マーケターの4類型:あなたはどのタイプ?

独自の調査により、現代のマーケターの直面する課題が明らかに

執筆:チャールズ・ランダル(Charles Randall)、SAS UK & Ireland、ソリューションズ・マーケティング責任者
 

今ではマーケターの84%がデジタル・ネイティブ世代の台頭を、マーケティング計画に圧倒的な影響を及ぼす「最も重要な要因」(または「非常に重要な要因」)だと考えています。そのため、マーケターはデジタル世代を歓迎すると同時に、マーケティングの新たな秩序に備えて自身の考え方とスキルセットを見直す必要もあります。この見直しのプロセスは、マーケターにとって最大のハードルになると思われます。

デジタル・マーケティングを従来のチャネルと統合するためには、マーケターがデータ・アナリティクスの先導者となる必要があります。

スキルの不足、経験の欠如、金融危機の余波による緊縮予算のせいで、デジタル・マーケティング環境は引き続き厳しい状況にあります。データが足りない状況ではないのは確かですが、問題は、顧客ロイヤルティの醸成であれ、データの収益源化であれ、データから真の価値を引き出す方法を理解しているマーケターが足りないことです。

英国のマーケター500名以上から集めたアンケート調査を基に私たちが行った最近の研究によると、現代のマーケターは、戦略、チャネル、スキルに関して明確な類型に分類されることが明らかになりました。どの類型にもそれぞれ注目すべき特質があるものの、こうしたマーケターたちは、デジタル革命の渦中でビジネスの成功に貢献するために必要な幅広いスキルを網羅的に身につけているのでしょうか?どうかこのまま読み進め、ご自分がどの類型に当てはまるかを考え、将来に向けたスキルが十分かどうかを確認してみてください。

No.1:マルチチャネル・マイスター

このタイプのマーケターは、自身をマルチチャネル担当者と考えており、デジタル手法を重視しますが、的確かどうかに関係なく、利用できる主要チャネルを全て活用しようとする傾向があります。マルチチャネル・マイスターは多数派であり、英国のマーケターの45%を占めています。

典型的な勤務先は、大規模なエネルギー企業、銀行、大手通信会社などです。彼らは予算の制約を最大の阻害要因と考えることが多いのですが、これはほとんどの場合、リソースを多くのチャネルに広く薄く配分しすぎているせいです。私たちの調査によると、こうしたマーケターの5人に4人は、どのキャンペーンでも一律に、モバイル、コールセンター、ダイレクトメール、ライブイベント、Webセミナー、ソーシャルメディア・チャネルを利用しています。

興味深いことに、マルチチャネル・マイスターは検索に絶対的な自信を持っており、他の形態のマーケティングにも相当な自信を持っていることが、調査結果から見て取れます。

No.2:SoLoMo達人

SoLoMo(ソーシャル、ローカル、モバイル)型のマーケターは、顧客の動向を正確に把握しています。Vine、WhatsApp、Snapchatといった最先端のメディアチャネル、アプリ、プラットフォームに重点を置き、自ら立てたストーリーを語って新規顧客を惹きつけようとします。

調査結果は、予算の観点からすると、このタイプは他のどの類型よりも、ソーシャルメディア、モバイル・マーケティング、Webセミナーへの支出額が多いことを示しています。そして当然ながら、Webサイト、検索、メールも定期的に活用しています。オンラインこそが彼らの世界であり、成功度を測る方法としてリアルタイム・インタラクションをうまく利用しています。従来の放送メディアは好みません。これは主として、データ主導型で結果を定量化する手段がないためです。

このタイプは、いわゆる「破壊的な」(既成の枠に収まらない)ブランドや小さなオンライン代理店などで勤務している場合が多く、予算の有効活用を徹底することに画期的な手腕を示す傾向があり、支出額がそれほど多くなくても「派手」なキャンペーンを演出します。

まさにデジタル・マーケティングのパイオニアであり、自らの戦略に最も確信をもっているのも彼らです。また、業界全体がビッグデータを深く掘り下げる方向へと進む中で利用価値が高まりつつある、リアルタイム・データ・アナリティクスの威力も十分に理解しています。

興味深いことに、SoLoMo型のマーケターが大きな価値を見出しているのは、ライブイベントをデジタルによるキャンペーン実行と組み合わせる手法です。調査結果からは、マルチチャネル・マイスターが1つのキャンペーンで最大14ものチャネルを使うのに対し、SoLoMo達人は最大でも10チャネルであることが明らかになっています。

No.3:デジタルオタク

私たちの定義では、デジタルオタクとは、大量のデータを動かすものの、ブランド広告には関心を示さないマーケターを指します。データを検討して傾向モデルを計算すること自体に喜びを感じています。

