アナリティクスがイノベーションの原動力に

成功に導く3つの指針

フィオナ・マクニール、プロダクト・マーケティング、SAS

イノベーションは、ある目的地を設定することでなく、むしろそこまでの道筋を作る作業です。企業が革新的であるためには、データ分析の活用法を自ら模索する必要があります。

それはなぜでしょう。分析から洞察を得るプロセスを実行し、結果の評価を通して分析モデルを改定する、という作業を行うことによってのみ、企業はさまざまな疑問の答えを得ることができるためです。たとえば、「販売の伸びは予測どおりだったか」、「不正な取引が行われている可能性はないか」、「新たにターゲットに選んだ顧客がキャンペーンに反応したか」などです。

イノベーションの原動力は、データの分析設備を、実際に目的を持った作業に活用する過程にあります。仮に、ある企業のキャンペーンに対して、ターゲットとした消費者が予測どおりの反応を示さなかった場合、消費者からのフィードバックやキャンペーン開始当初からの行動履歴にもとづく別のアプローチが必要になるでしょう。

企業は戦略を通してデータ分析を指揮し、分析部門は企業の戦略をサポートしなければなりません。

企業戦略とデータ分析の関係は、3つのステージに分けて考えるとわかりやすいでしょう。各ステージは、分析の進ちょくに合わせて別々に実行することも、3つ同時に実行することも可能です。

ステージ1:長期の情報分析

このタイプの分析は、企業による市場トレンドの特定や、ビジネス計画の評価を支えます。ステージ1を支えるカギとして、データウェアハウスやデータマート、データレイクをはじめ、リポジトリの視覚化やオンライン分析処理(OLAP)、分析レポート機能、複数のソースにまたがる双方向性を備えた視覚分析が挙げられます。

このステージでは、たとえば地域や支店、製品ごとの販売実績など、過去と現在の情報に加え、これまでにあった変化の情報が必要とされます。

販売データを、消費者の流入/流出情報や債券情報、投資や口座情報など、他のビジネス課題や要素に置き換えて分析にかけることも可能です。分析の中心に据えたい視点によって、地域や支店、製品以外のカテゴリを採用することも可能です。ただし、時間の条件を別の何かに置き換えることはできません。未知の領域を探検する意味合いの強いステージ1の分析では、時間が重要な役割を果たします。

こうした分析では、必要なデータを取得しやすいケースが数多く見られます。ただし、必要なデータをスムースに分析する能力が十分にあるとは限りません。

ステージ1の分析は、事実にもとづいた洞察を提供することで、企業の体制を整え、次に進む方向の決定や戦略の立案をサポートします。

ステージ2:内部環境と外部環境のマッピング

ステージ2のマッピングは、市場を左右する要素や消費者の行動、競合他社の動向、自社製品やサービスにかかわる詳細情報を対象に行います。

このステージでは、以下に代表される疑問に対する答えを模索します。

  • 自社の製品/サービスは、どれだけの利益を生み出すか?
  • 自社の製品/サービスは、実際にターゲットの顧客にどれほど受け入れられているか?
  • 自社の製品/サービスは、顧客のニーズにどの程度合致しているか?

    相関分析や話題特定、アソシエーション統計などの手法を活用することで、企業の疑問に対する答えを統計解析が提供します。こうしたクエリを実行するための分析環境も、広く普及しつつあります。

    ステージ2の分析は、企業のビジネス部門が特定の課題に対して深い洞察を必要とするケースで、オンデマンドに実行されます。ステージ1と違い、ステージ2の場合、必要とする答えをリアルタイムに得られる汎用的な環境はありません。定義済みのWebポータルなど、質問の答えをすぐに提供してくれるインタフェースも期待できません。

    ステージ2の分析は、可能性や特定のパターンから導き出されたある程度の確証を提供するものです。企業はステージ2の分析を通して、特定の計画のメリットやビジネス改善に役立つ取り組みの条件、そしてビジネスの変化を把握することができます。

    ステージ3:企業戦略との連動

    分析モデルの発展や展開は、たとえばクロスセルやアップセルによるビジネスの成長や離反防止、不正の特定、リスクの軽減など、企業にとってのゴールに合わせて実行します。人工知能や学習機能、統計を使ったデータマイニングやテキストマイニング、予測などのモデルが、目標を定めた企業をサポートするのです。

    一定の監督下で展開されるにせよ、そうでないにせよ、分析モデルは特定の出来事を分類・予測し、似た特徴を持った複数の行動を把握する役割を果たします。実際にビジネスに期待された変化が起これば、それは努力によって得られた成功として評価されます。起こらなければ、修正を行います。
    ステージ3の分析は、将来の業務のあるべき姿を描いた企業が、それに向けて取るべき行動のシナリオを提供します。

    ステージ3では、分析によって新たな知識や利用できる情報を生み出すと同時に、データを原動力にしたイノベーションの土台を提供します。3つのステージはすべて、企業の各部門の役割や責任にもとづき、それぞれの洞察力を高め、意思決定をサポートします。

    分析に精通し、イノベーション力を得た企業は、人事、財務、営業、物流、マーケティング、そしてサービスなど、部門に関係なく、企業のどこからでも分析で得られた知見を利用することにより、競争力を高められます。

    イノベーションは変化を求める

    イノベーションは、私たちが特定の状況を変えようと意識的に努力し、前例のない取り組みを実行に移すことです。役に立つアイデアを追い求め、その適正性や成功の見込み、持続性、周囲に対する説得力、柔軟性、実現性を判断することでもあります。

    変革は、試行錯誤によって得られます。つまり、挑戦こそ変革なのです。正しく状況を判断し、改善できることもあれば、うまく行かないこともあります。


    フィオナ・マクニールは、SASのグローバル・プロダクト・マーケティング・マネジャーを務め、SASの技術を対象にしたプロダクト・マーケティングおよびメッセージングを担当しています。多くのビジネスに分析を適用した経験から、マクニールは、ビジネスやアプリケーション・プロセシング両方に向けて、分析から洞察を引き出すプロセスの自動化にフォーカスしています。マクニールは、さまざまな分野での職務経験を、顧客のビジネス理解に生かし、顧客がテクノロジーを戦略的に活用し、確実な利益を得るサポートを続けています。

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