すばらしい新世界における機械学習と人工知能
AIにおける最近の進歩は、ビジネスやその他の分野にどのような変革をもたらすか
この記事は・SAS協力のもと、The Economist に公開されたものです。
AI(人工知能)というと、人間の制御を超えて手に負えなくなるロボットをイメージする人もいるでしょう。
しかし実際は、経験から学び、かつては人間しかできなかったタスクを代わりに実行できる機能を備えたAIが現在すでに活躍しています。そうしたAIによって、人間の暮らしはより豊かに改善される可能性に溢れています。
機械学習はAIの主要な構成要素の1つであり、1950年代からテクノロジーの世界に存在しています。当時のプログラマーは、コンピューターに大量のデータの意味を理解するよう要求しました。プログラマーたちは、パターンを見つけるためにデータを調べるという機械の能力をどんどん磨き上げました。コンピューターが情報を整理し、関係性を特定し、予測したり異常を検知したりできるようにするためです。現在、AI分野は、最新アプリケーションとして自動運転車やバーチャルアシスタントを実現し、不正検知や電気などの資源管理の効率性向上においても大いに役立っています。
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小売、スポーツ、銀行、製造業、ヘルスケアといった多岐に渡る業種がいずれも、機械学習とAIの用途をすでに見つけています。
現在の機械は細かく定義された作業を優れた精度で遂行することができます。とはいえ、注意しなければならないのは、その精度はあくまでも、モデルの基盤となるデータの質、あるいはデータの量によって決まるという点です。機械学習の技術がこのまま進むと、慎重に検討されたデータを入力することによって、既存製品を無限に強化し、最終的に、自立型AIを開発できるようになります。ただし、「暴れ狂うロボット」というイメージの完全自律型デバイスではありません。
現在の機械学習の分野では、主に次の4つの手段に取り組んでいます。
- 例を使用して教え込むことではじめて、結果として得られた洞察を類似作業に応用できる機械
- 一般的なパターンから推定して他のデータに応用できる機械
- データを学習してパターンを見つけ、経験とともに向上できる、教師なし学習が可能な機械(ただし、自律型ではない)
- 特定のルールセットを処理、利用し、望ましい結果に近づけることのできる機械
一方、機械学習は進化しており、私たちはさらに高度なAI、つまり ディープラーニングへの取り組みに着手しています。
ディープラーニングの高度な分析は、「ニューラルネットワーク(神経回路網)」によって実現します。人間の脳の相互につながった構造を緩やかに模倣して、何層にも重なった機能性を提供する仕組みから、こう呼ばれています。
こうした「ニューラルネットワーク」は非常に高度であり、事実、機械が結論に到達するまでにたどる経路を容易に解明することはいまだ困難です。ディープラーニングでは、巨大な自己改善型ニューラルネットワークを使用して、音声や画像の認識など非常に複雑なパターン発見を実行します。これは、最近のコンピューティング能力の進歩によって初めて可能になり、広く利用できるようになったものです。
SASの人工知能およびテキストアナリティクス担当、グローバル製品マーケティングマネージャーのメアリー・べス・エインスワース氏は、「ディープラーニングは、本当に意義がある場合のみ活用されます。つまり、これまでどのような方法でもできなかったような、大量のデータに潜む複雑で変化する関係性を即座に突き止めることが必要な場合ですと述べます。「ただし、ディープラーニングの場合、機械は人間の眼とはまったく異なる、アナリティクスのレンズを通して、問題を調べることができます。ディープラーニングは、種類を問わず、あらゆる問題を解決するために利用できるでしょう。私たちが日々収集しているデータの可能性はいまだに全部は実現されていません」。
AIを構成する第2の重要な要素である自然言語処理(NLP)が自然言語理解(NLU)へと進化する過程についても、進捗が見られます。NLPの能力が、話し言葉や書き言葉をアルゴリズムが理解できる形式に変換し、人間が理解できる話し言葉や書き言葉で結果を返すものだとすると、NLUの能力を理解しやすくなります。つまり、人間が直感的に行っているのと同じように言語の意味を類推し、それに応じて対応できる能力ということです。AIにもっと単純な人間にとっての使いやすさをもたらす過程で第一歩となったのがSiriとAlexaです。一部で想像されているようなディストピア的な結果とは異なり、人間の関与も大いに残ります。
小売、スポーツ、銀行、製造業、ヘルスケアといった多岐に渡る業種がいずれも、機械学習とAIの用途をすでに見つけています。
一部で想像されているようなディストピア的な結果とは異なり、人間の関与も大いに残ります。有用な機械学習を確立して維持するには、人間との関わりや人間による洞察が必要です。AIの結論を新しいデータに照らしてテストすることによって検証する場合などです。また、このような検証は、どのようなAI展開にも不可欠な構成要素です。さらに、ジョブにふさわしいアルゴリズムを選択し、最適なパフォーマンスをあげられるようそのアルゴリズムを設定し、扱うデータを精製し、機械の高度化とデータ消費能力の最適なバランスを確保し、予測が因果関係とは異なることを理解したうえで結果を解釈することは、科学の部分もあれば、人文科学の部分もあり、すべて人間の力によるものです。
欧州における最近のSASの顧客調査が示唆しているように、人工知能の採用に関して企業が最も心配していることの1つが、人工知能を管理する人間の専門知識をどうやって確保するかであるのも不思議ではありません。
「AIが話題になっているので、その流行に乗っかろうとする企業もありますが、まずはAIで何をしたいのかはっきりさせる必要があります」と、エインスワース氏は助言しています。「同様に、AIがしばしば、圧倒的であるかのように語られることに対して、まだ否定的な見方をしている人もいます。ところが多くの場合、そういう人たちもすでに毎日、何らかの形で機械学習を利用しています。インターネットでの検索、ソーシャルメディアへの写真のアップロード、主要小売業者のオンラインショッピングの利用などです。
最終的に、適切な仕事に適切なツールを使用できるかどうかが肝心です。 AIには、大規模な計画を順調に実行するための戦術的ステップが明確に定義された戦略が必要です。 AIは重要な洞察を提供できますが、その情報を使用して何かを行うには、やはり人間の指示が必要です」。 AIが大きな変革をもたらすことはすでに明らかであり、その可能性は、ロボットハードウェアで反復的手作業を自動化に移行する可能性を上回っています。 AIは、ある種の革新的な文化的転換を要求します。一方でAIは、保守の問題を事前に特定したり、オンラインでのリアルタイムの値付けを可能にしたりといった生産性を向上させるだけではなく、時間の節約にも役立ちます。 AIが裏方で働いてくれるおかげで、私たちはイノベーションに時間を割いたり、人間の関与が必要な作業に取り組んだりすることができるようになります。 Amazonの流通センターがロボットを使って商品を選択していても、それを梱包するのは人間だというのと同様、商取引およびその他の生活のさまざまな領域でチームワークが論点になっていくでしょう。 いわば、業務における人間と機械のすみわけです。
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