Lockheed Martin社がこの事例で活用した製品 • SAS® Platform • SAS® AI Solutions • SAS® Visual AnalyticsとSAS® Visual Statistics(いずれも実行基盤は SAS® Viya® )
Lockheed Martin社、SAS® Platformで航空機の保守整備を革命的に改善
C-130 Herculesは、航空機史上、最も多用途性に優れた機体である。ヒマラヤ地方にある世界で最も標高の高い滑走路での離陸から、大西洋を航行中の航空母艦への着陸まで、この航空機はその圧倒的な多用途性、パフォーマンス、ミッション有効性で広く知られている。
今日では、70もの国々が捜索・救助、平和維持、医療的避難、科学研究、軍事作戦、空中給油、人道援助といった活動をC-130に頼っており、C-130の累計生産台数は2,500以上にのぼる。世界中で運用中のフリートには、レガシーモデルのC-130のほか、現行世代のバリエーションである「C-130J Super Hercules」も含まれる。
C-130は非常に多くの世界的フリートにおいて上記のように不可欠な構成要素であることから、少しの稼働停止時間も顧客のミッション遂行態勢に大きな影響を及ぼす。
「C-130に関して私が最も誇らしく感じているのは救助活動です」と話すのは、Lockheed Martin社のデータ・アナリティクス担当フェロー、マイク・イスビル(Mike Isbill)氏だ。「フィリピンを恐ろしいハリケーンが襲ったとき、救助部隊は1日の間に数十機のC-130を飛ばし、物資の搬入と救助活動に貢献しました。今後も世界中で同様の事例を目にすることでしょう。C-130が食糧を搬入して飢饉を解消したり、被災した人々を現地から救出したりするのです。」
C-130のOEM(相手先ブランド名製造)企業であるLockheed Martin社では、SASを用いて機体の稼働時間の最大化を図っている。具体的には、人工知能(AI)、IoT、高度なアナリティクスを活用して部品の故障時期を予測することで、世界中の重要なミッションのために、より多くの航空機を “空中に維持する” ことに取り組んでいる。
SASとの協働により、我々は事後対応型の保守整備から脱却し、事前対応型の組織へと変革を遂げました。 Mike Isbill Lockheed Martin Fellow of Data Analytics
センサーデータの収集がアナリティクスのブレイクスルーに結実
複雑な機械に関する洞察を追求する取り組みは、例外なくデータから始まる。Lockheed Martin社の場合も、機体全体に設置された600個のセンサーのおかげで、C-130Jは1時間のフライトにつき72,000行のデータを生成する。特に重要なのは、不具合が生じつつある部品の故障コードが、このデータに含まれている点だ。
以前は、こうしたIoTデータは機体から収納施設へとストリーミングされ、異なる複数のシステムに保管されていた。世界中の様々な国で運行されているC-130Jは400機以上に及ぶが、それらに対する中央リポジトリは存在しなかった。その結果、顧客の拠点のエンジニアたちは独自のデータ解釈に基づき自力で機体整備を行わざるを得ない状況に置かれており、それが原因で不要な整備作業を実施してしまうケースや、部品が遠隔地から届くまでに数日の稼働停止時間が生じるケースも少なくなかった。
イスビル氏は子供の頃から問題解決が大好きだったという。テレビゲームのプログラミングから始まった趣味が、アナリティクス分野におけるキャリアへと進展したのだ。現在のイスビル氏は、Lockheed Martin社において、「過剰な稼働停止時間」という問題に対する解決策を顧客に提供する取り組みを進めている。
同氏の最初のブレイクスルーは、C-130J Super Herculesを運行する全ての事業者から、フライトデータの共有開始に関する同意を取り付けたことだった。大量の情報が流入するようになると、データのクレンジングや保管をいかに行うかが課題となった。入ってくるデータのフォーマットは多岐にわたり、当初は毎月のクレンジング作業に3名の要員が必要だったという。
こうした経緯で、強固なアナリティクス・ソリューションを求めるイスビル氏の探求の旅は始まった。その後、PoC(概念実証)の成功を経て、Lockheed Martin社はSAS Platformへの投資を実行。今ではSASのハイパワーなAI機能、ビジネス・インテリジェンス機能、データ管理機能を活用して、データの整形や予知保全モデルの作成を行っている。
「このパートナーシップは驚異的でした」と、イスビル氏は振り返る。「SASを導入したことで、我々はデータのクリーンアップにかかる時間を95%も削減し、実際のアナリティクス作業に多くの時間を投入できるようになりました。当社では、このソリューション・スイートと非常に小規模なデータサイエンティスト・チームだけで、顧客にとっての稼働停止時間およびコストの削減につながる(と我々が確信している)分析結果を素早く生成することができています。」
Lockheed Martin社に関する事実と数字
600個のセンサー
個々のC-130J機に搭載
72,000行
1時間のフライトで生成されるデータ
95%削減
データ・クリーンアップ時間
機械学習によるインテリジェントな診断
