発電・給電を効率化し、需要家に高い価値を提供
電力協同組合のODEC、SAS Energy Forecastingを活用してエネルギーニーズを正確に予測し、組合員団体向けの料金を低く維持
壁のスイッチを入れると照明がつくと期待するのは当たり前であり、ごく希な場合を除けば実際にそうなる。これは、エネルギー会社が過去のデータからグリッド上の電力需要を予測し、需要家ニーズを見越した計画を何ヶ月も前から立てているからだ。
予測精度の向上は、サービスの信頼性を高めるのみならず、コスト削減にも貢献する。事実、オールド・ドミニオン電力協同組合(Old Dominion Electric Cooperative: ODEC)のような電力事業者は、エネルギーの購入時期を事前に予測するためにアナリティクスを活用している。そうした取り組みがコスト削減をもたらし、組合員団体のエネルギーコスト低下にもつながる。ODECは、米国バージニア州、メリーランド州、デラウェア州に及ぶ11の非営利配電協同組合に電力を卸売りしており、エンドユーザーとしての需要家は3州の郊外および田園地域で140万件に上る。
同組合では、組合員団体に最高の価値を提供するため、SAS Energy Forecastingを活用して気象、需要、人口増加に関する幅広いデータを管理・分析している。その効果は多大であり、導入から2年足らずで料金の引き下げを4度も行い、組合員団体に何百万ドルものコスト節約効果をもたらしている。
将来の計画
予測分析は、エネルギー会社が日次計画、月次計画、さらには数十年先までの計画を立てるために役立つ。組織内外の幅広いデータポイントを利用することで、購入する必要のあるエネルギー量や有望な投資先を予測するのだ。例えばODECでは、2017年に建設予定の天然ガス発電所に対する30億ドルの投資判断に予測分析を活用した。
供給する電力の大半をエネルギー市場から購入するODECのような電力協同組合にとっては、将来の需要を予測できる能力が極めて重要だ。ODECは現在、供給量の47%を自社施設で発電しており、残りの53%は何ヶ月も前に購入する必要がある。事業運営の命運を市場に握られているようなものだ。
「私たちの商材は保管が利かないため、棚に並べておくわけにはいきません。発電も送電もリアルタイムです」と話すのは、ODECの負荷予測担当マネージャー、デイビッド・ハミルトン(David Hamilton)氏だ。「照明やエアコンのスイッチを入れさえすれば自由自在に電気を使えると誰もが思っています。それが当たり前ですから、私たちには適切な計画が欠かせないのです」
SAS Energy Forecastingの導入後、ODECでは予測の効率と精度が大きく向上しているという。ODECでは価格動向によって6ヶ月から3年先までの購入契約を結んでいるが、当然ながら、価格が安いときに電力をまとめ買いしたいと常に考えている。
「予測は、まさにビジネスの推進力です。会員組織それぞれの翌年のニーズに対応するためには、十分な電力供給量を確保しておく必要がありますから」(同氏)。
当組合の料金が低く、低いまま維持できているのは、予測精度が極めて高いからです。
デイビッド・ハミルトン(David Hamilton)氏
負荷予測担当マネージャー
優れたアプローチがもたらす予測精度の向上
ハミルトン氏の入社当時、ODECでは市販のソフトウェアとMicrosoft Excelを使ってエネルギー予測を実行していたという。こうした方法が非効率的なことは言うまでもないが、もともと抱えていたデータ検証面の課題も手付かずのままだった。何より深刻なのは、そのままでは規制当局や監査機関から疑惑の目を向けられかねない状況だったことだ。
ODECが求めていたのは、既に利用できる状態にあるデータを活用して意思決定を向上させる、というシンプルな解決策だった。今ではSASソリューションが中長期予測の唯一のソースとなっており、ハミルトン氏によると、この関係は「今後も決して変わらない」。その大きな理由は透明性だ。SEC(米証券取引委員会)や州の委員会の監査がいつ入ったとしても、モデルの作成方法やモデルにかけるデータについて、ODECは堂々と開示することができる。
「私が望むのはオープンなシステムであり、SASは全てを完備し、完全に説明できる数少ないベンダーの1つです。統計情報やプログラミングも含め、評価や監査を行う者にとって全てが完璧にオープンなのです」(同氏)。
SASの環境では予測が自動化されているため、予測プロセスを実行する分析担当者がプログラマーである必要はもうない。また、データに最適なモデルの作成もシステムが自動的に行うので、ODECの事業に特化した形で予測精度を高めるのも容易だ。過去2年間、ハミルトン氏がSASを活用するようになったことで、ODECにおける予算の予測精度は誤差1%以内に収まっている。
「当組合が料金を低いまま維持できているのは、予測精度が極めて高いからです」(同氏)。
どのような将来にも対応できる柔軟な予測態勢
ハミルトン氏の部署では、想定される需要や人口増加といった変動要因はもちろんのこと、想定外の変化(例:予想以上に寒い冬)も考慮した上で予測を修正できる態勢が整っている。またODECでは、ソーラーパネルやウィンドファームなどの再生可能エネルギー源に加え、電気自動車が普及しつつある現状を受け、グリッドの信頼性を確保する目的のためにSASを活用する機会も増えている。
さらに、検証済みの可変ストリームを用いてモデルを作成するためのデータマートの開発も進めている。こうした大量データ処理が本格稼動すれば、数日ではなく数時間毎に予測を作成・更新できるようになる。
現在のところ、こうしたデータマートは、月次で実行しているアドホックな(非定型の)気象分析に活用しています。また、組合員団体から電力負荷の状況や特定の変電所に関する情報が欲しいという要望があった場合は、SASを用いて、先方が利用できるフォーマットでデータを提供しています」(同氏)。
さらにODECでは、SASのアナリティクスの活用を短期予測にも広げ、需要のピーク日、特にピーク時間帯とその推定負荷を判断できるようにすることを検討中だ。これが実現すれば、ピーク状況時に負荷を軽減し、送電とコストをより高度にコントロールできるようになる。
「SASを使い始めたときの費用対効果は衝撃的でしたが、今では別の用途や別のニーズ、特に異常気象対策に関してもSASを活用することを目指し、試行錯誤を続けています」(同氏)。これによって効率がさらに向上すれば、ODECはモデル作成の迅速化、情報共有の強化を達成し、向こう数十年間にわたって組合員団体向けの料金を低く抑え続けることが可能になる。