- ホーム
- インサイト
- case-studies
- 熟練技術者に依存しない品質維持を実現する、最適な制御モデルを構築したAI解析とは
半導体の技術進歩に追随し、品質と生産性の向上を日々求められる化学メーカー
熟練技術者に依存しない品質維持を実現する、最適な制御モデルを構築したAI解析とは
化学メーカー X社 製品技術部
背景
フォトレジストを製造する化学メーカーX社。顧客であるデバイスメーカーの製造技術の進歩に伴い、フォトレジストの品質に対する要求は年々厳しくなっていた。それと並行して、世界的な半導体の需要増により、常に生産性向上を図る必要に迫られていた。
課題
品質が変動し規格値外に!制御最適化の鍵となるログデータを入手したものの…
デバイスメーカーからの要求は、フィルム製造設備を連続運転させている間にもフォトレジストの品質が規格値の範囲内に収まるようにすることでした。しかし、設備の連続運転が続くと、徐々にフォトレジストの品質が変動し、規格値から外れる問題が生じていました。
この問題を解消すべく、これまでも定期的に設備条件出しを行い、そのたびにパラメータ設定の試行錯誤を繰り返していました。当時の状況について、X社製品技術部部長のM氏はこう振り返ります。
「お客様が行う製造設備の条件出し方法が適切な場合は、連続運転中でもフォトレジストの品質を規格値以内にとどめる制御ができました。しかし、条件出しを間違うとすぐに規格値を外れてしまいます。条件出しにかかる時間を削減できれば、より生産性を向上させることができるのですが…」(M氏)
M氏らは顧客との協議を重ね、交渉の結果、製造装置のログデータ2年分を入手することができました。その中に、課題解決のヒントがあるはずだと考えたのです。しかし、実際に提供されたログデータはマスクされた状態のものだったため、このログデータをどのように活用し、製造設備のパラメータ制御を最適化すればよいかの見当がつきませんでした。
顧客側も、パラメータ制御は熟練技術者の経験と勘に依存しているため、指標は提示できないという状況で、M氏は頭を抱えるしかありませんでした。
課題のポイント
- フィルム製造設備を連続稼働中、品質が徐々に変動して規格値から外れてしまっていた
- 定期的に条件出しを行うが、そのたびにパラメータ設定を試行錯誤していた
- 装置のログを入手したが、そこから最適な制御方法を導き出す方法が分からなかった
解決のポイント
- SAS® Viya® 導入により、規格値内に収まるパラメータ算出設定が即座にできた
- SAS Viyaとコンサルティングで、ログデータを活用した最適な制御モデルを構築できた
- これまで熟練技術者の経験や勘に頼っていた業務を改善でき、生産性が向上した
解決
強力なAIツールと卓越した知見に基づくコンサル力が、最適解を導き出した
あらゆるネットワークを駆使して情報を集めていたM氏は、取引先から、生産性向上に成功した同業他社の話を耳にしました。そこにSASのサポートがあったと知ったM氏は、同社に問い合わせ、その対応に驚きます。
「SASの担当者は、即座に当社の課題を理解し、その課題へのアプローチ方法を考察しはじめたのです。最初は分析ツールのベンダーという認識だったのですが、単にツールを提供するだけの会社ではないと感じました。そして、データへの向き合い方から、データ分析に関する知見とノウハウを生かした課題解決力の高さを感じました」(M氏)
X社の課題に対してSASからは、SAS Viyaを活用してログデータを解析し、最適化された制御モデルを構築することが提案されました。SAS ViyaはオープンなAI/アナリティクス・プラットフォームで、プログラミング不要、さらに機械学習が可能です。同時に、高いスキルを持つSASのコンサルタントによるコンサルティングサービスも魅力でした。M氏はすぐさま上層部に掛け合い、最適化制御モデル構築の協力を依頼する承認を得ることができました。
「導入してまず取り組んだのは、ログに示された数百ものパラメータ値を元に総当たりでシミュレーションし、規格値内に収まるであろうパラメータの算出をすることでした。これまで何回も設定し直していた作業が、たった一回の設定だけで済んだのです」(M氏)
続いて、連続生産による特性をモデル化し、最適な制御方法を導き出しました。この結果を製造工程に採用したことで、条件出しの時間は大幅に削減され、生産性の大幅な向上を達成することができました。これまで熟練技術者の経験や勘に頼っていた業務を改善し、難しい要求に応えることができたため、顧客からも高評価を得られました。
X社では、今後も当社のさまざまな課題解決にあたって、SAS Viyaと同社のコンサルティングサービスを活用していくことを考えています。