SAS最新調査:行政機関における生成AIへの期待感は、 導入体制整備の実情を上回る
行政機関における生成AIへの期待は高く、多額の予算が割り当てられている一方、 セキュリティ体制の整備やトレーニングが必須; 合成データの活用機会を逃す恐れも
データとAIのリーディング・カンパニーである米国SAS Institute Inc.(以下 SAS)とColeman Parkes Researchによる最新のグローバル調査「Your Journey to a GenAI Future: A Strategic Path to Success for Government(生成AIの未来に向けて:行政機関におけるAI導入成功のための戦略)」によると、生成AIの導入において、行政機関は他のセクターに大きく遅れをとっていることが明らかになりました。しかし、行政機関の回答者の60%が生成AIによりイノベーションが促進されると考えており、生成AIを使い始めた行政機関では、職員の満足度、コンプライアンス、運用コスト、時間節約の面ですでに改善が見られています。
現時点での生成AIの使用状況は、他のセクターに10%遅れをとってはいるものの(44%対54%)、早期に導入を決めた機関の成功例は、生成AIの持つ大きな可能性を示唆するものとなっています。実際、行政機関の意思決定者の84%が、次年度に生成AIに投資を計画しており、そのうち91%がすでに生成AI専用の予算を確保しています。
SASの米国公共部門・ヘルスケア担当バイスプレジデントのグラント・ブルックス(Grant Brooks)は、次のように述べています。「行政機関は生成AIをいち早く導入したわけではないものの、生成AIを使って生産性を向上させ、市民サービスを変革する態勢を整えています。AIを慎重かつ責任ある形式で導入することが重要ですが、計画と管理をしっかりと行えば、生成AIが国民と地域社会に大きな価値をもたらすと確信しています。これまで半世紀にわたり、SASは重大な技術革新を通じて行政機関と連携してきました。生成AIを活用して、これからどのように協力していけるのか、楽しみにしています」
ガバナンス、コミュニケーション、ポリシーの改善により組織的障壁を取り除くことが必要
データプライバシー、データセキュリティ、AIガバナンスがすべてのセクターに共通する重要な懸念事項です。しかし、行政機関の回答者は他のセクター(46%)に比べて文化的な変化への抵抗をより大きな課題と捉えており(52%)、レガシーシステムとの互換性も課題になると考えています。
さらに、他のセクターと比べて行政機関では、規制が十分に整っていなかったり、生成AIに対する理解不足によって、生成AIによる効果が阻害される可能性があります。多くの行政機関が生成AIのガイダンスを急いで整備する一方で、職場で許される生成AIの使い方とそうでないものについての指針をまとめている行政機関は52%にとどまっています(全セクターでは61%)。
今回の調査によると、行政機関は他のセクターに比べてガバナンスとモニタリングに割り当てる予算が少なく、64%の行政機関では、生成AI予算の10分の1以下しかガバナンスやモニタリングに充てていません。さらに、公的部門の回答者の50%が、フレームワークが存在しないか、あってもアドホック的で非公式であると回答しています(全体では39%)。
急速に進む生成AIに関する規制整備に準拠しながら生成AIの価値を最大限に引き出すことが、あらゆる分野で共通の課題となっています。しかし、行政機関は他のセクターよりも体制整備が遅れている可能性があり、生成AIの現行および今後の規制に対して「完全に」または「ある程度」整備できている、と回答した行政機関のリーダーの割合は51%でした。これに対し、全セクターでは58%でした。
また認識不足も懸念されています。公的部門の職員のうち、自組織の生成AI導入についてよく知っていると回答した割合はわずか35%と、全セクターの平均である46%を大きく下回っています。停滞を示すこの指標は、幹部レベルの問題に起因している可能性があり、行政機関の意思決定者のうち、生成AIとその事業プロセスへの影響について「よく理解している」または「完全に理解している」と答えた割合は38%にとどまり、全セクター平均の48%を下回っています。
一方で、朗報もあります。行政機関における導入率の低さは、ポリシーが十分に整備されていないことと、個人の理解がやや遅れていることと関連しており、逆に言えば、実践を通じての学びが重要であることを示しています。現在、生成AIの導入を進めている行政機関は、すでにさまざまなメリットを享受しており、多くの場合、他のセクターよりも高い成果をあげています。生成AIの導入により「職員のエクスペリエンスと満足度が向上した」と回答した行政機関の意思決定者は全セクター平均を上回る94%、また、「運用コストと時間の節約につながった」との回答も84%にのぼります。
SASのグローバル・ガバメント・ストラテジック・アドバイザーのジェニファー・ロビンソン(Jennifer Robinson)は、次のように述べています。「行政機関が生成AIの導入に消極的なのは無理もないことですが、すでに生成AIを導入している公共機関の先駆者たちは、その利用が増えるにつれて信頼度が高まり、イノベーションが加速することを示しています。大規模言語モデル、デジタルツイン、合成データは、政府機関にとって非常に大きな可能性を秘めており、これらを最大限に活用するためのプロセスとポリシーが整いさえすれば、さらなる価値をもたらすでしょう」
合成データへの関心の低さがイノベーションを阻害
合成データは、実際のデータを正確に模倣して作られた人工データです。これらのデータでは、学習元の実際のデータセットと同じ統計的特性、確率、パターン、特徴が再現され、99%の統計的有効性が確認されています。
たとえば、交通の流れをシミュレートした合成データは、たとえ運輸省が数カ月分の交通データしか持っていなくても、what-ifシナリオを用いて道路改修の効果検証をすることができます。機密データを模倣できるため、合成データを作成して、健康記録、学生記録、納税情報を処理するシステムのトレーニングおよびテストを行うことも可能です。
しかし、今回の調査の結果、行政機関の意思決定者の32%が合成データの使用を検討していないと答えており、これは他のセクターでの23%を上回る数字です。
ロビンソンは、次のように指摘しています。「合成データは、データプライバシーの厳格な規制に従わなければならない行政機関において、特に有用です。プライバシー規制に違反したり、機密情報が漏洩したりするリスクを抑えつつ、調査、テスト、分析などさまざまな目的で合成データを使用することができます」
SAS:公共機関のAIの過去、現在、そして未来
AIや生成AIなどのテクノロジーは、公共機関がどのようにサービスを提供できるかについて新しいアイデアをもたらし、提供するサービス自体を再考するきっかけとなります。SASの新しいeブックで、公共サービスの未来について詳しく解説しています。
SASは、強力なSAS® Viya®から、公共機関を対象としたソリューションにいたるまで、さまざまな自社ソフトウェアにAI機能を組み込んでいます。SASのAI機能は、解釈可能性と透明性を重視しており、行政機関が個人情報を適切に管理・保護しつつ、アルゴリズムの出力情報をより深く理解することを支援します。SASのアナリティクスとAIが、行政機関が今日直面する課題の解決にどのように活用されているかの詳細は、www.sas.com/en_us/industry/government/technology/ai.htmlで詳しく紹介しています。
*2024年10月3日に米国SAS Institute Inc.より発表されたプレスリリースの抄訳です。本プレスリリースの正式言語は英語であり、その内容および解釈については英語を優先します。
SAS について
SASはデータとAIのリーディング・カンパニーです。SASの革新的なソフトウェアと業界特化型のソリューションが、世界中のお客様にデータを信頼できる意思決定に変換するパワーを届けています。SASは「The Power to Know®(知る力)」をお届けします。
*SASとその他の製品は米国とその他の国における米国SAS Institute Inc.の商標または登録商標です。その他の会社名ならびに製品名は、各社の商標または登録商標です。
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