組織に最適な分析を取り入れる4つのステップ
課題解決に最適な人材と技術を配置し、問題を未然に防ぐ
あなたは、「いま抱えている問題への対処法が見つからない」、「まだ表に出ていないだけで、近い将来に大きな問題が持ち上がりそう」といった不安を抱えていないだろうか。コントロールできなくなる前に把握しておきたい物事はあるだろうか。もし、これらの質問のどれかひとつにでも「はい」と答える状況にあるとしても、あなたは決して孤立無援ではない。
驚くほど多くの企業が、主要な業務課題として、「企業利益に影響する重要な意思決定の際、必要な情報がすぐに集まらないこと」を挙げている。たとえば、安全性能の問題で大量のリコール案件を抱えた製造事業者や、ソーシャルメディア上で拡散された悪評に苦しむ旅行会社などだ。これらの企業の場合、問題が手の付けられないレベルまで膨れ上がったり、問題そのものが発生する前の段階で気付いたりすることができれば、大きなメリットを得られるだろう。
幸運なことに、私たちは「将来を迅速に予測できるかどうかは、その組織が予測分析の活用をどれだけ得意としているかどうかに依存する」という事実に気付いている。必要な一連の人材、業務の仕組み、技術の3つを適切に配置できれば、早急に答えを出さなければならない課題や、市場や地域の情勢にもとづいて起こり得る問題を予測するという課題に対して、手元のデータを使うだけで対処できるのだ。
以下、組織が分析技術を有効に活用することで不安要素をなくし、発生前の早い段階から今後起こり得る問題に対処できる仕組みを作り上げるための4つのステップを紹介する。
Step 1:組織内にデータ分析の重要性を広める
分析の活用体制を強化するための、最も重要なステップは、「十分な情報にもとづいた意思決定を支える」分析の重要性を、全社員に意識させることだ。分析の認知度を高めるキャンペーンには、動画を使った講習やオンラインセミナーを開催する方法や、ソーシャルメディア上で優れた事例をシェアする方法、社内で分析結果を自由に閲覧できる仕組みを作る方法などがある。可能な限りの方法を使い、「優れた分析技術は、具体的な利益につながる」という点を社員全員にアピールすべきだ。
このステップでは、現行の組織が抱える「分析資産」の内容を調べ、整理しておく作業も重要になる。たとえば、「複数の部署から分析スキルを持つ人材を探し出す」、「組織内でどんなテクノロジーが使われているのか、記録する」、「業務に重要な役割を果たし、分析結果を表示できるビジネス・アプリケーションをリスト化する」などだ。社内で最も優秀な分析スキルを持った社員を特定しておくことも有効だ。この人材は、組織が将来に向けて分析技術を採用するにあたり、実際の導入プランを策定する責任者に最適だ。
Step 2:組織で使われている「分析の課題」を分析する
2つめのステップでは、組織が現在使用している分析技術の内訳を総ざらいし、足りない機能や技術をリストアップする。組織が将来の目標に対して現在置かれている段階を見きわめたうえで、新たに分析を活用できる部分を見つけだすのだ。たとえば、BIレポートを使ったワークフローの改善など、分析チームが「どこで」、「どのように」正確な情報や予測分析を活用できるかを洗い出すことが重要だ。
このステップのカギを握るのは、組織内で稼働する分析のライフサイクル全体がどのように回っているか、データ探索や修正、モデル作成や配置、監視など、各段階を通して綿密に把握できるかどうかだ。分析のライフサイクルを詳細に把握すれば、ライフサイクルの抱える欠陥や改善の余地も見えてくる。
Step 3:分析チームを結成する
3つめのステップでは、独立した分析チームを作り、必要に応じてメンバーの知見を結集できる「分析コミュニティ」の整備を進める。このプロセスを経ることで、分析の専門家たちが常に分析の最新情報を共有し、メンバー間で必要な情報が抜け落ちる事態を防ぐことができる。分析アプリケーションや新たな機能について話し合う場には、通信技術を活用したバーチャル・ミーティングやセミナー、ユーザー・グループ・ミーティングや社内ブログの更新など、さまざまな手段を活用できる。緊密なコミュニケーションの確保が、チーム自体の進化や各分析段階での連携を支えるカギになるだろう。
