株式会社NTTドコモ
精度を保った500を超える予兆モデルを自動的に運用し続ける分析基盤を完成
予兆モデルを管理するノウハウをSAS Consulting Serviceで補完
株式会社NTTドコモがこの事例で活用した製品 • SAS® Consulting Service • SAS® Enterprise Guide® • SAS® Enterprise Miner™ • SAS® Model Manager • SAS® Data Integration Server • SAS® Grid Manager
これからは、私たちがパートナーのビジネスをより良くするためのコンサルティングサービスを提供する機会も増えてきます。セバスチャンが私たちにしていただけたように、これまで以上にパートナーに寄り添えるように努力していきます 株式会社NTTドコモ デジタルマーケティング推進部 データ活用推進担当 担当課長(取材当時) 川崎 達矢 氏
株式会社NTTドコモ(以下、NTTドコモ)は、移動体通信事業の国内最大手企業。近年では、入会金・年会費無料のポイントプログラム「dポイントクラブ」に力を注いでおり、その顧客層を回線契約者以外にも広げている。
ポイント運営の主体になれば、ユーザーにより良い体験を提供することに加え、ポイントパートナーとの共存共栄も望まれる。以前から同社は、自社サービスのクロスセル/アップセルを可能にする深いパーソナライズに取り組んでおり、20年以上にわたりSASを活用してきた歴史と経験がある。
それに加えて加盟店の提供する数多くのサービスとユーザーを的確にマッチングさせ、ユーザーが必要なものやサービスを、彼らが必要とする時に紹介する展望を描いた。
8割の時間はデータ準備にかけている
デジタルマーケティング推進部 データ活用推進担当 担当課長(取材当時) 川崎 達矢氏は、「それまでは、自社のキャンペーンに合わせて年間40モデルくらい作っていましたが、基本的に使い捨てでした」と話す。デジタルマーケティング推進部 データ活用推進担当 細田 雅也氏も、「人的リソースの制約があり、すべての依頼にこたえることができず、歯がゆい思いがありました。完成までに1~2か月の時間がかかっていたことにも課題意識がありました」と当時を振り返る。
川崎氏は以前から、「モデルの作成と運用は、自動化できるのではないか」と考えていた。モデルを作るにあたって、約8割の時間はデータの準備にかかる。データ準備の工程では、同じ作業をモデルごとに繰り返し実施している部分がある。それらの部分を共通化し、重複作業を自動化することで、複数のモデルを使って分析を回し続けるプロセスに注力できるようになる。
このアイデアを具現すべく、半年後の完成を目途にプロジェクトが立ち上がった。自社で行われるありとあらゆるワン・ツー・ワン施策に利用できる分析基盤の構築だ。デジタルプロモーションに加え、たとえばドコモショップの対面営業プロセスにおける限られた接客時間の中で、顧客ニーズに最適なクロスセル対象サービスをレコメンドする仕組みでの利用を目指した。
しかし、ほどなく大きな壁が立ちはだかっていることが明らかになった。まず、モデルが膨大になること。「サービス内容」、「顧客の嗜好や体験レベル」、「契約や解約などのイベント」といった複数の要素を掛け合わせた数が必要になってくる。最適化しても、400~500に及ぶモデルを回し続けることが必要になりそうだった。最初にモデルを作るだけなら「がんばればできる」かもしれない。しかし、運用し続けるとなると、すべてのモデルについて評価プロセスを同時に走らせ、個々のモデルの分析精度を担保し続ける必要がある。
ITインフラ面の課題も大きい。分析基盤上にデータマートを構築し、7000万人を超えるユーザーに対してモデルを回し続けるとなれば、システムリソースに制約が出てくる。社内に優れたデータサイエンティストやエンジニアを抱えており、データやマーケティングの知見はあったが、「リソースの範囲内で、モデルを最適に管理し、運用する」というノウハウはなかったのだ。
SASのコンサルタントは期待以上に寄り添ってくれた
この部分を補完するために、同社はSAS Consulting Serviceに依頼することにした。プロジェクトに加わったSASアナリティクスコンサルタント ウィカンダー セバスチャンは、「私が参画したのは、すでに3か月目に入っていました。これだけ大規模なプロジェクトを、わずか半年で完成させるという計画に驚きました」と話す。
川崎氏は、「セバスチャンは、すぐにチームに溶け込んで、チームの一員のように動いてくれました実は、そこまで大きな役割は期待していませんでした。技術的な問題に対して、質問をすれば的確に答えてくれれば助かるなというイメージでした(笑)。考えていなかった機能の提案も頂き、本当に感謝しています」と話す。
セバスチャンは、現実的な対応について適切なアドバイスを行った。高精度な分析を実行しようとすればするほど、システムリソースを多く使うことになる。システムリソースにはコストがかかり、予算内で最適な結果を得なければならない。全体のバランスを取りながら運用するにあたって、モデルの精度を担保する方針の立案や、モデルの実行方法など、クリアしなければならないさまざまなポイントを最適化していった。
その結果、期限どおりにシステムは稼働。当初は300モデルからスタートし、現在では約500のモデルを運用し続けている。細田氏は、「現在は、モデルの精度が下がった場合、それを把握して再学習させるところまで、自動化することができています」と話す。契約更新に来た顧客に「ドコモ光」を提案するケースでその成約率が以前の3倍になるなど、数字として目に見える効果も得られた。
今後は、パートナー企業への価値提供にもこの仕組みを使っていく方向だ。データに基づいて、パートナー企業のマーケティング施策を支援する事業への活用だ。すでに、イベントや興業の入場者を増やす施策などに活用されており、その成果がニュースになったこともある。
川崎氏は、「これからは、私たちがパートナーのビジネスをより良くするためのコンサルティングサービスを提供する機会も増えてきます。セバスチャンが私たちにしていただけたように、これまで以上にパートナーに寄り添えるように努力していきます」と話してくれた。
株式会社NTTドコモでのSASの活用
業種
Telecommunications
課題
顧客データを集約し、蓄積したデータを顧客個人軸で高精度に分析することで、パーソナライズをより高度化。顧客ニーズに最適なサービスを提案する分析基盤を構築し、運用する。
利点
- SASを活用し、AIを組み込んだ500を超える予兆モデルを常時運用
- 時間の限られた接客において、ピンポイントな提案で成約率を3倍に
- SAS Consulting Serviceを活用し、上記を実現する
本記事に掲載された導入効果は、各企業によって異なる状況やビジネスモデル、入力データ、業務環境に固有のものです。SASの紹介する顧客体験は、各企業に固有のものであり、業務面や技術面の背景もそれぞれ異なるため、各事例に掲載されたあらゆる証言は、導入の典型例を示すものではありません。導入にともなう金銭的効果、導入結果、ソリューションのパフォーマンスなどの特徴は、個別の顧客のコンフィグレーションや使用条件に左右されるものです。本事例は、すべてのSASの顧客が当該事例と同じ導入効果を得られるとするものではなく、そうした効果を保証するものでもありません。SAS製品および提供サービスの保証内容は、各製品・サービス向けに締結された契約書内の保証条項に記載された内容に限られます。したがって、本事例に掲載された内容は、それらの保証内容をなんら補足するものではありません。事例に掲載された顧客は、各事例をSASとの契約にもとづいて提供しているか、SASのソフトウェアの導入成功にともなう体験を共有しているものです。