米国の地方自治体、無線型水道メーターの検針データの有効活用を実現
米ノースカロライナ州のキャリー町(Town of Cary)では、SAS® のアナリティクスを活用して、センサー・データの分析、需要の評価、問題の検知、ビジュアルな需要家エンゲージメントを実現しています。
蛇口からの水漏れ。食洗器の動作不良。スプリンクラー・ヘッドの破損。これらが家庭やビジネスにもたらす頭痛の種は、修理の手間や費用だけではない。こうした不具合は、想定外の水道費請求につながりかねないことに加え、その発生が予測不能であり、さらに残念なことに、不具合の発生を速やかに特定するのが難しいケースも少なくない。
現在のキャリー町では、無線データ通信対応型の水道メーターとアナリティクス駆動型の需要家向けポータルとの組み合わせを通じて、器具の破損や漏水といった水道まわりの問題の発見と修繕を、従来よりも遥かに容易に行えるようになっている。また、この取り組みにより、同町では将来の水道プラント拡張計画や、節約努力に関する的を絞り込んだプロモーションを行う上で重要な「水道利用状況の全体像」を把握することも可能になった。
2010年に60,000件の需要家に無線メーターを導入したとき、同町では、この新しいテクノロジーのメリットは、毎月の手作業の検針業務が不要になることによるコスト削減だけではないことを知っていた。つまり、水道の利用状況について、より正確かつタイムリーな情報が利用できるようになることも理解していた。Aquastar社製のワイヤレス・システムは(月次の12回ではなく)1時間おきに検針を実行するため、需要家ごとに1年間で8,760のデータポイントが得られる。このデータには多大なポテンシャルが秘められているが、それを現実化するためにはデータを容易に活用できる業務環境が必要だった。
キャリーの財務ディレクター、カレン・ミルズ(Karen Mills)氏は次のように説明する。「月次の検針で得られるデータを1ガロン(約3.785リットル)の水に例えるとすると、毎時の検針で得られるデータは、オリンピック・サイズのプールの水量に相当します。SASのソリューションは、それだけの量のデータを快適に管理するために役立っています」。実際、同町のSASソリューションは、同町が水道利用状況に関して約5億件のデータポイントを分析し、その結果を全ての需要家に対し、利用しやすい方法で提供することを可能にしている。
月次の検針で得られるデータを1ガロン(約3.785リットル)の水に例えるとすると、毎時の検針で得られるデータは、オリンピック・サイズのプールの水量に相当します。SASのソリューションは、それだけの量のデータを快適に管理するために役立っています。
カレン・ミルズ(Karen Mills)氏
キャリー町の財務ディレクター
また、一般家庭または商業利用の需要家が毎時のデータをビジュアルに把握できる機能は、いつくかの非常に実用的なアプリケーションの開発へとつながった。
- 同町は需要家に対し、水漏れの可能性を数日以内に通知できる。
- 需要家は、水道利用量のスパイク(急激な上昇)が発生した場合に数時間以内に通知を受けるように、アラートを設定することができる。
- 需要家はオンラインで水道利用量を追跡できるため、水の節約に対して、よりプロアクティブ(能動的)に取り組める。
例えば、同町内のとある企業では、オンライン・ポータルを通じて、従業員がいないはずの週末に水道利用量のスパイクを確認した。これは奇妙な状況であり、この異常な検針データは、この企業が業務用の食洗器に不具合が発生し、週末中も動き続けている状況を把握するのに役立った。もし、無線の水道メーター・データと需要家向けのポータルがなかったとしたら、この問題は見過ごされ、水と資金が浪費され続けたことだろう。
同町では、個人別の毎日の水道利用量についても、より正確に把握できるようになっているが、この情報は将来の水道プラント拡張を計画する上で極めて重要だ。恐らく最も興味深いメリットは、多大なコスト波及効果を持つ直感的な見通し(キャリーの住人は水道利用に関して非常に経済的である)について、同町がその妥当性を確認できたという点である。「私たちが最新の高効率アプライアンスを用いて算出した結果では、1日および1人あたりの室内での水道利用量は35ガロン(約132リットル)まで下げることが可能だと考えています。キャリーの住人の平均は45ガロン(約170リットル)ですが、それでも並外れて低い水準です」と、同町の水資源マネージャー、レイラ・グッドウィン(Leila Goodwin)氏は説明する。この点がなぜ重要かと言うと、同町は水利用の効率化を推奨する活動に資金を投じており、低水流型(=節水型)トイレに対するキャッシュバックや、雨水貯留タンクに対する割引券配布といった施策を展開しているからだ。現在の同町では、より的確にターゲットを絞り込むアプローチを用いて、特定の需要家層が室内/屋外の両方の水道利用について理解を深め、的確に管理できるように効率的に支援することが可能になっている。
SASのソリューションは、住人が各自の水道利用を理解できるようにする取り組みに関してだけでなく、2つの別々のデータベースを背後で連結させる工程に関しても、極めて重要な役割を果たしている。「私たちは、請求処理用データベースと検針用データベースを運用しています。これらを統合し、需要家に提示可能な情報へと変える必要があります」と、ミルズ氏は説明する。
同町の試算によると、手作業の検針業務が不要になるという点だけでも、Aquastar社製システムのコスト削減効果は1,000万ドル(11億円。1ドル110円換算)以上に及び、これはこのプロジェクトの導入コストを上回る額だという。しかも、アナリティクス・コンポーネントの貢献も加味すると、さらに大きな節約効果が見込まれる。既に、同町と個々の町民の双方が、水漏れの早期発見によって資金の節約を実現している。また、同町が将来のインフラ・ニーズの計画を続けていく中で、水道利用量について正確な情報を活用できることは、適切な時期に適切な規模のインフラに投資を行っていくために役立つことになる。さらに、水道利用量に対する理解は、同町が干ばつなどの災害に遭ったときの対策運営にも役立つという。
グッドウィン氏は次のように説明する。「私たちは、2007年に干ばつを経験しました。もし次の干ばつが発生したときには、Aquastarのデータを活用して、私たちの水道利用量を日次ベースで正確に把握し、需要家の皆さんにお伝えすることを計画しています。例えば、”この町では今、〇〇の状況が発生しています。水道供給量が低下しているため、あなたが利用できる量は△△です” といった情報を提示することができます。そうした機能を使う事態が生じないことを願っていますが、その準備は整っています。」
課題
- 水道利用状況に関して約5億件のデータポイントを分析し、その結果を全ての需要家に対し、ビジュアルな方法で提供する。
- 将来の水道プラント拡張計画や、節約努力に関する的を絞り込んだプロモーション活動を向上させるために、水道利用状況の全体像を把握する。
ソリューション
利点
- 需要家は、水漏れやその他の原因による利用量スパイクが発生した場合、数日以内にその事態を把握できるようになった。
- 需要家は、水道利用量が所定の値を超えたときに即座に通知を受け取れるように、アラートを設定できるようになった。
- 同町は、水道がどのように利用されているかの状況を、より的確に理解できるようになった。
- 同町は、水道管網における水漏れを速やかに特定できるようになった。
- 同町では、将来の水道供給ニーズや干ばつのような緊急事態に対する準備態勢が向上した。