Step 4:予測分析で、将来にそなえた戦略を立てる
最後のステップに移行するタイミングは、必要な分析インフラがほぼすべてそろい、適切な場所に配置され、組織がビジネス需要の突然の変化にも機敏に対処できるようになったときだ。組織が新たな分析モデルを迅速に作成・稼働させ、従来よりも質の良い情報を得られるようになった段階と考えるとわかりやすいだろう。
この段階で、分析は「現在の企業戦略で生じた疑問を解消する」役割から、「予測を重視した未来志向の役割」へとシフトする。これから起こり得る出来事を検証し、シミュレーションや最適化など、分析ツールに結集された統計機能を通して、可能性の低い要素を排除する。まだ見えない未来の状況を明らかにしたり、顧客とより密接な関係を築き、市場でのシェアを広げたりするためには、テキストデータやソーシャル・メディア・データなどの、いわゆる「ビッグデータ」も重要な役割を担う。
結論
ここに挙げた4つのステップを迅速かつ継続的に実行するのは容易ではなく、分析にかかわる関係者全体の協力と努力が不可欠だ。優秀な人材の確保をはじめ、必要機能をそなえたツールへの投資も重要なカギを握る。
組織内における分析活用を前進させるステップは、すぐれた分析技術をそろえることに加え、人材・業務・技術のあらゆる要素がからむ多様な視点から進めなくてはならない。そして、必要に応じた分析能力を伸ばせば、組織にとって計り知れないメリットが生まれる。分析を通して得られた情報は、状況に応じてリアルタイムに下される優れた意思決定を可能にするだろう。
組織内に専門シンクタンクを作るために
あなたの組織の分析チームは、状況に応じてさまざまな疑問に答えるサービス・プロバイダとしての役割を果たしているだろうか。あるいは、すべての情報を利用できるパワーを活用し、大きな課題にかかわるコンサルタントに近い役割を果たしているだろうか。そして、あなたの組織は、企業の意思決定や将来に向けた決定を支える、より戦略的なチームを作りたいと考えているだろうか。
もし、あなたが上に挙げた方向性を考えているのなら、CoachやLori Biedaでグローバルのカスタマー・インテリジェンスおよびアドバンスド・アナリティクス担当VPを務め、SASの米国カスタマー・インテリジェンス部門を統括するParinaz Vahabzadehが提唱する5つのポイントをぜひ参考にしてほしい。
- 組織の外から人材を集める
多様なビジネスや産業分野から、優秀な人材を集めること。分析の才能を結集したチームを作り上げるためには、必要に応じてあらゆる手を尽くさなければならない。 - 分析チームには難問を出すこと
分析チームには困難な課題の解決を任せるといい。分析チームは、組織に対して彼らにしかできないことを成し遂げたいと望んでいる。 - IT部門と他の業務部門との壁を取り払うこと
分析チームには組織内のITをより深く理解させ、IT部門には分析チームをより深く理解させるとよい。 - データ・ガバナンスを徹底し、情報を整理すること
分析チームは、組織内でデータの用途を確立し、組織内の機能に沿った分析の方法を編み出さなければならない。 - 組織に「変化」を起こす
分析チームは、時間をかけて業務部門にデータから得られるメリットを説明することで、組織にとって最良の結果を生み出すことができる。
文:Phil Weiss
SASのアドバイザリー・ソリューション・アーキテクト。統計予測コンサルタントとしての経験も兼ね備えるアプリケーション開発のプロ。ハイパフォーマンス・アナリティクスを専門分野として、顧客に向けて、「どうすれば各組織に合った形で分析の活用体制を強化し、ビジネス価値や競争力を上げられるのか」をテーマに、さまざまなガイダンスを行っている。