オルビス株式会社

One to Oneマーケティングのさらなる深化に向け、マーケティングシステムを一新
SASと共に、立ち止まらず前へ進む

オルビス株式会社(以下、オルビス)は、顧客とのコミュニケーションをさらに強化するために、3世代目のデータベース・マーケティング・システムとして、SAS® Marketing Automationを導入。システムは飛躍的に高速化し、より深い分析・顧客コミュニケーションを実行できるようになった。また、分析のフロントとしてSAS Enterprise Guideを現場部門にも展開することで、分析のユーザー・セルフサービス化も成し遂げている。

分析やセグメントの自由度の高さを評価してSASを導入し、One to One マーケティングを高度化しています。SAS Enterprise Guideにより、思いついたときに自分たちで分析したいという現場部門の要望にもこたえています

松枝 奏輔氏
オルビス株式会社 通販事業部 係長

ビッグデータを高速に処理できるシステムを

オルビスは、化粧品を中心に、栄養補助食品やボディウェアなども扱う通信販売を主体とした企業だ。オイルカットスキンケアをはじめとした独自の製品や送料無料・30日間返品交換OKといったサービスの差別化で化粧品通販業界の先頭を走ってきた同社だが、近年は多くの企業による市場参入もあり、その独自性・差別性が希薄化しているという課題認識が高まっていた。そこで、革新性あるブランドへの回帰を目指しブランド再構築を推進。さらなる商品価値の向上とコミュニケーションの変革を目指し、全社を挙げて取り組んできた。

ブランドの再構築にあたって、最も大切になるのは何か。同社の経営陣は、一人ひとりの顧客をより深く知ることがカギになると考えた。顧客のニーズ・ウォンツをより精緻につかみ、One to Oneコミュニケーションを強化する。そのためには、データベース・マーケティング・システムの刷新が必要であった。

通信販売業界は、百貨店業界などと並んでデータベース・マーケティングの先頭を走ってきた。ダイレクト・メールの送付件数の最適化によって、印刷費と送料を大きく下げられるコストメリットから始まり、顧客へのオファー最適化など、取り組みの幅を広げてきた。すでに、データベース・マーケティングは、企業のサービス力の一部になっている。同社もその1社として、古くからこの分野に取り組んできた。

先代のシステムは、2代目。顧客へのOne to One対応を図るには細かいセグメンテーションを瞬時に実行する環境や、セグメント条件となる大量のデータの保管が求められるが、処理速度、データ量のいずれの面においても満足のいかない点がでてきていた。通販事業部 係長 松枝 奏輔氏は、「2代目のシステムは、分析やセグメントの自由度の面でももの足りなさを覚えるようになりました。たとえば、データテーブルのリレーションは予め結合キーがシステム側で定義付けられており、ヘッダと注文明細を受注番号でひも付けたいというような新たなニーズが出てきてもユーザー側では対応ができないといった点です。」と話す。

そこで同社は、3代目となる新システムへの置き換えを決断。SASおよびシステム導入を担当する日本情報通信株式会社からの提案を受け、SAS Marketing Automation導入を決めた。ビッグデータを高速に処理でき、顧客をより深く知ることのできるソリューションであると評価したためだ。

現場部門が自由に分析できる環境

導入プロジェクトは、約半年で完了した。安定稼働を図りながら、全ユーザーに分析のフロントとして使用するSAS® Enterprise Guideのトレーニングを行った。最も力を入れたのが、集合研修後の定着化トレーニングだ。演習問題を60問作り、研修が終わると毎日配信した。問題を解いてもらうことで、SASを使いながら操作に慣れていくことを促したのだ。使わなければ、忘れてしまう。

それを防ぐとともに、より効率的な使い方を覚えてもらうことにもつながった。
松枝氏は、「2代目のシステムは、ライセンスの関係から展開できるユーザー数が限られていました。今回導入した3代目システムのライセンス体系では、SAS Enterprise Guideにユーザー数の制限がないため、現場部門にもシステムを使ってもらいたい、という長年の夢が実現しました」と話す。

