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Lenovo

顧客も含めた品質管理の方程式を確立

Lenovo社、アナリティクスの活用でデザイン変更の妥当性を再考し、販売への悪影響と評判の低下を回避

Lenovo Logo

Lenovo社では最も人気が高いPCシリーズのキーボード・レイアウトを変更することを決め、その作業を進めていた。しかし、新しいデザインが完成に近づいた段階で、小規模ながら積極的に活動しているオンライン・コミュニティが見つかり、ゲーマーたちが現行デザインのキーボードを熱烈に支持していることが明らかになった。デザインを変更すると、Lenovo社の顧客層の大きな部分を占めるセグメント、つまりフリーランスの開発者や熱心なゲーマーから大きな反発を受ける可能性があったのだ。

同社のコーポレート・アナリティクス部門では当時、品質把握プロジェクトの一環としてSASを使用していた。同部門がWeb上の情報をかき集め、Lenovo社に言及しているテキストデータを選別して分析した結果、それまで同社が把握していなかったフォーラムが見つかった。そこでは、既存のユーザーが現行のデザイン、特にキーボードについて6ページにも及ぶ力のこもったレビューを投稿しており、約2,000件ものコメントが寄せられていたのだ。カスタマー・インサイト&VOCアナリティクス担当ディレクターのモハメッド・チャーラ(Mohammed Chaara)氏は、「生産前に行う従来方式のデザインレビューでは絶対に見つからない情報でした」と当時を振り返る。

それはまさに、品質問題の早期検出を目指した「Lenovo Early Detection(LED)」システムの構築という同社の取り組みと、チャーラ氏が率いるコーポレート・アナリティクス部門の仕事が正しいことを証明する発見だった。

Lenovo社はPCとタブレットの世界最大級のメーカーだが、無名のブロガーたちが発信するセンチメント(感想)を測定したり、新たに登場したフォーラムを発見したりする取り組みは行っていなかった。そこで、社内および社外のデータを調べ上げ、品質、製品開発、製品イノベーションに役立つ情報を現場に提供したいと考えた同社は、LEDプロジェクトを立ち上げたのだった。チャーラ氏は現在の状況をこう説明してくれた。「私たちが今、最も注力している領域は、サプライチェーンの最適化、クロスセル/アップセルの機会、サービスの価格設定とパッケージ化です。こうした領域で何か改善を行う際は、お客様の声に耳を傾けることを基本としています」。そして、その際に取り扱う「呆れるほど膨大なデータを管理」するためのフレームワークとして、SASが使われている。

LEDプロジェクトの成功は、社内中で大評判となった。当初は15人ほどのユーザーを想定していたが、クチコミを通じて最終的には300人ものユーザーが、顧客センチメント、保証、コールセンターに関するビジュアル分析の結果を見るために、LEDダッシュボードへのログイン登録を行ったのだ。

結果は実に印象的なものだった。

  • 問題の検出にかかる期間を50%以上も短縮
  • 品質基準から外れた不具合による保証対応コストを10~15%削減
  • 一般的な情報に関するコンタクトセンターへのコール数を30%~50%低減

「この分析システムのおかげで、お客様の観点から品質を定義できるようになりました」

モハメッド・チャーラ(Mohammed Chaara)氏
カスタマー・インサイト&VOCアナリティクス担当ディレクター

全体像の把握

顧客センチメントを測定して品質を理解するために使っていた従来の手法には本質的な弱点があり、結果が得られるまでのタイムラグも無視できないレベルだった。

  • 顧客調査では、調査票に積極的に記入してくれる顧客からの情報しか収集できない。
  • 保証に関する情報は、多くの場合、新製品の出荷開始から数ヶ月が経過しないと入ってこない。
  • 顧客の不満や製品の問題点を引き起こしている多種多少な原因を読み解くのが難しい。

さらに、Lenovo社では他社製ソフトウェアも組み合わせた形で自社製品を販売しており、顧客が使用する各種のアクセサリー類(ドッキング・ステーションやマウスなど)もLenovo製品と他社製品が混在している。問題をさらに複雑にしているのは、同社が165ヶ国で事業を展開し、30種類以上の言語をサポートしていることだ。そのため、顧客からのコメントを手作業で評価する手法では一貫性に問題が生じ、時間もかかりすぎ、ソーシャルメディアから収集される大量のフィードバックには到底対応できない。センチメント分析では、ネイティブの発話に見られるニュアンスの違いも区別できる必要もあった(例えば、オーストラリア英語と米国英語では表現の仕方が異なる)。