顧客からのデータ・ストリーミングの開始を受け、イスビル氏とそのチームはC-130Jのフライトデータをいかに活用するべきかの検討に着手した。目的は、個々の部品のプロファイリングを実施し、故障の発生時期を予測することだった。こうした洞察は、顧客が適切な部品の在庫をプロアクティブ(能動的)に確保し、より多くの救命ミッションのために機体の運行を維持するために役立つ。
SAS Platform上に構築したシステムは、C-130の顧客(=運行事業者)、Lockheed Martin社のエンジニア、部品業者から届くデータを活用して、300種類以上の航空機部品に関する中央リポジトリを形成する。その上でこのシステムは、機械学習とIoTアナリティクスを用いて保守整備の履歴を総合的に学習することで、航空機の保守整備に関するリアルタイムのベストプラクティスを導き出す。
例えば、故障コードが特定部品の交換を指示しているものの、事後にその部品が稼働時間の80%は良好に機能していると判明した場合、システムは当初の診断ミスを学習し、次回からは即時の交換ではなく、より念入りなトラブルシューティングの実施を提案するようになる。また、この提案を顧客が拒絶し、別の行動方針を選択した場合も、システムはその結果を学習する。
Lockheed Martin社ではこれを「インテリジェント診断」と呼び、そこには「顧客が航空機を理解および保守整備する方法」を変革する可能性が秘められていると確信している。
「我々は今、お客様からの関心の高まりを目にしています。保守整備にかかる時間を削減できるからです」と、イスビル氏は説明する。「何をいつ作業すればよいかが明確になります。我々が的確な情報を提供できるので、お客様は全貌を把握するための作業に時間を浪費しなくて済むのです。」
インテリジェント診断の収益源化
Lockheed Martin社にとって特に重要な将来の事業成長領域は、こうしたインテリジェント診断をアドオンサービスとして顧客に提供することだという。
「我々は既にSASで素晴らしい成果を上げていますが」と、イスビル氏は言う。「今現在は、当社のサプライ部門との協働に取り掛かっています。その目的は、既存顧客への補修部品の供給方法だけでなく、新規顧客への補修部品の販売方法も改善し、より迅速な部品流通体制を世界全体にわたって打ち出すことです。」
ある最近のプロジェクトでは、補修部品最適化に関連したインテリジェント診断の応用方法について前途有望な洞察が示された。Lockheed Martin社は最大級のC-130J運行事業者の1つと協働し、3ヶ月にわたり20機の航空機と50種類の部品を追跡した。その上で予知保全モデルを活用したところ、この顧客における稼働停止時間を1,400時間も削減することに成功。今ではこの1,400時間を、ミッション要件を満たすためのフライト時間に充当することが可能となっている。
航空機の保守整備と生産の最適化
この先の展望として、Lockheed Martin社では予測的アナリティクスを他のビジネスラインにも拡大していきたいと考えている。なかでも特に関心を寄せているのは、計画保全の最適化 ── これは航空機の稼働停止時間の最大の要因である ── と、生産コストの削減だという。
「SASとの協働により、我々は事後対応型の保守整備から脱却し、事前対応型の組織へと変革を遂げました」と、イスビル氏は言う。「我々は既に、自社と顧客の双方にとっての問題の萌芽に対する洞察を活用できています。今現在進めているのは、アナリティクスを保守整備担当者の手元に届けることで、全ての当社機フリートの可用性を改善すると同時に、我々が受け取る豊富なデータを用いて予測モデルも改善していく取り組みです。」
C-130が青年のキャリア形成を触発
マイク・イスビル氏によると、C-130に関するお気に入りのエピソードの1つはベトナム戦争にまつわる話だという。1975年の戦争終結時、サイゴンからC-130で飛び立った最後の救援飛行隊の1機に搭乗した人々のなかに、ティム・グエン(Tim Nguyen)という24歳の青年がいた。この航空機は1回のフライトで452名の人々を安全にタイまで運んだ。脱出後、グエン青年は自身の無事に大きな感謝の念を覚え、この救援航空機にすっかり夢中になった。そして、工学の学位を取得し、いつかは自分もC-130に関する仕事をしよう、と決意する。1983年、彼はLockheed Martin社に雇用され、その目標を達成することになる。そして2016年の引退までエンジニアの職務を全うした。
本記事に掲載された導入効果は、各企業によって異なる状況やビジネスモデル、入力データ、業務環境に固有のものです。SASの紹介する顧客体験は、各企業に固有のものであり、業務面や技術面の背景もそれぞれ異なるため、各事例に掲載されたあらゆる証言は、導入の典型例を示すものではありません。導入にともなう金銭的効果、導入結果、ソリューションのパフォーマンスなどの特徴は、個別の顧客のコンフィグレーションや使用条件に左右されるものです。本事例は、すべてのSASの顧客が当該事例と同じ導入効果を得られるとするものではなく、そうした効果を保証するものでもありません。SAS製品および提供サービスの保証内容は、各製品・サービス向けに締結された契約書内の保証条項に記載された内容に限られます。したがって、本事例に掲載された内容は、それらの保証内容をなんら補足するものではありません。事例に掲載された顧客は、各事例をSASとの契約にもとづいて提供しているか、SASのソフトウェアの導入成功にともなう体験を共有しているものです。