高度な経営ダッシュボードで将来を見通し、経営の「次の一手」を
分析の先進企業の多くが、高度な経営ダッシュボードを実現しています。そして、ビジネスに役立つ知見や洞察を引き出し、経営に生かしています。現在のビジネスは、グローバルな競争環境に置かれ、解決しなければならない数多くの複雑な問題を抱えています。高度なデータ分析を基盤とする経営ダッシュボードは、企業にどのようなメリットを提供できるのでしょうか。複数の企業事例を参考に、その目指す姿を展望しましょう。
経営と現場が科学的な意思決定を行う文化
日産自動車株式会社(以下、日産自動車)は、2011年より6年間の中期経営計画「NISSAN POWER 88」に取り組んでいます。この計画ではブランド力および営業力を強化し、グローバルの市場占有率8%、営業利益率8%を達成することが目標です。そして、この計画を支えるために、同社は「VITESSE」と呼ばれるIT戦略を2011年より推進しています。
同社 グローバル情報システム本部 理事 能丸 実氏は、「われわれは2005年から、コストマネジメントを含めたIT構造の標準化とアウトソーシング体制を整備してきました。ITのコスト構造を明らかにするとともに全社の業務を見直し、ビジネスプロセス・モデルを再定義したのです」と述べます。
これを踏まえてVITESSEでは、社内外に乱立するシステムの統合、情報連携をさらに推進し、全社横断的なデータ分析に着手できる環境を整えました。たとえば、電気自動車「日産リーフ」のプローブ情報(走行情報、位置情報、充電のタイミング/場所など)は、無駄なく分析され、仕様設計や充電拠点の最適化などに役立てられています。工場における車両の保管情報分析では、滞留期間と品質の関係を明らかにすることで品質管理を強化しました。
データ分析の結果を、経営と現場が意思決定に生かすプロセスや仕組みの構築にも挑戦しています。「データ分析の結果をどのように経営やユーザーに示していけば、効果的な意思決定を実現できるのか」を実際のプロジェクトと並行して、BIで柔軟に表現していく効果を実証しました。販売店にBIを導入したこともその一例です。この取り組みにより、販売台数や売上推移、売れ筋の車種を把握し、適切な顧客アプローチを行えるようになりました。
能丸氏は、「現在の情報システム部門には、ITの専門家の枠にとどまらず、経営により近い領域での活躍が期待されています。その期待にこたえるために、高度なデータ分析を駆使し、経営がさらに効率的かつ迅速に意思決定できる仕組みを提供していきます」と述べています。
経験や勘だけに頼った経営判断からの脱却
高度なデータ分析を経営や現場に根付かせるのは、経営ダッシュボードを効果的に運用する地ならしとして、最も現実的なやり方でしょう。日産自動車と同様の方向性を持ちながら、経営管理領域で統計分析を活用し、その結果を経営戦略に反映させている電子機器メーカーもあります。このメーカーがユニークなのは、「単なる見える化ではなく、意思決定を支えてくれる経営ダッシュボードが必要である」と当初から定義してプロジェクトを推進したことです。
このメーカーへのコンサルティングを手がけた株式会社ディーバ コンサルティング事業本部 管理会計事業部 アシスタントマネージャー 影山 正樹氏は、「経営会議の席で、売上などの数値情報を使ってより深い議論をしたいと考えたことがきっかけで、経営ダッシュボードを導入することになりました。定型レポートを使って数字を集めるのではなく、起こった結果の原因を追及したかったのです」と述べます。
さらに担当者にも機能を開放し、自身の業務判断に使える情報を自由に探索・共有させようという方向性が決まりました。そのためには、ツールが必要です。同社が選択したのは、SAS Visual Analytics。情報の見える化に加えて、将来を見通す機能や大量データの優れた処理能力を得られると判断したためです。
第1ステップとしてリリースされた機能は、予実管理の中核となる経営ダッシュボードです。国・地域別の売上や粗利、予算達成率を単月/累月/年度に分けて視覚化し、経営の健全性を評価できます。続いて、製品ライフサイクルの解明に取り組みました。各種製品の市場投入から衰退期に至る経過年数に応じて売上の推移を視覚的につかめるようにしたことで、コスト削減の取り組みは高度化し、新製品を市場投入するタイミングの最適化に役立っています。
影山氏は、「いまは、競争の激しい時代。経験やカンに頼った経営判断から脱却しなければなりません。高度なデータ分析によって得られた結果をもとに経営管理を行うことが、健全な企業体質を作り上げます」と述べています。
将来を見越して最適な意思決定をするために
このメーカーが将来予測を実現するための経営ダッシュボードとして採用したSAS Visual Analyticは、企業に「予見力」を提供するBIツールです。市場環境の変化を先読みし、プロアクティブな意思決定と最適な行動を可能にするために、大量データを高速に分析して、だれもがわかりやすい情報として提供できる仕組みを備えています。
経営ダッシュボードに欠かせないわかりやすさは、SAS Visual Analyticの最大の特長です。分析に必要なデータ項目をワークスペースへドラッグするだけで、クロス表や棒グラフ、線グラフ、ヒストグラム、散布図などから、最適なチャートを表示してくれます。
インメモリ型の並列分散処理アーキテクチャを採用したことで、ビッグデータの高速処理にも長けています。売上や利益の過去の時系列の推移を素早く表示し、この実績値に基づき、簡単操作で瞬時に将来の予測値を算出することができます。
シナリオ分析も容易に実行できます。たとえば、売上の将来を予測する際に、設備ダウンタイムや製品品質を要因データとして加味することで、これら要因データの変動が将来の売上にどう影響するのかといったシミュレーションも可能になります。
そのほか、ビジネスユーザー自身でその場で階層を指定し、深掘りする多次元分析機能や、複数のデータ項目の相関についてヒートマップで視覚化する機能も、高度な経営ダッシュボードを実現するために有効な機能になります。
SAS Visual Analyticsは、見える化の領域にあるレポーティングやダッシュボードの機能を備えています。この部分だけでも十分に役に立つのですが、科学的な分析手法に基づき算出された予測値に基づき、これをベースとして、経営者の経験や勘を加味していけば、経営の羅針盤の精度をより高めることが可能になります。これらを活用すれば、見える化の枠を越えた予見力をベースに意思決定を行う次のステップへと飛躍することができるのです。
※本コンテンツは、SAS Institute Japanが2015年8月21日に開催した「経営ダッシュボードのビジュアライゼーション」セミナーの講演内容を再構成したものです。