人命最優先の警察活動

英国の警察、データをクリーンアップして新たなインテリジェンスを獲得

英国のグロスターシャー警察(Gloucestershire Constabulary)では、データ品質を確保し、新たなレベルのビジネス・インテリジェンスとレポーティングを達成するためにSASを活用しており、インテリジェンス主導型の警察活動を強化するべく正確性と業務効率の改善を推進している。

英国の43の警察署は各自のデータリソースを管理する責任を負っているが、これはモバイル化が進んだデジタルワールドでは容易なタスクではない。データ量が増え続けていることに加え、情報に関しては犯罪者が真実を隠蔽しうるからだ。グロスターシャー警察は1,300名の警官、800名の文官、170名の特別警察官を雇用しており、管轄区域の住民数は560,000人を数える。業務の中核は地域社会の警察活動を効果的に行うことであり、その成否は、高品質なデータと最新のインテリジェンスを確保できるかどうかにかかっている。実際、そのような洞察を提供する “信頼に足るシステム” があれば、リソースの最大活用、パフォーマンスの改善、内務省への正確な報告、そして究極的には他の警察署との情報共有を実現できるようになる。

「グロスターシャー警察は、データ品質問題を認識した最初の警察署の一つでした」と、IS開発マネージャーであるレグ・バーナード(Reg Barnard)氏は言う。「それ以来、これは遥かに大きな国家的課題となってきており、特に2011年運用開始の警察全国データベース(Police National Database: PND)に関してはその傾向が顕著です。私が思うに、我々は “国家目標を支えるためにデータ品質に対処する取り組み” の最前線に立ち続けてきました」。そうした取り組みには、警察の情報管理力・情報共有力を改善するための施策である「IMPACT」プログラムや、国家標準である「MoPI(Management of Police Information、直訳=警察情報の管理)」が含まれる。どちらもBichard Inquiryレポートの内容に追随する形で、「より高品質なデータ、信頼に足るインテリジェンス、他の警察署や機関との情報共有」に関する需要の高まりをさらに推進することが狙いだ。SASは今、グロスターシャー警察における「データの品質と正確性を確保し、そこから得られた洞察を用いてマネジメント/ガバナンス/パフォーマンスを管轄する部署に的確な情報を提供する取り組み」を支援している。

我々が必要としていたのは、データ品質への対処だけでなくビジネス・インテリジェンスも実現してくれるソリューションでした。優れた警察活動は質の高いインテリジェンスにかかっています。犯罪と犯罪者の間のつながりを解明することが重要なのです。

レグ・バーナード(Reg Barnard)氏
IS開発マネージャー

データ整備におけるデータ品質

2002年、グロスターシャー警察は、効果的かつ効率的なサービスを促進するための施策である「Vision 5」を開始した。これは、情報自由法(Freedom of Information Act)の諸要件と共に、データ品質の改善に対する投資の重要な促進剤となった。「ほとんどの組織がデータ品質の問題に直面しますが、警察ではスペルミスやタイプミスのような一般的な問題の影響度が拡大する可能性があります。なぜなら、我々が取り扱う人々の多くは不正直だからです」と、バーナード氏は言う。犯罪者はあらゆる種類の偽情報を提示するが、それらを検証することは容易ではなく、さまざまな目的のために導入された互換性のないレガシーシステム群の存在がその状況をさらに複雑にする。SASが同署に推奨したのは、SAS® Enterprise Data Integration Serverを導入することだった。バーナード氏は次のように説明する。「我々が必要としていたのは、データ品質への対処だけでなくビジネス・インテリジェンスの基盤整備も実現してくれるソリューションでした。優れた警察活動は質の高いインテリジェンスにかかっています。犯罪と犯罪者の間のつながりを解明することが重要なのです。」

元刑事で現在は同署のデータベース運用管理者を務めているニック・チャーチル(Nick Churchill)氏は、SASを用いて3つのレガシーシステムを統合した。具体的には、犯罪と拘置をカバーする中核システムの「Unity」、駐車違反と罰則金違反のための「VPFPO」、被害者と加害者の詳細に関する「家庭内暴力データベース」の3つだ。「SASには面倒をおかけしました。3つのシステムすべてが互換性のないソフトウェア(Oracle、Ingres、SQL)を使っていましたから」と、チャーチル氏は振り返る。ソースシステム群からのデータはSASのデータ品質機能にかけられ、そこでプロファイリング、クレンジング、標準化が行われる。ユーザーは氏名や住所といった照合用フィールドに関する感度を調整できるため、最初に最大級の問題点を識別し、その後は感度を下げながら作業を進めることが可能だ。これは、明白な表記ゆれを含むデータレコードだけでなく、明白度は低いが同一のものである可能性がある文字列を含むデータレコードも素早く選び出せる、ということを意味する。「このようなミスを他のソフトウェアで探し出そうとすると、かなり苦労します。手作業の場合は言うまでもありません」(チャーチル氏)。疑わしいレコードは、監査と訂正のためにそのオーナーに回付される。「SASは、近似一致(したデータレコード)をクラスタリングする機能が非常に強力で、データの訂正や更新に役立ちます。その結果、大量の時間とリソースが節約されます。そして、どれほどパワフルかを考えれば、本当に使いやすいのです。専門家のスキルは必要ありません。上級管理職者に好印象と価値の両方をもたらすレポートを、あっという間に生成することができます」(チャーチル氏)。

