カスタマー・エクスペリエンス管理
概要と重要性
カスタマー・エクスペリエンス(顧客体験)とは、「顧客ライフサイクルにおいて顧客がブランドに関して行うすべての交流の結果として形成される、顧客とブランドの関係に関する顧客の意識的および無意識的な認識」と定義できます。
カスタマー・エクスペリエンス管理に関しては、ガートナー社の定義が良くまとめられています。それは「顧客の期待どおりの、または期待を超える顧客対応(顧客との交流や対話)を設計・提供することにより、顧客の満足度、ロイヤルティ、支持を向上させる取り組み」というものです。
カスタマー・エクスペリエンス管理は、オンラインの顧客に対するサービスに限定されません。顧客がどこで買い物をし、どのブランドのドッグフードを購入しているかを調べて終わり、ということでもありません。顧客を総合的に理解してパーソナライズされた経験を提供することにより、顧客のロイヤルティを維持しながら、ブランドを周囲に広める支持者になってもらうことを目指します。顧客自身によるクチコミには非常に高い宣伝効果があります。
このような深い顧客理解は何もせずに手に入るものではありません。組織全体のすべてのタッチポイントとチャネルから知見・洞察を導き出すことによってのみ得られます。オンラインの各種チャネルを始めとするすべてのチャネルから集めた大量の顧客データを分析し、迅速かつ正確に価値ある洞察・知見を導き出す必要があります。
カスタマー・エクスペリエンス管理が重要な理由
カスタマー・エクスペリエンスという概念が理想論や感情論に聞こえる人もいるかもしれませんが、それは正しい理解ではありません。実際、非常に競争が激しく非常に緊密につながっている今日のグローバル市場では、カスタマー・エクスペリエンスは重要な差別化要因となっています。カスタマー・エクスペリエンスを効果的に管理することには、明らかにビジネス価値があります。カスタマー・エクスペリエンス管理を適切に行うと、次のメリットが得られます。
- 差別化された経験を提供することにより、ブランドの好感度が高まる
- クチコミ効果により、既存の顧客からの売上増と新しい顧客の獲得の両面で収益が向上する
- 価値が高く印象的な顧客対応により、顧客ロイヤルティの向上と支持者の獲得が促進される
- 顧客離反の抑制により、コスト削減が促進される
カスタマー・エクスペリエンス管理の関連資料
マーケティング担当者の課題
- すべてのチャネルで一貫したブランド経験を提供する。チャネル毎のサービスレベルの違いを顧客が許容してくれることもありますが、顧客が期待しているのは一貫した対応です。しかしチャネルの多様化により、すべてのチャネルで一貫性を保つことが難しくなっています。
- チャネル横断でブランド経験を統合する。すべてのチャネルのカスタマー・エクスペリエンスを統合して一元管理することが理想ですが、技術上の問題や従来のプロセス、組織内の縦割り意識などがその実現を阻みます。
- データを統合して一元的な顧客理解を進める。対応履歴やチャネル、製品、時間などに関する顧客データを統合し一元的な顧客理解を深めることで、統一性と連携性の高い顧客コミュニケーションを展開することが可能になります。しかし部門間の分断、データの散在、一貫性のないプロセスなどにより、その実現が難しい場合があります。
カスタマー・エクスペリエンス管理成功への3つのステップ
カスタマー・エクスペリエンスに影響を与える要因は数多くありますが、どこから検討を始めればよいのでしょうか?カスタマー・エクスペリエンス管理を成功させるためのステップは次の3つです。
- 完全な顧客プロファイルを作成し、維持管理する。
- すべての顧客対応を顧客一人ひとりパーソナライズする。
- 常に適切なタイミングで、適切な場所に、適切な情報を届ける。
完全な顧客プロファイルを作成し、維持管理する
優れたカスタマー・エクスペリエンスを提供するためには、これまで以上に顧客をよく理解することが必要になります。つまり、完全な顧客プロファイルを作成し、継続的に維持管理する必要があります。これにより、複数チャネルのすべてのタッチポイントにおける顧客行動を総合的に把握および測定することが可能になります。顧客理解が深まるほど、適切なオファーをより効果的に提供できます。より適切なオファーを提供するほど、顧客との関係が深まり、ロイヤルティや維持率などの指標が向上していきます。
企業は従来、デモグラフィック属性(年令や性別等)、トランザクション、ログなどの構造化データを用いて顧客プロファイルを作成してきました。現在ではソーシャルメディア、動画、RFID、センサー、位置情報といった新しい種類のデータも取り込み、複数のチャネル間で連携させて利用する必要があります。また、顧客ライフサイクル全体に散在している接触/反応/取引の履歴や、顧客価値、収益性、行動分析結果なども活用する必要があります。
従来の構造化データと新しい種類のデータを組み合わせて分析することにより、次のことが可能になります。
- 特定のタッチポイントのカスタマー・エクスペリエンスを向上させる方法を理解する。
- 顧客のニーズと期待を理解する。
- より良い意思決定をより迅速に行う。
カスタマー・エクスペリエンスのパーソナライズ
顧客について十分に理解した後、その知識にもとづいて個々の顧客対応をパーソナライズします。顧客そのものだけでなく、顧客の置かれている状況にも注目することが重要です。継続的に新しいソースを追加して既存の中核となるデータを拡充していくと、対象者をターゲティングする際に特に効果的です。状況も考慮して顧客を絞り込むことにより、顧客が最も受け入れやすいタイミングで、機知に富んだ適切なオファーやお勧め情報、アドバイス、サービスなどを提供できるようになります。
現在の顧客はかつてないレベルの存在感、影響力、選択肢を手にしています。パーソナライズされた適切で魅力的なメッセージをタイムリーに提供しなければ、顧客はすぐに離れていきます。逆にそれを行えば、ブランドのロイヤルティを向上させることができます。
常に適切なタイミングで、適切な場所に、適切なメッセージを提供
各タッチポイントで最大の価値を提供し、カスタマー・エクスペリエンスを改善するためには、顧客ライフサイクルの各段階に適切な分析を組み込む必要があります。それにより、適切なタイミングで適切な場所に適切なメッセージを提供できるようになります。初期の検討、詳細な評価、購入の決断、購入後の利用体験など、すべての段階が重要です。どの段階にもカスタマー・エクスペリエンスを向上させるチャンスがあります。また各段階は、より多くの知見・洞察を獲得し、次回のマーケティング・プロセスにフィードバックする機会にもなります。