グローバル調査: AI活用による政府の生産性向上に向けた取り組みにおいて文化を過小評価することは避けるべき
SASがEconomist Impactに業務委託した調査が政府の生産性、AI、文化の相関関係を分析
データとAIのリーディング・カンパニーである米国SAS Institute Inc.(以下SAS)は、SASがEconomist Impactに業務委託して実施した調査の最新レポート「Reimagining the Future of Public Sector Productivity(公共部門の生産性の未来を再構想)」 において、政府の生産性向上には、文化とテクノロジーの両方を重視する必要があることを明らかにしました。本調査は、南北アメリカ、ヨーロッパ、アジア太平洋、中東の26カ国の1,550人を超える政府職員と公共医療従事者を対象に、公共部門の生産性改革の機会と障壁に関して行われました。
Economist Impactの政策・洞察部門の責任者であるジョナサン・バードウェル(Jonathan Birdwell)氏は、次のように述べています。「財政上の制約にしばられ、高齢化、気候変動、不安定な経済といった複雑な課題に対処する公共サービスへの需要が高まるなか、政府が生産性改革を実行するには断固たる行動が必要になってきます。たとえば、新型コロナウイルス感染症への対応として、一部の高所得国ではGDPの21%に相当する財政支出が行われました。これは危機の際に政府介入が果たす重要な役割を浮き彫りにしています。
今回の調査によると、デジタルトランスフォーメーションは不可欠ですが、それだけでは十分ではありません。成功への鍵を握るのは、変化への抵抗を克服し、職員を新しいテクノロジーの設計と導入に関与させる柔軟な組織構造です。AIは、公共部門による市民へのサービス提供方法を変革し、職員の業務を改善します」
本レポートの主な調査結果は、以下のとおりです。
- 公共部門の生産性を向上するうえでデジタルトランスフォーメーションと組織の再設計が果たす欠かすことのできない役割
- 予測分析やサイバーセキュリティ/不正防止など、政府が検討している主なAI事例
- 段階的な生産性改革の重要性と予算の制約により生じる課題
- プロセスの合理化と改善、応答速度の向上、サービス提供の強化に向けた社外サプライヤーとの連携の重要性
- 生産性改革の設計と実施に公共部門職員を深く関与させることの必要性
文化とテクノロジーの両方が必要
本レポートによると、政府は電子政府、データ駆動型サービス、およびAIへの投資から大きな利益を得ているものの、変化をもたらすには十分ではありません。調査の結果、生産性を高める戦略としては、適応型の組織設計とデジタルトランスフォーメーションが最も重要であり、その重要度はほぼ同等であることが示されました。さらに、デジタルトランスフォーメーションに着手している政府組織の方が組織改革を成功裏に進められる可能性が高いことも判明しています。
しかしながら、回答者の4分の1以上が現時点で適応型の組織構造の設計や、デジタルトランスフォーメーションへの投資に取り組んでいないとしており、このことが生産性向上の取り組みを大きく阻害する可能性があります。
SASのグローバルガバメントストラテジックアドバイザーであるジェニファー・ロビンソン(Jennifer Robinson)は、次のように述べています。「テクノロジーだけでは、政府の生産性を向上させることはできません。新しいイノベーションに適応する柔軟な文化があれば、時間とともに生産性が向上し、大きな違いを生み出すことができます」
リスクを取ることに政府が慎重になるのは当然であり、今回の調査でも70%の回答者が「他の組織において効果が実証されるまでは、自ら新しいテクノロジーを採用することはない」と回答しています。 また、政府の予算には限りがあり、新しいテクノロジーを取り込む能力が不足している場合も考えられます。データプライバシーに関する不安(75%)と予算の制約(64%)も、テクノロジー導入を成功させるうえでの重大な課題とされています。さらに、47%の回答者が生産性改革の障壁として、生産性を測定する手法がないことを挙げています。
回答者はこれらの障壁を認識してはいるものの、圧倒的多数(90%)がデジタル技術はリスクよりも組織にもたらすメリットの方が大きいと考えています。
AIが主役に
