産学連携によるデータサイエンス教育を
いま、データサイエンティストが活躍する現場~
伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
広域・社会インフラ事業グループ ビジネス開発事業部
エグゼクティブセールス
中島 淑乃氏
伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(CTC)は、シリコンバレーで25年以上のR&D実績を持つIT企業です。250社以上のプロダクトを扱い、マルチベンダーのシステムを提案しています。私はデータサイエンティストではありませんが、今後データサイエンティストが必要で、産学連携を進めていかなければならないと考える立場です。
2012年、ビジネス・インテリジェンス担当者が社内向けに資料をまとめました。「今後、データサイエンティストが必要になる」という内容で、データサイエンティストとしての複合的な経験・スキルを持った人材が米国ではすでに不足していることを警告しています。担当者は、当時から危機感を持っていました。経営層も、一部は持っていたかもしれません。しかし、現場の管理職はそうではありませんでした。
当時は、ビッグデータやデータマートなどへの関心が高まっていて、現場はデータマイニングのビジネス利用に注目していました。CTCにも、SASを扱えるエンジニアは豊富です。しかし、データサイエンティストには、データ活用を戦略的に考えるマネジメント的なスキルが必要です。
顧客は約8 000社。顧客企業の中でも、製造業やネット企業は、早くからデータサイエンティストに注目していました。一方、流通や観光、自治体など主に文系の人材を採用してきた企業は社内に人材が居ません。そうした企業から、「データはあるのですが、AIでなんとかなりませんか」という相談を受けることもあります。しかしながら、データサイエンティストは居るものの絶対数が少なく、すべてをサポートするのは難しい現状です。
では、どうすればいいのでしょう? 答えは産学連携による人材育成です。これまで、大学と企業は隔てられていました。私たちが文系の学生を採用するときにも、「プログラミングは入社してから勉強すれば大丈夫」と言ってきました。しかし、それではデータサイエンティストの需要にこたえられません。入社後の教育でツールを使えるようにはなるでしょうが、統計的、数学的な理解には時間がかかるためです。大学と一緒に人材育成をして、中間管理職にもリカレント教育をしなければならない時代になりました。
そこで、2月に滋賀大学様との提携を発表させていただきました。大学は、人材育成のためにリアルな社会のデータが必要です。私たちは、これまで顧客企業のデータをセキュアに運用してきた実績があります。そのデータを教育に使えないかと考えたのです。個人情報のマスキングと前処理はわずかな実費をいただいて、私たちがやります。そのデータを教育のために使ってもらうのです。
いまは、ようやく入り口に立っている状態です。これから具体的に打ち合せていくわけですが、すでに「うちのデータを使ってください」と打診いただいているお客様も居ます。最初は小さな取り組みになるでしょうが、今後他大学への展開や、共同研究の実施など、徐々に大きく育てていきたいと考えています。
- 異業種交流で磨かれるデータサイエンス人材(株式会社NTTドコモ)
- データサイエンティストは経営幹部候補生である(コニカミノルタジャパン株式会社)
- データを社内のDNAに(ソニー銀行株式会社)
- データに騙されない、データで騙さない、(アスクル株式会社)
- データサイエンティストが「仮説」を生み出す(塩野義製薬株式会社)
- データサイエンティストはジェネラリスト(SAS Institute Japan 株式会社)
- 自分なりのデータサイエンス像を(有限責任監査法人トーマツ)
- 大学でリアルなデータを分析する経験を(国立大学法人 滋賀大学)
- 産学連携によるデータサイエンス教育を(伊藤忠テクノソリューションズ株式会社)
- あなたの趣味を究めてください(株式会社テプコシステムズ)