従来は、現場部門から分析ニーズがあると、通販事業部でデータ分析を行う戦略企画管理チームへ分析依頼をかけていた。同チームは、主とすべき業務をこなしながらこうした依頼に対応する必要があり、簡単な分析であれば現場部門側でやってもらう方が効率的だ。一方、現場部門からも、依頼から返事があるまでのタイムラグは不満要素で、「思いついたときに自分たちで分析したい」というニーズがあった。

両者の願いは一致しており、トレーニング受講者が熱心に取り組んだことも、定着の早期化に貢献した。現場部門が顧客分析に習熟するに従って、戦略企画管理チームへの分析依頼は大幅に減った。
いまでは複雑な分析だけを戦略企画管理チームが代行するところまで持ってきた。分析を代行する際には、やり方をフィードバックすることで、現場部門のスキルは高まってゆく。

分析環境を現場へと開放したことで、現場部門に顧客の動きを定量的にとらえる文化が醸成され始めた。たとえば、商品のリニューアルにあたって、これまでは商品の魅力を高める、という方向が議論の中心になっていた。いまでは、「現行の商品を買ってくれている顧客は“どんな人”か」「新しくすると、“どんな層”に受け入れられるか」という定量的視点が加わるようになった。

「現在、全社で約40人が利用していますが、想定していた以上に活用されています。以前は、“分析を頼みたいけれど、忙しそうだし申し訳ないからやめておこう”となっていたケースも多かったのでしょう。SAS Marketing Automation導入後は、分析結果に基づいて、数字を根拠に次の施策について議論できるようになってきました」(松枝氏)
ビッグデータの高速処理と深い分析というニーズもクリアした。

カタログ送付にあたって行う顧客のリスト化は、営業日を1日使う大切な作業だ。システムが高速になった結果、担当者が慣れない中で行った初めてのリスト化から、以前と同様のリストを短時間に得られた。分析の習熟を深めるに従い、細かな条件設定を加え、リストの精度を高めている。そして、システムは依然、ハイパフォーマンスにリクエストを処理している。

売上げアップへの貢献も図りたい

システムの定着はスムーズに進み、処理時間の短縮と現場部門のセルフサービス化は進んだ。当初の目的は達成されたいま、オルビスは次のステップへと歩みを始めた。マーケティング・オートメーションによる、売上げアップへの貢献だ。

「システムは、業務に必要不可欠なインフラではあります。しかし、今回高機能でハイパフォーマンスな仕組みを手に入れたことで、インフラの刷新による工数削減やそれに伴うコスト削減だけでなく、売上げにつながる成果を得たいと考えるようになりました」(松枝氏)
戦略企画管理チームはより高度な分析を実行できるSAS® Enterprise Minerを積極的に使用し、One to Oneマーケティングの深化に向けた体制を整えると共に、売上げの向上に貢献できそうなポイントを洗い出そうとしている。

すでに、顧客アクションを起点に、その後のプロセスをシステムで自動化する試験には着手している。たとえば、購買後のフォローメール配信をテストしており、成果が見られているという。今後は、買い物かご放置への対応や、顧客の属性や購買行動に応じたオファー適用の自動化、ポイント有効期限の通知などへと範囲を広げる計画だ。
松枝氏は、「私たちに課せられたミッションは、立ち止まらず、どんどん前へ進むこと。
SASのセミナーへ行くと、さまざまな使えそうな機能を知ることができます。その豊かなソリューションの中から、最適なものを適用し、活用のスピードを上げていきたいと考えています」と話している。

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課題

顧客のニーズ・ウォンツをより精緻につかみ、One to Oneコミュニケーションを強化するために、データベース・マーケティング・システムの刷新が求められた

ソリューション

利点

ビッグデータを高速に処理し、細かいセグメンテーションを瞬時に実行できる環境を構築。現場部門も必要なデータ分析を実行し、数字を根拠に適切な施策を展開できるようになった