バーナード氏はこう説明する。「データの質が低かった頃は、既知の物事を探し出そうとする作業で時間を浪費していました。SASは、望み通りの業務効率を達成するための真っすぐな軌道に我々を載せてくれました。これは実際的な言い方をすると、犯罪者を逮捕しようとするときに確実に警察官が正しい住所に到着するようにする、ということです。」

人命最優先を推進

バーナード氏は次のように続ける。「我々が今直面している重要な課題には、Citizen Focus(市民フォーカス)アプローチの一環として進めているPeople First(人命最優先)イニシアチブの諸要件が含まれます」。高品質なデータと、アナリティクスによって改善されたインテリジェンスは、同署がより効果的に業務を遂行し、そうした諸要件に対応できることを意味する。それと同時に、同署では今、3つの部門(divisions)から6つの警察地区(policing areas)への体制移行という大きな変化が進行している。「拘留統計の観点でのパフォーマンスは、実効性測定の観点では、もはや最重要事項ではありません。我々は今、地域社会の警察活動とエンゲージメントにさらに注力するための取り組みを進めています」(バーナード氏)。このような現在進行中の政策変更は、必要不可欠な情報システム群にも反映される必要がある。

検知率を改善する

「ビジネス・インテリジェンスに関しては、我々は最新バージョンのSASに移行済みであり、今現在はSASを全組織規模の意思決定支援システムに進化させる取り組みを進めています」と、バーナード氏は言う。「我々は職員が優れた意思決定を行えるように貴重な洞察を提供したいと考えているほか、我々のパフォーマンス状況を知りたいとも考えています。これには、地域社会が我々をどう見ているか、また、市民がどれほどの信頼を感じているかを理解することも含まれます」。SAS® Professional Servicesチームは、最新のSASアップグレードに関して同署と協働した。バーナード氏は次のように続ける。「SASはPND(警察全国データベース)を支えるデータを抽出するために使われています。また、MoPIにおけるデータ品質の改善に役立っているほか、我々のRRD(レビュー、保持、削除)ポリシーも支えています。インテリジェンスの側面に関しては、SASは当署で進行中の組織再編を支えるために利用されているほか、我々が判断される評価指標を測定するため、さらには、先ほど触れた "上級幹部だけでなく全職員をサポートするための全組織規模の意思決定支援システム" を作成するためにも利用されています」。そして同氏は次のように付け加える。「また、今では内務省への統計報告を、直接SASを通じて提供しているほか、一つのシステムだけを利用することで得られる効率向上を実現し、データの一元性・一貫性の確保も達成しています。」

最近の調査結果は、グロスターシャー警察のアプローチの正しさを裏付けている。英国の警察検査当局である「Her Majesty’s Inspectorate of Constabulary」が2010年に43の警察署のすべてを評価した際、グロスターシャー警察が直近の2年間で犯罪全般をどれほど削減したか、また、特に暴力と強盗の削減に関しては著しい成功を収め、卓越した検知率を達成したことが浮き彫りになった。また、この評価では、市民の信頼感が改善傾向にあることも示唆されていたが、実際、英国犯罪調査(British Crime Survey: BCS)の結果によると、“反社会的行為や犯罪に対処する警察や議会” を信頼しているグロスターシャー州民の割合が45.8%から51.5%へと増加したことが判明している。

バーナード氏は次のように結論付ける。「今ではデータの価値が遥かに広い範囲で認識されつつあり、特にIMPACTのような国家的イニシアチブに関しては顕著です。また、すべての公的組織が ”資金を節約するべき” という財政圧力に晒されています。我々に可能なのは、”サービスの提供を縮小すること”、あるいは “保有する限られたリソースで同等か、願わくばそれ以上のサービスを提供すること”、どちらか一方です。後者を実現できる唯一の方法は効率を改善することです。それを達成する上で重要な方法は、パフォーマンスを測定・改善するために情報活用力を向上させることであり、SASはそれを実現する上で重要な役割を果たすのです。」

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課題

  • 法執行の改善を下支えするために、データ品質を改善し、不正確性を除去し、新たなレベルの洞察を提供する必要がある。
  • パフォーマンス情報とインテリジェンスを提供し続けながら、新しい要件や優先度にも適応していく必要がある。

ソリューション

導入効果

データの一貫性と正確性が向上したことで、「よりインテリジェンス主導型で、よりターゲット化された警察活動の推進」、「マネジメント全般やパフォーマンス改善の下支え」、「新たな洞察の提供」、さらには「IMPACTプログラム、Management of Police Information (MoPI)、Police National Database (PND) などの国家的イニシアチブの下支え」が可能となっている。

本記事に掲載された導入効果は、各企業によって異なる状況やビジネスモデル、入力データ、業務環境に固有のものです。SASの紹介する顧客体験は、各企業に固有のものであり、業務面や技術面の背景もそれぞれ異なるため、各事例に掲載されたあらゆる証言は、導入の典型例を示すものではありません。導入にともなう金銭的効果、導入結果、ソリューションのパフォーマンスなどの特徴は、個別の顧客のコンフィグレーションや使用条件に左右されるものです。本事例は、すべてのSASの顧客が当該事例と同じ導入効果を得られるとするものではなく、そうした効果を保証するものでもありません。SAS製品および提供サービスの保証内容は、各製品・サービス向けに締結された契約書内の保証条項に記載された内容に限られます。したがって、本事例に掲載された内容は、それらの保証内容をなんら補足するものではありません。事例に掲載された顧客は、各事例をSASとの契約にもとづいて提供しているか、SASのソフトウェアの導入成功にともなう体験を共有しているものです。