フィンランド最大手のリテール銀行、顧客サービスとクレジット・スコアリングを改善するためにAIを適用
自動化されたプロセスにより、意思決定の迅速性・正確性の向上が実現
アナリティクスでローン契約処理時間を短縮
S-Bankがこの事例で活用した製品 • SAS® Visual Data Mining and Machine Learning • SAS® Model Manager • SAS® Intelligent Decisioning • SAS® Visual Analytics • SAS® Visual Statistics(実行基盤はSAS® Viya® on Azure)
S-Bank、SAS Viya on Azureを活用して、より優れた顧客サービスと、より迅速かつ正確なローン契約処理を提供
銀行は、COVID-19のパンデミックが引き起こした経済混乱の最前線に立っている。中央銀行、大手のユニバーサル・バンク、中小規模の地方銀行、FinTech企業、チャレンジャー・バンクは皆、以下をはじめとする難題とリスクに直面している。
- ローン商品、とりわけ低金利商品に関する、極めて競争の激しい市場
- 最終利益に悪影響しかねない外部性(例:パンデミック、気候変動による自然災害など)を予測する必要性
- GDPR規制による “違反への厳しい罰則” に伴い、個人識別可能情報(PII)データの保護を強化する必要性
こうした厳しい情勢下で銀行が成功するためには「ロイヤル顧客」の存在が欠かせない。フィンランドのS-Bankは顧客ロイヤルティに関してナンバーワンに格付けされており、同国の年次のCustomer Loyalty Indexによると、家財道具小売のIKEAや自動車部品小売のMotonetといった有名ブランドさえもしのぐ結果となっている。
では、低金利、進化するローン商品、予測不能な経済情勢といった要因を伴う極めて競争の厳しい市場で、S-Bankはどのようにして顧客へのフォーカスを維持しているのか? 同行はカスタマー・インテリジェンス、クレジット・スコアリング、ビジネス成果改善のためにアナリティクスと人工知能(AI)を活用することで、大きな成功を収めてきた。特に今現在は、SAS Viyaを基盤とするSAS Visual Data Mining and Machine Learningを活用することで、より迅速かつ正確なローン契約処理を通じて、より優れた顧客サービスを提供している。
SASは一つの課題を解決する一つのソリューションを当行に提供したのではありません。SASはアナリティクス・ライフサイクル全体と、当行のほとんどのニーズをカバーしてくれました。S-Bank内でこれについて議論を始めてみると、我々が築き上げてきたものや必要としているものにSASが1対1で合致する、ということが明確になりました。 Johanna Makkonen Senior Analyst S-Bank
「データは未来です」と言うのは、S-Bank Finlandのシニア・アナリスト、ヨハンナ・マッコネン(Johanna Makkonen)氏だ。同氏はアナリティクス・ファクトリーというビジョンを開発したが、これは「AIをすべてのデータサイエンティストの手元に、また、セルフサービス型のビジネス・インテリジェンス・ツールをすべてのデスクトップに配置する」という構想である。
顧客重視の姿勢でプロセスを自動化し、与信/融資の処理時間短縮を実現するにあたり、S-Bankが選んだのはSASとのパートナーシップだった。
マッコネン氏はS-Bankで直近の8年間、さまざまなアナリスト職として働いてきた。今現在、彼女のチームには4名のアナリストがおり、行内では12名がアナリティクスに従事している。マッコネン氏のチームの責務は「S-Bankがビジネスのあらゆる領域においてデータドリブンなアプローチを取っている状態」を確保することだ。
「SASを使い始める前は、数年ほど予測モデルを利用していましたが、モデルを用いた業務遂行や、モデルの作成、モデルのモニタリングについて、構造化された方法を持っていませんでした。モデルはスケーラブルではなく、我々にとってはブラックボックス・モデルのようなものでした」と、マッコネン氏は説明する。「(SASの導入後、)当行のビジネスにとって極めて重要なニーズ、とりわけ以前の技術ソリューションでは満たせなかったニーズを識別するモデリング・プロセスを作成しましたが、SASではクリック操作だけでそれが可能でした。」