LEDシステムの2番目の大きな成功例は、ドッキング・ステーションの不具合を分析主導で発見したことだった。テクニカル・サポートには顧客からの電話で、画面表示がおかしい、マシンが突然シャットダウンしてしまう、あるいはバッテリーに充電できない、といった問題が寄せられていた。同様の指摘は、ソーシャルメディアの投稿にもたびたび現れており、その中には、全員ではないにせよ、ドッキングに言及している顧客もいた。結局、Lenovo社がSASソリューションを用いて、コールセンターの記録とソーシャルメディアの投稿を組み合わせて分析したところ、この問題と「ドッキング」という用語の関連性が初めて明らかになり、品質担当エンジニアが根本原因を特定してソフトウェア・アップデートを発行するに至った。

「(この件では)数週間でフィードバックを集めることができました。以前は現場からレポートが上がってくるのを待つ必要があったため、60日から90日はかかっていました」(同氏)。今ではそれが15日から30日しかかからないという。問題検出にかかる期間が短縮されたことで、この種の問題に関する保証対応コストも10~15%削減された。保証請求に対応する同社のコストは年間約12億ドルであるため、これは相当な節約になる。

コールセンターの情報も重要だが、決定的な役割を演じたのはソーシャルメディアだった。「TwitterやFacebookでは、ユーザーが今まさに経験したばかりのことを報告していました。『マシンをドックに接続したら、Xという現象が発生した』といった内容です。生の情報であり、何のバイアスもかかっておらず、非常に説得力があります」(同氏)

購入後にPCを使い始めた顧客が語っている内容を分析したときは、思いもよらない洞察が得られたという。製品や保証内容、その他の事項を説明している文書が、どれほど分かりにくいかを改めて自覚することができた。「コールセンターで電話を1本受けるのにもコストがかかっています。文書を改良したところ、一般的な情報に関するコール数は30%~50%も減りました」(同氏)

現場にとどまらない広範囲で高評価を獲得

LEDプロジェクトの大成功を受け、チャーラ氏はCEOの前でデモンストレーションも行った。デモの目標は、経営幹部向けのダッシュボード・ビューの開発に賛同を得ることだった。「上級経営幹部の思考をそのまま視覚化できるレベルの素晴らしさです。彼らもそのパワーを信じています」(同氏)。さらに同氏の部門は、今回の取り組みの成功度を正式な業務として測定した上で、その手法をLenovo製品購入時のカスタマー・エクスペリエンスといった問題の測定にも広げていく予定だという。

「アナリティクスの活用により、品質という概念をより包括的に理解できるようになりました。単にPCが正常に動作すればよいのではありません。ユーザーが製品の使い方を理解し、弊社から迅速かつ正確なサポートを受けられ、Lenovo製品と他社製の周辺機器を快適に利用できるようにすることであり、また、製品デザイナーの判断だけでデザインを見直すのではなく、既存の製品に関するお客様の意見をきちんと理解することです。SASのソリューションのおかげで、お客様の観点から品質を定義できるようになりました」(同氏)

高度なアナリティクスの概要と重要性を学ぶ

 
 
 

課題の解決を支えているソリューション

ビジネスユーザーは、製品に関する社内のデータ、コールセンターで収集したテキストデータ、オンラインに存在するデータをすべて組み合わせて分析することで、品質問題を早期に発見し、顧客の要望を徹底的に理解することができる。その結果、以下の導入効果が得られた。

  • 製品の問題の検出にかかる期間が、従来の保証分析手法と比べて3分の1に短縮
  • それ以前は検出が難しかった問題も検出できるようになったことで、保証対応コストが10~15%低減
  • ソーシャルメディアから得られた洞察にもとづき付属文書を改良したことで、コールセンターへの問い合わせ数が30~50%減少
  • キーボードのデザイン変更による販売への大打撃を未然に回避

詳細情報

SAS® Visual Analyticsは、アナリティクス、ビジュアル探索、データ発見、レポーティングなどの機能を完備した堅牢なビジネス・インテリジェンス・プラットフォームを、Lenovo社の300名以上のユーザーに提供。このソリューションにより、ユーザーは以下のことが行える。

  • 顧客センチメント、保証、コールセンターに関する分析結果のビジュアル表現にアクセス
  • 分析スキルのレベルに関係なく、複雑なデータの意味を理解
  • 対話操作型のレポートを速やかに作成。また、Webやモバイルデバイスを通じてレポートを容易に共有

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