データ・ビジュアライゼーション(視覚化)の活用により犯罪取締を強化する方法
データの総合的な把握こそが防止と介入を成功に導くカギ
ピーター・スネリング(Peter Snelling)
SAS Institute Ltd. シニア・プリンシパル・テクニカル・コンサルタント
世界中で今、各種取締機関や法執行機関がデータ・ビジュアライゼーション(視覚化)テクノロジーの積極的な活用を進めています。例えば警察は、犯罪、交通、地理空間、天候などのデータを重ね合わせた状態で所在地情報をリアルタイムに把握するシステムを導入しつつあり、その結果、信頼性が高く堅牢なデータにもとづいて意思決定を行い、要員を適切に配置し、法執行介入や犯罪防止活動の効果を高められるようになっています。
当然ながら、上記のような手法によって全体像を把握した上で、複雑化する犯罪環境と向き合い、犯罪を察知および防止する、という課題を克服するために重要な役割を果たすのは、当局が保持するデータです。しかし、データ量の多さが逆効果になる可能性もあります。事実、すでにデータの急増は始まっており、そのほとんどが非構造化(テキストベース)の状態であることから、その管理や活用は難しくなっています。
視覚化によって見えてくる施策の方向性
全体像を視覚化することができなければ、重要な情報を見過ごしてしまい、結果として不適的な判断や無策傍観につながる恐れがあり、ひいては公共の安全をリスクにさらすことにもなりかねません。データ・ビジュアライゼーション・ソリューションを導入すると、データのアクセス、視覚化、検索、分析を一元的に行える環境が整備され、こうした状況に対処できるようになります。
SAS Visual Analytics の活用により、交通運輸当局や警察は事故原因究明や事件多発地点特定のスピードと精度を高め、より多くの問題点をより迅速に是正できるようになります。対話型レポートのサンプルはこちら:sas.com/iq-vasample
このアプローチなら、重要な疑問への答えをビッグデータの中から速やかに見つけることが可能になります。また、傾向の特定とデータに潜むビジュアルなパターンの解釈、複数のフォーマットに対応した戦術/戦略レポートの定期的な作成、法執行介入や犯罪防止活動を成功に導く適切な人員配置などにも役立ちます。さらに、このアプローチを補完するのがビジュアル・アナリティクス・ソリューションです。データの意味を掘り下げ、隠れた機会を見つ出し、重要な関係性を洗い出し、より迅速かつ正確に意思決定を行えるようになります。
ビジュアル・アナリティクスを活用することで、幅広いソースから収集したデータを駆使して戦術/戦略レポートを素早く作成し、Webやモバイルなど複数のフォーマットで配布することができるようになります。
警察が従来の捜査で頼りにしてきたのはデータを直接(統計数値として)把握する手法ですが、ビジュアル・アナリティクスは、データに潜む複雑な関係性を理解するのに役立ちます。例えば、特定地区における薬物犯罪の増加と警察官の配置に相関関係があるかどうかを調べることも可能です。
ビジュアル・アナリティクスは、警察が現在よりも幅広い形で社会に貢献する目的にも役立ちます。例えば、交通事故のために米国社会が負担するコストは年間3,000億ドル(約35兆4,000億円、1ドル118円で換算)に上ると推定されており、失われる人命も考慮すれば、その損失は計り知れません。ビジュアル・アナリティクスを活用すれば、事故原因の究明や事故多発地点の特定の精度を高め、人命を守るための施策を講じることができるようになるかもしれません。
ビジュアル・アナリティクスを活用する際は、セルフサービス方式を推進することも重要です。IT部門には縄張り意識による抵抗感があるかもしれませんが、直感的に利用できるビジュアル・アナリティクスはセルフサービス方式との親和性が高いため、業務部門(警察の場合は捜査部門)のユーザーでも、IT部門の支援なしで、ビジュアルなレポートを作成できるようになります。その結果、負担が軽減したIT部門も、より戦略的な取り組みに集中できるようになります。
気運の高まり
データ・ビジュアライゼーション・テクノロジーには、警察組織のほぼ全職員にメリットをもたらすのみならず、そのメリットを社会へ幅広く波及させる力があります。警察が全体像をより的確に把握できるようになるほど、犯罪を早期解決できる可能性は増すはずです。そして、このような考え方を後押しする機運が、まさに今、高まりつつあります。この種のアプローチへの期待が社会の中で高まってきており、それによって、先進的な警察組織は既に犯罪の解決から予防へと重点を移しつつあります。