SASおよびMicrosoftとの強力なパートナーシップ
マッコネン氏とそのチームは、目標を達成するには新旧のデータソース、自動化機能、応用インテリジェンス機能の組み込みが必要になる、ということを理解していた。また、自行のシステムは、標準化する必要があるものの、「国内/地域/国際の基準を遵守すると同時にモデル・パフォーマンスの適応および改善も図っていくのに十分な柔軟性」も必要である、ということも理解していた。
選択肢を調査した結果、S-Bankは既存のワークロードをMicrosoft Azureのクラウドに移行し、アナリティクスをSAS Viyaでモダナイズすることを決断した。Azureは、ユビキタス性、スケーラビリティ、豊富なインテリジェンス、さらには、SASのような他のプラットフォーム/ツールへのシームレスな接続性という点で、同行のインフラニーズを満たした。
SAS Viya on Azureを用いたモダナイズにより、S-Bankは各種の改善されたビジュアルツールへのアクセスと、データに近い場所でアナリティクスを実行する手法によるパフォーマンス向上を手に入れた。また、自動化機能とリアルタイムの意思決定機能を組み込むことで、プロセスのサイロ(縦割り管理)の削減と、アナリティクス・ライフサイクル全体にわたる管理の改善を実現した。
イイッカ・クオサ(Iikka Kuosa)氏は、S-Bankの商品およびIT担当シニア・バイス・プレジデントであり、同行が成功するのに必要な処理キャパシティとツールを確保する責務を担っている。
「SASとの協働は、アナリティクスを用いた業務遂行に関して、より構造化された方法を当行にもたらし、また、プロセス/手法/ツールの整合性を確保するために役立ちました」と、クオサ氏は言う。「SASとAzureによるソリューションは、アナリティクスを用いた業務遂行の方法を大きく改善しましたが、特にこのツールが備える各種のビジュアル機能は、アナリティクス・チームと事業開発チームの間の整合性・連携性の強化に役立ちました。」
SASとAzureによるソリューションは、アナリティクスを用いた業務遂行の方法を大きく改善しましたが、特にこのツールが備える各種のビジュアル機能は、アナリティクス・チームと事業開発チームの間の整合性・連携性を強化するために役立ちました。 Iikka Kuosa Senior Vice President, Products and IT S-Bank
アナリティクスにより、リアルタイムの意思決定が実現
「それはソリューションについてだけではありません。モデリング・プロセス、ビジュアルな(機械)学習機能、さらには、リアルタイムの意思決定を可能にするインテリジェントな意思決定支援機能についても同様です」と、マッコネン氏は言う。「当行の分析モデルでは、構造化データである顧客データを利用しているため、この点は特に重要です。このデータの主な利用者はアナリティクス部門ですが、将来的には、このデータはあらゆる部門にとって不可欠な要素となり、モデルを適用したい対象となるでしょう。」
リアルタイムの意思決定は銀行・金融業界では特に重要である。この業界では顧客データが利用され、スピードと正確性が重要な要因となるからだ。
「SAS(のソリューション)は時間の解放にも役立ちました。手作業でデータを取り出して別のツールに入れる必要がなくなったので、モデルを適用して結果を取得するだけで済みます」と、マッコネン氏は言う。「また、モデルの再実行も簡単ですから、ゼロからやり直す必要がありません。これにより、技術的問題に時間を費やす必要がなくなるため、アナリティクス・チーム全体で時間とリソースが節約されます。今では、技術的問題のメンテナンスではなく、事業開発やモデル作成の方に、より注力できるようになっています。」
また、モデルのモニタリングを自動化することによっても、意思決定の迅速化と信頼性向上が促進され、新たな情報を求めてデータを調査するための時間が解放される。モデルの収益性を測定するのも簡単だ。
「これは、お客様の待ち時間を劇的に削減するために役立つでしょう」と、マッコネン氏は言う。
「SAS Viya on Azureは顧客サービスの向上に役立っています。より的確にターゲット化したオファーを提供し、顧客サービスを改善することが、お客様との長期的な関係につながるのです」と、クオサ氏は付け加える。「当行では、意思決定の向上を実現するため、お客様の動機をより深く理解するため、そしてお客様の進化するニーズに対応し続けるために、データを活用する必要があります。」
