ウィーン市
行政の透明化
近年、公共機関に対して、より経済的かつ顧客志向のサービス体制を求める国民・市民からの声が高まっている。「政府機関」から企業経営を志向する組織への転換を図ることは組織内外において多くの変革が要求される。しかしながら、特に公共機関では、主要な財務諸表は、組織のパフォーマンスを評価したり管理したりする上で、もはやあまり意味を持たなくなってきている。
ウィーン市は早くから、自組織のパフォーマンスの評価や管理の必要性を認識しており、新しい管理手法を採用する準備を進めていた公的機関の一つである。同市の職員は約6万人で、(うち3万人は保健・衛生関連で、1,000人は経理担当)、現在、顧客志向で革新的な都市行政の新時代へと移行しつつある。
満足できているスタッフだけが顧客を満足させられる。そしてバランス・スコアカードは明確に真実をシンプルに、たまに重要視されなかった事実をも実証する。
Franz Döller 氏
Government Councilor
経営高品質組織であることの実証
ウィーン市はここ数年バランス・スコアカードに注目し続けていた。EUが整備した「European Foundation for Quality Management」(EFQM)が提唱する行政機関向けのマネジメント・コンセプトを同市は採用したが、これはバランス・スコアカードを用いることでより良く推進することが可能である。
「結局、経営品質とは単なる経営指標の集合体とは異なります」、とバランス・スコアカードプロジェクトの創始者であり、第六行政部門行政審議官の Franz Döller氏はコメントしている。
「バランス・スコアカードを利用して、私たちは、まず、私たちの組織が経営品質の高い組織であることを実証し、更には経営品質という概念をさらに細分化したいと考えている。これは、中期的に我々の組織文化を変革し、ウィーン市のイメージに永続的な変化をもたらすだろう。さらに、契約を取り交わした上で、バランス・スコアカードが我々のクライアントやパートナー(病院、学校など)に及ぼす影響についても併せて調査していきたい。」
ウィーン市で会計を担当する第六行政部は請求データ、統計データ、調査結果など、膨大なデータを保有しているが、同市はいわゆる「定性的な事実」に重きを置いており、また、この「定性的な事実」が組織に対して持つ意味合いを理解しているため、職員と市民に対して定期的な調査を実施している。ウィーン市では以前からパフォーマンスモニタリングが行われていたが、個々の職員のパフォーマンスを厳密な基準にもとづいて定量的に測定、記録していたため、データは豊富に有ったにもかかわらず、一番重要な要素を誰もが見逃していしまっていたのである。
「過ぎたるは及ばざるが如し」ということわざがあるが、組織はバランス・スコアカードを用いることで、本当に重要な要因にだけ焦点を当てることが可能となる。ウィーン市では最も時間を必要とする、この「どこに焦点を当てるか」というバランス・スコアカードの概念設計のために、ワーキンググループが組織された。そこで職員同士が議論し、相関関係を定義し、戦略目標とKPIが設定された。この議論の結果に対して、勝手に手が加えられないように、定義された戦略課題等についてはその後5年間使用されることになっている。手直しや改良はバージョンアップ時に行われ、予実の比較等は四半期ごとに実施されている。
迅速、かつ簡潔に
バランス・スコアカード実現のために、あらゆる対象製品を徹底的に調査した結果、SAS® Strategic Performance Managementが選定された。この市場の製品を広範囲に見渡し、他のベンダーも考慮した結果、SASソリューションの以下の点を評価し、選定に至った。
- 導入作業が素早くまた容易に行えるため、短時間でスコアカード構築が可能な点
- 操作が簡単で、長時間のトレーニングが不要な点
- 戦略マップ、スコアカード(組織毎/視点毎/指標毎)、アラートフラグ、ダッシュボード、レーダチャート、時系列グラフ等、様々なプレゼンテーションを提供できる点
- SAP R/3やMicrosoft Officeなどへ直接アクセスし、スコアカードへのデータ入力を自動化するETL機能が優れている点
バランス・スコアカードは第6行政部門にある40のオフィス全てに導入されており、将来的にはさらに拡張されウィーン市全体で導入されるであろう。全ての上級職員および第6行政部門の1,000人の一般職員は、イントラネット経由でバランス・スコアカードにアクセスしている。トップページはスタッフ毎に個々のページを呼び出せるため、スタッフは皆この新しいマネジメントツールに対して慣れ親しんでいる。「私たちの目標はバランススコアカードをマネジメントシステムの中核にすることです。」とDöller氏は説明している。