株式会社りそな銀行
住宅ローンのリスク分析をSASで実現
市場動向を考慮した預金量予測など、
経営に役立つデータ分析を展開
株式会社りそな銀行(以下、りそな銀行)は、1990年代半ばからSASによるデータ分析に取り組んできた。2000年代に入り、住宅ローンを重点推進項目として積極展開を行い、データ分析ツールとしてSASの利用を選択した。億単位のレコード数を持つビッグデータを高速に分析できる安定したシステムであることが選択の理由であり、住宅ローンに関する審査モデルの構築や収益性などの顧客分析に役立てている。近年においては、住宅ローンのリスク分析で培った経験や手法を、金利動向や人口動態まで考慮した預金量予測に応用し、経営に役立つデータ分析を推進している。
億単位のレコードを高速に安定して扱うにはSASがベスト。
少しでも多くのお客さまに当社の住宅ローンをご利用いただくための施策を決める上で、SASは大いに役立っています
荒川 研一氏
りそな銀行 リスク統括部 金融テクノロジーグループ グループリーダー
住宅ローンのリスク分析にSASを活用
りそな銀行は、りそなグループの中核となる大手銀行だ。商業銀行としては唯一、自社で信託業務を併営していることが特色で、関西圏と関東圏に強い地盤を持つ。住宅ローンに強く、貸し出しに占める住宅ローンの割合は、大手銀行の中で最も高い。それは、同社が業界に先駆けて住宅ローンに注力し、貸し出しを伸ばしてきた結果である。
同社がSASの利用を開始したのは、1990年代のこと。大量のデータを取り扱う銀行業務において、そのデータを安定して取り扱い、分析できるシステムとしてSASが目に止まったのだ。以来、業務への活用を目指して、調査研究目的で活用し、さまざまな検証と分析を行ってきた。
1990年代後半以降の住宅ローン事業の積極推進施策のもと、2000年には審査モデルを構築。積極的な営業を展開するとともに、データに基づいた審査やマーケティングを行ってきた。その背景として住宅ローンビジネスの競争が激しくなり、お客さまのリスクを適切に判断し、リスクに見合った金利設定の必要性が高まってきたことがあった。
住宅ローン事業の積極推進により、同行の住宅ローン貸し出し残高は大きく伸び、審査する案件数も増え、データ蓄積も進んだ。そこで、審査モデルの更なる高度化と、ローン実行後の収益性分析を目的とした新ツールの開発を行うこととし、これについても長く活用してきたSASを用いることを決めた。
分析結果を生かし、常に安定的な収益を確保
審査モデルについて、りそな銀行 リスク統括部 金融テクノロジーグループ グループリーダー 荒川 研一氏は、「住宅ローンの審査において、リスクの全くない人は存在しません。審査モデルでは、お客さまの職業や年収に加えてさまざまな要素を取り込んで、“リスクはあるけれどご融資できる人”を見つけられるようにしています。少しでも多くのお客さまに利用していただく、という方向において、SASは大いに役立っています」と話す。
リスク管理においては、過去の繰り上げ返済実績や返済履歴、延滞履歴、そして職業や年収の変化などを総合的に判断し、お客さま一人ひとりのリスクの状況を把握している。
一般に、法人への貸し出しは、過去の決算書を毎期見て判断する。
一方、住宅ローンは30年間にわたる貸し出しであり、顧客の状況はその間に変化するため、長期にわたるデータを用いた分析が必要になる。これらの情報を的確に管理することで、たとえばリスクに見合った適切な貸出金利を提案することができる。
「これらを実現するためには、億単位のレコード数を扱う必要があります。これだけ大量のデータを高速に分析するにはSASはベストなシステムです。」(荒川氏)
SASによる分析結果は確実な成果を出している。金利別や顧客属性別に収益状況を分析してみると、バランス良く安定的な収益が確保されていることが確認できている。
市場の変化や人口動態を考慮した預金動向を経営に役立てる
りそな銀行リスク統括部の金融テクノロジーグループでは、金融商品のプライシングロジックやリスク分析を行っており、スタッフの半数はSASを使って業務を行っている。現在、定期預金や流動性預金(普通預金)の分析へと展開しており、顧客群の過去の取引を分析し、適正な金利を算出したり、将来残高の予測を試みるなどしている。
このアプローチをさらに進めると、金利上昇局面の預金量の予測など、市場動向を見据えた分析を行うことができる。銀行にとって預金は重要な調達手段であり、預金残高の動きを予測することは、経営にとって大切な指標だ。ビッグデータの分析結果を経営レベルで活用することがすでに始まっている。
この分析を主導したリスク統括部 金融テクノロジーグループ マネージャー 上武 治紀氏は、「現在の分析モデルは、商品別に残高の動きを予測するものです。将来は、地域や個人レベルにまで分析対象を絞り込み、それぞれの層で残高の分布を分析できるようにする方向です」と話す。
今後の人口減少を見据えた分析も行っていく方向だ。リスク統括部 金融テクノロジーグループ 片山 芳明氏は、「都市部と地方では、人口動態が異なります。預金量がピークを迎え、人口減少に伴って収束すると考えれば、近い将来の市場の景色は現在とは変わってくるはずです。人口を軸に、経営に役立つような基礎分析を行いたいと考えています」と話している。
このように同社では、住宅ローンのリスク分析で培った経験やノウハウを、市場動向や地域別の人口動態、個人の取引履歴まで考慮した、より粒度の細かい預金量予測に応用し、SASを活用したデータ分析を経営に役立てています。