S-Bankに関する事実と数字
2021年9月現在
310万
顧客
59億ユーロ
ローン・ポートフォリオ総額
データから価値を創出するための継続的な探求
「SASを活用して獲得・達成できることで私が最も興奮しているのは、データサイエンスへの移行です。すなわち、当行は真に興味深い職務機会を提供すること、すべてのアナリストにデータサイエンティストになる機会を与えることができています」と、マッコネン氏は言う。「ツールがガイドしてくれるのでコーディング知識は不要ですから、初級アナリストは従来よりも容易にデータサイエンティスになることができます。」
これはビジネスにとっての価値向上を意味する。なぜなら、アナリストたちが、より多くの事業開発に取り組み、新しい領域や可能性を調査できるようになるからだ。このシフトにより、アナリストの役割は変化および拡大する。技術的な役割が減り、助言的な役割が増える結果、彼らはより大きな価値をビジネスにもたらせるようになる。
「SASのテクノロジーの最も革新的な部分は、自動化された機械学習です」と、マッコネン氏は言う。「他のどのツールも、この機能を提供してくれませんでした。当社ではシンプルにこれを動かし、分析モデルに仕事をしてもらっています。そのおかげで、我々は単なる統計解析ではなくビジネス改善にフォーカスできます。私はこれまで、そのような機能を見たことがありません。」
データが未来というのは銀行・金融業界だけの話ではない。どの業界でも、成功するためには、データとビジネス知識を組み合わせて最良の解決策を特定できるようになる必要がある。アナリストが会社にとって最適な成果を上げるためには、ビジネス目標との緊密な連携に留意して取り組む必要がある。
銀行・金融業界は厳しく規制されているため、データモデルがそれに関連する諸規制に準拠していることが極めて重要だ。「SAS Analyticsと自動レポーティング機能を活用することは問題点の識別に役立ちます。モデルのアラートと同様です」と、マッコネン氏は言う。「このソリューションは当行におけるコンプライアンス確保を容易にしてくれます。」
S-Bankでは、事業開発チームや営業チームからのフィードバックに基づき、積極的に新しいモデルのイノベーションおよび構築に取り組んでおり、これらの機械学習モデルを業務実装することで、巨大な節約の可能性がもたらされる。
また、SAS Analyticsを活用すると、ローン契約処理のスピードと正確性がともに向上するため、S-Bankの顧客にとっての違いも生み出される。
「SASのおかげで、当行は競争の一歩先を進み続けています」と、マッコネン氏は言う。「私はSASとの協働を本当に楽しんでおり、当行はアナリティクス・ライフサイクルまわりの複雑な領域について多大な助力を得ています。さらに、SASには最高のエキスパート陣がいますから、我々は幸運です。」
「SASは当行の事業成功を容易にするツール群を提供してくれました」と、クオサ氏は付け加える。「そして、これらのツールは組織の全員にとって非常に使いやすく、サイロが解消されるため、当行はより優れたサービスをお客様に提供できるようになっているのです。」
本記事に掲載された導入効果は、各企業によって異なる状況やビジネスモデル、入力データ、業務環境に固有のものです。SASの紹介する顧客体験は、各企業に固有のものであり、業務面や技術面の背景もそれぞれ異なるため、各事例に掲載されたあらゆる証言は、導入の典型例を示すものではありません。導入にともなう金銭的効果、導入結果、ソリューションのパフォーマンスなどの特徴は、個別の顧客のコンフィグレーションや使用条件に左右されるものです。本事例は、すべてのSASの顧客が当該事例と同じ導入効果を得られるとするものではなく、そうした効果を保証するものでもありません。SAS製品および提供サービスの保証内容は、各製品・サービス向けに締結された契約書内の保証条項に記載された内容に限られます。したがって、本事例に掲載された内容は、それらの保証内容をなんら補足するものではありません。事例に掲載された顧客は、各事例をSASとの契約にもとづいて提供しているか、SASのソフトウェアの導入成功にともなう体験を共有しているものです。