マーケターのためのデータ分析実践入門
活用ケース解説
アップセルとクロスセルで
顧客収益性を上げたい!(4)
3.トライアンドエラーを行う — ルールの見直しや分類をし直す
アソシエーション分析を行う際、考慮すべき点が2つあります。ひとつは、分類コードの適切な体系化と維持です。スーパーなど商品数が多く、しかもその移り変わりが頻繁な業種では、商品分類のコードの付け方が結果を大きく左右する可能性があります。
たとえば、「おにぎり」の品目を「鮭のおにぎり」や「梅のおにぎり」などで細かく分類してしまうと、アソシエーション分析の結果、「鮭のおにぎりと梅のおにぎりが同時に購入されている割合が高い」という当たり前の結果が出て来てしまいます。これでは併買の参考にはなりません。
そこで、商品分類を「おにぎり」に広げることで、「おにぎり」と「鶏の唐揚げ」が併買される割合が高いといった有益な結果が得られます。
このように、意味のある結果を得るためにはデータに工夫が必要になります。通常、売上データには商品単品ごとに商品コードが付与されていますが、このままでは商品が細分化されすぎてしまい、組み合わせが膨大になります。前述のようにカテゴリを「おにぎり」にまとめてしまうことで分析の処理も軽減されます。また、商品区分の設定がその後の戦略を制約してしまうケースもあります。商品をどのカテゴリに分類するかによって、結果の解釈も打つべき施策も制限されてしまうので、仕入や在庫管理の視点だけでなくマーケターの視点も取り入れることが重要です。
2つ目の考慮すべき点は、アソシエーション分析の対象データをどうとるかにあります。膨大な商品の組み合わせから「意味のある組み合わせ」を発見するには、できるだけ結果にノイズが入らないように分析データを「仕切る」必要があります。
たとえば、新製品同士であれば当然比較的高い併買傾向が出ますし、セールなどの値引きも組み合わせに大きく影響します。また、季節ものや流行ものを他の商品と同列で扱うことも問題がありますし、曜日や時間帯で客層が変わる店舗では曜日や時間帯ごとに分析を行う必要があります。自社の業種や業態の特性を理解して、必要であれば季節や曜日、時間帯で対象データを分けて分析する必要があるのです。
アソシエーション分析について説明してきましたが、分析しただけでは売上は上がりません。結果を正しく理解し、意味のあるルールを識別することで、その裏にある顧客の心理を推測することが重要です。その推測が正しいかどうかをDMなどによってテスト・マーケティングを行うことが必要になるかも知れません。
その次には、どの客層にアプローチすることで併買率が高くなるのか、売上状況の分析だけでなく顧客情報を付加することも重要になってきます。そして最後には、「いかに顧客の思考に合ったマーケティング施策を立案・実践できるか」にかかってきます。その精度は経験の中で磨くしかなく、そのためにはできるだけ多くのデータを収集、分析し、結果を素早く現場に反映、その効果測定を行うというトライアンドエラーが重要です。 こうしたトライアンドエラーの仕組み作りが、成功の鍵を握るのです。