入を阻む理由も多様化:2021年、AI導入の最大の障壁として、予算の制約(39%)が挙げられました。今回の調査では34%に減少し、微増した「規制上の必要性がない(37%)」がそれを上回る結果となりました。「スキル不足」という懸念は薄れつつあり、前回から約半減の11%でした。一方で、「その他」という回答は5%から19%に急増し、企業の課題が多様化していることが示されました。
誤検知の削減が優先度として上昇:AI/MLの展開に関して優先すべき事項について、AML担当者の38%が、「既存の監視システムで発生する誤検知の削減」を挙げています。これは2021年より8%増加となります。「調査およびデューデリジェンスのためのデータ拡充の自動化(25%)」と、「高度なモデリング技術による新規リスクの検知(23%)」も、依然として重要視されているものの、前回調査より数ポイント減少しています。残りの13%は、「行動解析に向けた顧客セグメンテーション」と回答しました。
AI/MLが最も価値を発揮する領域としても、「誤検知および見逃しの削減(38%)」がトップに挙げられています。一方で、「より迅速かつ正確な調査の実施(34%)」と「アラートのリスク度合いを見極めるトリアージ作業(28%)」の2つの項目が僅差で続いています。
MLの影響は大きいが、NLPの重要性も見落とすべきではない:最も影響のある技術としてランクインした上位3つに注目してみると、「ML」が依然として強く、2021年から6%向上し、58%でトップでした。「ロボティックプロセスオートメーション(ソフトウェアロボットによる業務自動化)」はそれに対して28%に低下して2位となり、「自然言語処理(NLP)」は14%と3位でした。大量データのパターンを特定することができるMLの能力は、確かに大きな影響をもたらします。一方で、NLPへの関心の薄さは、不十分な機能によりコンプライアンスチームが早期警告の予兆を見逃す危険性があることを示唆しているとも言えます。
優位性を勝ち取るための基盤づくり
SASのリスク・不正対策・コンプライアンスソリューション担当シニアバイスプレジデントであるスチュー・ブラッドリー(Stu Bradley)は、次のように述べています。「AIとMLが秘める可能性を最大限に引き出すには、データソース、チーム、技術を融合することが鍵となります。その最初のステップは、あらゆるソースからのデータを組み込んだデータエコシステムを構築することです。このACAMSの調査結果では、回答者の86%がAML、不正対策、情報セキュリティ対策の連携に何らかの形で取り組んでいることがわかりました。回答者の3分の1近くが、機能全体にわたるケース管理の完全統合を果たし、その他の3分の1は、部門横断的なチームが連携することにより、金融犯罪の危険から守るための管理体制を確立したと回答しています。
中には、規制ガイドラインが策定されるまで導入を保留にしている企業も存在していることでしょう。ガバナンスを重視しながらデータと運用の統合を推進する企業は、AIとMLのイノベーションに対応するための基盤づくりに取り組んでいます。それにより、二の足を踏んでいる企業よりも優位な立場を築くことができるでしょう」
ACAMSについて
ACAMSは、金融犯罪対策に関する学習機会の提供、ベストプラクティスの共有、ネットワーキングの機会を提供する金融犯罪対策(AFC)に従事するプロフェッショナルの国際的会員組織です。ACAMSは200以上の国と地域に11.5万人を超える会員を擁し、マネーロンダリング対策/テロ資金供給対策、不正対策・制裁に関する知識の共有、ソートリーダシップ、リスク抑制サービス、ESGイニシアチブ、官民対話プラットフォームなどを通じて金融犯罪撲滅というミッションに取り組んでいます。同組織が認定するCAMS(Certified Anti-Money Laundering Specialist)認定資格は、AFCプロフェッショナル向けのゴールドスタンダードとして位置付けられています。また、同組織が認定するその他の資格には、制裁のプロフェッショナルのためのCGSS(Certified Global Sanctions Specialist)認定資格、仮想通貨分野におけるAFC実務担当者のためのCCAS(Certified Cryptoasset Anti-Financial Crime Specialist)認定資格、不正対策プロフェショナルのためのCAFS(Certified Anti-Fraud Specialist)認定資格があります。世界中の60を超えるACAMSチャプターが、トレーニングやネットワーキングなどの活動を通じて、組織のミッションをさらに広げています。詳しい情報については、acams.orgをご確認ください。
KPMG Internationalについて
KPMGは、監査、税務、アドバイザリーサービスを提供する、独立したプロフェッショナルファームによるグローバルな組織体です。KPMGは、KPMG International Limited(「KPMGインターナショナル」)のメンバーファームがプロフェッショナルサービスを提供するためのブランドです。「KPMG」は、KPMGの組織内の個々のメンバーファーム、または複数のメンバーファームをまとめて指す場合に使用されます。KPMGは142の国と地域でサービスを提供しており、世界中のメンバーファームに275,000人以上のパートナーと従業員を擁しています。KPMGの各ファームは、法律上独立した別の組織体です。KPMGの各メンバーファームは、それぞれの義務と責任を負います。
KPMG International Limitedは英国の保証有限責任会社(private English company limited by guarantee)です。KPMG International Limitedおよびその関連事業体は、クライアントに対していかなるサービスも提供していません。KPMGの組織体制の詳細については、home.kpmg/governanceをご参照ください
*2025年2月25日に米国SAS Institute Inc.より発表されたプレスリリースの抄訳です。本プレスリリースの正式言語は英語であり、その内容および解釈については英語を優先します。
SAS について
SASはデータとAIのリーディング・カンパニーです。SASの革新的なソフトウェアと業界特化型のソリューションが、世界中のお客様にデータを信頼できる意思決定に変換するパワーを届けています。SASは「The Power to Know®(知る力)」をお届けします。
*SASとその他の製品は米国とその他の国における米国SAS Institute Inc.の商標または登録商標です。その他の会社名ならびに製品名は、各社の商標または登録商標です。
プレスリリースに関する
お問い合わせ
- SAS Institute Japan株式会社
TEL: 03-6434-3700
E-mail: jpnpress@sas.com

SASによるAML技術の調査では、ACAMSの会員850人を対象とした調査に基づき、AIの進歩の遅れが金融犯罪対策を脅かす可能性があることが示唆されています。
この調査のデータダッシュボードでは、ユーザーが地域や資産規模ごとに調査結果をフィルタリングできるようになっています。