米NBAチームのオーランド・マジック、SAS Analyticsで収益拡大を達成
華やかなプロスポーツの世界でも、固定ファン層が小さなチームの多くは、大きなファン層を擁するライバルチームと互角に戦っていけるだけの収益基盤を確立するために苦労している。そんな中、オーランド・マジックはSAS® for Patron Value Optimization を活用することにより、NBA(全米プロバスケットボール協会)所属チーム内でファン層の規模が第20位であるにもかかわらず、第7位の収益を達成した。
オーランド・マジックのこうした成果の裏には、さまざまな取り組みがある。それには、チケットの再販市場を研究してチケットを適正価格に維持する、シーズンチケット(年間パス)の契約者が脱会するリスクを予測して引き留め策を実施する、売店とチーム関連商品の売上高を分析して試合会場に来てくれるファンが何を望んでいるかを的確に把握する、といった対策が含まれる。さらに、監督やコーチがベストな選手起用を行えるように支援するためにもSASを活用している。
オーランド・マジックのCEO、アレックス・マーティンズ(Alex Martins)氏は次のように話している。「最大の課題はファンの体験をカスタマイズすることですが、SASはそのすべてを非常に堅牢な方法で管理できるようにサポートしてくれます」
課題: 客席を満員にする
あらゆるプロスポーツ・チームと同様、オーランド・マジックでも、年間41試合あるホームゲームをすべて満席にするため、新たな戦略を常に探し続けている。ビジネス戦略担当ディレクターのアンソニー・ペレス(Anthony Perez)氏は次のように説明する。「ホームゲーム開催日に新たな収益源を確保し、高騰する選手の報酬や経費を賄えるようにすることが重要です」。しかし、オンライン上でのチケット再販市場という手強い競争相手が登場したため、シーズンチケット更新率90パーセントという業界ベンチマークを達成するのは、ますます難しい状況となっている。
ペレス氏の部署では、売店や関連商品、チケット販売などあらゆる収益源(からのデータと、チケット再販市場での売買データなどの外部データを統合、分析し、会社全体にとって利益となるモデルを開発するという手法を採用している。「私の部署は社内コンサルティング・グループのようなものです」(ペレス氏)
シーズンチケットの所有者に関しては、購入履歴データと更新パターンを活用して決定木モデルを構築し、大口契約者を「更新の可能性が高い」、「更新の可能性はほとんどない」、「条件次第」という3つのカテゴリーに分類する。ペレス氏の説明によると、顧客サービス部門では更新時期が近づくと、この中の「条件次第」の所有者に注目するという。
オーランド・マジックはNBA所属の全30チームでファン層の規模は第20位ですが、チケット販売に関しては第7位の収益源を確保しています。その理由は、データを極めて効果的に収集・分析していることにあります
アレックス・マーティンズ氏
CEO
こうした取り組みで特に重要となるのは、知見・洞察を導き出すスピードだ。オーランド・マジックではSASで利用できるヒートマップを用いて定期的に情報を更新し、試合日が近づいても売れ残っている席数を会場のセクション別に把握している。運営サイドの誰もがポータル経由で、このデータにほぼリアルタイムでアクセスできるため、例えばマーケティング担当者は、満席にするための特別キャンペーンの実施について迅速に意思決定を行うことができる。
「何日か後に迫った試合のチケット販促にどんなキャンペーンが必要かを判断するのに、1日の終わりまで待っているわけにはいきません。SASのおかげで私たちは、望みうる限り最新のデータを活用できるようになっています」と説明した上で、さらにペレス氏は、ヒートマップのデータはシーズンを通じて分析・検討し、翌シーズンの価格設定とパッケージ化の計画にも活用していると付け加えた。
全社での分析活用を促進する使いやすさ
ペレス氏はSASの使いやすさを高く評価しており、これが分析業務をアウトソーシングせずに社内で処理している大きな要因となっている。同氏の部署では、繰り返し実行するプロセスを特定し、それを自動化する。データ操作は必要最小限で済むため、「いたずらに手作業でデータをいじるのではなく、データを解釈する作業に多くの時間を割くことができます」。また、全ての部署の担当者は経営陣も含め、ポータルを通じて情報に即座にアクセスできる。「単にツールを毎日使っているというレベルを超え、常にツールを駆使して意思決定に活用しているのです」(ペレス氏)。
課題
シーズンチケットの所有者が更新しないリスクを特定し、チケットの価格設定を最適化して収益の増大を図る
ソリューション
利点
収益の増大、チケット価格設定の最適化、顧客生涯価値に対する理解の向上