回答者の大半が、今後3年間でAIが組織内の生産性向上に重大な影響を与えるようになると考えています。本レポートでは、政府機関におけるAIの有望な活用方法について探るとともに、世界各地の政府機関の事例を取り上げています。調査の結果、AI事例として最も多く選ばれたのは予測分析であることが明らかになりました(回答者の66%が選択)。AIのシミュレーション能力を活かしてリスクを予測して計画することは、特に魅力的な活用事例の1つとなっています。
人気の高いもう1つのAI用途がサイバーセキュリティと不正防止であり、回答者の54%が選択しています。金融犯罪やマネーロンダリングの複雑な手口、さらには狡猾な犯罪者によるAIの悪用により、不正対策の担当者は自らのテクノロジー利用の強化を余儀なくされています。
生産性向上の鍵を握るサプライヤー
調査結果は、AIの調達モデルを再考する必要があることを示しています。単一の既製製品やプロジェクトにフォーカスした従来の調達モデルとは対照的に、AIでは多くの場合、カスタマイズと継続的な更新が必要になります。また、調達部門は複数の分野を管理していることが多く、新しいテクノロジーの品質を評価するのは容易ではありません。SaaSモデルに慣れていないことと、データ集約型テクノロジーの管理の複雑さがネックとなり、多くの公共部門がテクノロジーの導入を躊躇する結果となっています。
テクノロジープロバイダーは、このプロセスの大切なパートナーとなり得ます。調査では、回答者のほぼ半数(49%)が、生産性向上のための最も効果的な戦略の1つとして、社外サプライヤーへのアウトソーシングを挙げています。
職員を巻き込む
生産性改革は、従業員の理解と協力なしには成功しません。調査結果もまた、従業員の関与を深める必要性を示しています。従業員と管理者の関与が必要な事柄についての設問では、ニーズの見極め(15%)、テクノロジーの種類の選択(14%)、テクノロジーの導入(36%)という回答は少数派でした。公共部門の職員が新しいテクノロジーの利点を理解したうえで、適切なトレーニングを受けるとともに、継続的な改善のためのフィードバックを提供できる環境が求められます。
生産性改革は、職員の体験を向上させながら、政府サービスが社会への影響を高めるという枠組みで捉えると最も大きな効果を発揮します。実際、回答者の58%が、組織内で生産性の測定指標として、職員の満足度を挙げており、次いで市民の満足度(56%)が続いています。
生産性改革によって、応答時間の短縮、コミュニケーションの合理化、プロセスの改善を行うことで、サービス提供の向上を図れます。これにより、業務の停滞やバーンアウト(燃え尽き症候群)が抑制され、職員の満足度が高まると同時に、市民にとってもより迅速かつ円滑な行政サービスの提供を受けることが可能となります。
公共部門の生産性向上に向けた提言
本レポート「Reimagining the Future of Public Sector Productivity」は、公共医療機関を含む公共部門の職員を対象としたグローバル調査の結果、学術機関、政府機関、非政府組織、国際多国間機関の専門家への綿密なインタビューの回答に基づき構成されています。調査結果と定性的洞察とあわせて、中央政府や地方自治体においてステークホルダーが野心的かつ実現可能な生産性改革の推進に向けた提言を提供しています。
*2025年1月29日に米国SAS Institute Inc.より発表されたプレスリリースの抄訳です。本プレスリリースの正式言語は英語であり、その内容および解釈については英語を優先します。
SAS について
SASはデータとAIのリーディング・カンパニーです。SASの革新的なソフトウェアと業界特化型のソリューションが、世界中のお客様にデータを信頼できる意思決定に変換するパワーを届けています。SASは「The Power to Know®(知る力)」をお届けします。
*SASとその他の製品は米国とその他の国における米国SAS Institute Inc.の商標または登録商標です。その他の会社名ならびに製品名は、各社の商標または登録商標です。
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- SAS Institute Japan株式会社
TEL: 03-6434-3700
E-mail: jpnpress@sas.com
SASがスポンサーを務めるEconomist Impactの新しい調査は、政府の生産性、AI、文化の複雑な結びつきを探るものです。