このタイプは、平均すると8種類のマーケティング・チャネルを使い、どのキャンペーンでも、まずはオンライン広告、検索、Webサイトを活用します。残りのキャンペーン予算を占めるのは、メール、印刷広告、ライブイベント、ダイレクトメール、ソーシャルメディアです。

デジタルオタクは試行錯誤を経て確立されたデジタルチャネルに資金を投じる傾向があり、新しいチャネルやチャネルの組み合わせを模索することには臆病といえるほどに慎重です。これはおそらく、定性的な指標よりも定量的な指標を重視しているからでしょう。デジタルオタクは「データはあらゆる場所に存在する」が業務上の信条であり、クリック率、開封率、バスケット占有率などで簡単に評価できることから、Webサイト、検索、オンライン広告を同志と考えています。

データ・アナリティクスを得意としてはいますが、新分野を試してクリエイティブな結果を生み出すという冒険心には欠けています。デジタルオタクの大多数は、従来型のデジタル代理店、ロイヤルティ管理支援会社、大手のオンライン小売企業などに勤務しています。

彼らからすると、ソーシャルメディアは投資対効果(ROI)を判断するには曖昧すぎるため、この世界に手を出すことは異例です。ライブイベントは非常に高く評価しています。おそらく、営業活動を通して目に見える方法でリードを絞り込めるからでしょう。

No.4:保守的ダイレクト主義者

がっちりと握手し、しっかりと相手の目を見て話すことを何よりも大切にします。こうした保守的なマーケターは、顧客には直接、つまり身をもってパーソナルなレベルで関わり合いたいと考えています。ブランドは重視せず、1対1の販売こそが全て、というタイプです。

こうしたマーケターは、ほとんどがテクノロジー分野のBtoB企業や大手カタログ販売会社に勤務しており、ダイレクトメール、コールセンター、メールによるマーケティングを頼みにします。また、イベントや、デジタル世界でそれに相当するWebセミナーもお気に入りです。

保守的ダイレクト主義者のマーケターは、キャンペーンで平均10チャネルを使いますが、大好きな対面のチャンスが得られない屋外、TV、ラジオなどのチャネルは避ける傾向があります。

このタイプのマーケターもデジタルオタクと同様、数字を重視しますが、目標達成のために頼りとするのは、詳細な洞察でパーソナライズされた「個客」マーケティングではなく、大量マーケティングです。興味深いことに、このグループでは、自分たちのマーケティング戦略に対する確信がやや揺らいでおり、自らの信条とする領域よりもライブイベントやダイレクトメールに多く支出する傾向が見られます。おそらく、時代の変化を自覚しているのでしょう。

マーケティングの進化の方向性は見え始めており、既に多くのブランド企業が、雑音として無視されることのない有意義な対話で対象者に働きかけるために、ハイブリッド型のモデルを活用しています。しかし、デジタル・マーケティングを従来のチャネルと統合するためには、マーケターがデータ・アナリティクスの先導者となる必要があります。


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チャールズ・ランダル(Charles Randall)博士は、SAS UK & Irelandのソリューションズ・マーケティング責任者。分析にもとづくマーケティングを積極的に推進する実務担当者であり、高度なアナリティクスをビジネス課題に適用する取り組みに関する著述家兼スポークスパーソンでもあります。また、代表的なビジネススクールや市場調査会社とコラボレーションしながら、現代のマーケターが直面する課題について独自の調査・研究も実施しています。

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デジタル革命

SASとMarketing Week誌は、勤務先でマーケティング活動を担当している個人560名を対象としてアンケート調査を実施しました。調査対象者の過半数はマーケティング・マネージャーで、次に多いのはマーケティング担当ディレクターでした。回答者の勤務先は、幅広い業種のさまざまな規模の企業であり、B2B、B2C、あるいはその両方の販売・営業活動を展開しています。主な知見は以下の通りです。

  • マーケターの91%は、現在もデジタル革命の渦中にあると考えています。
  • 利用が増えているマーケティング・チャネルはソーシャルメディアだけです。それ以外のチャネルには利用の激減が見られます。
  • ライブイベントへの支出も増えており、予算に占める割合が最大になっています。
  • マーケターが利用にあたって最も確信を持てないチャネルはモバイルです。
  • デジタル・ネイティブ世代の影響力を高めた消費者の台頭は、今後のマーケティングにおける最大の混乱要因と考えられています。
  • 今後5年間でキャンペーンに最も影響を及ぼすと考えられている社会的/法的要因は、人口高齢化とデータ保護に関する懸念です。
  • 今後のマーケティングに最大の影響を及ぼすと考えられている分野はコンテンツ・マーケティングであり、身につけるべき最も重要なスキルはデータ・アナリティクスです。

詳細については、「Marketing Perspectives」レポート(英語)をダウンロードしてください。