Georgia Pacificがこの事例で活用した製品 • SAS® Analytics for IoT • SAS® Model Manager • SAS® Event Stream Processing for Edge Computing(実行基盤はSAS® Viya® on Amazon Web Services)
Georgia-Pacific社、 SAS® Viya® on Amazon Web Servicesを活用して、設備効率の改善、稼働停止時間の削減、出荷ロジスティクスの最適化、顧客離れの予測を実現
COVID-19(新型コロナウイルス感染症)のパンデミックの初期の頃、人々がトイレットペーパーなどの消費財を買い溜めし始めたとき、製造各社は唯一無二の課題の集中砲火に直面した。一部の製造企業では、目に見えない謎のウイルスから従業員を守る方法に取り組むこと以上に、自社を取り巻くサプライチェーンの一部が崩壊したなかで需要の急増にどのように対応するべきか、その方法を捻り出す必要があった。
ティッシュ、パルプ、包装材、建築材、関連化学製品の世界屈指のメーカーであるGeorgia-Pacific社は、自社がこうしたサプライチェーン崩壊の中心にいることに気付いた。2020年4月、米国の食料品店の73%が品切れを報告するなか、同社はトイレットペーパーや他の多くの自社製品の需要が、このパンデミックの真っ只中に急増する様子を目の当たりにした。
製造企業が需要の急増に対応するために新しい工場を一夜で建設するのは不可能であるため、約140の製造施設を擁するこのアトランタ拠点の企業が頼ったのは、その効果を確認済みの最適化メカニズム、すなわちアナリティクスだった。
「我々は高度なアナリティクスを活用して、各施設の生産性向上を促進しました」と、Georgia-Pacific社のITデジタル・トランスフォーメーション担当バイスプレジデントであるスティーブン・バカラル(Steven Bakalar)氏は言う。「パンデミック期間中、我々はアナリティクスを駆使して総合施設効率を10%改善しましたが、そのおかげで、より多くの製品を店舗に届けることができました。」
Georgia-Pacific社にとって、生産性の向上は同社における最適化ストーリーの一部に過ぎない。パンデミック期間中に紙製品と清掃用品の家庭需要が高まるなか、人々の出足が急減したホテルや企業では、これらの製品の需要が落ち込んだ。同社は再びアナリティクスを活用して、出荷ロジスティクスの最適化を図った。
確かに、Georgia-Pacific社のアナリティクス能力は、このパンデミック期間中に不可欠だった。しかし、この製造企業は世界がCOVID-19の出現を耳にする前の頃から、データおよびアナリティクスを活用した事業のデジタル・トランスフォーメーションに関するエキスパートになっていた。それこそが同社のアナリティクス・ストーリーである。
これらのツールを活用している当社の施設では、計画外の稼働停止が30%も減りました。 Steven Bakalar Vice President of IT Digital Transformation Georgia-Pacific
各種プロセスの最適化
Georgia-Pacifics社ではSASの高度なアナリティクスと人工知能(AI)ソリューションを活用しており、実行基盤はいずれもSAS Viya on Amazon Web Services (AWS) だ。
ロシャン・シャー(Roshan Shah)氏はGeorgia-Pacific社のコラボレーションおよびサポートセンター運営担当バイスプレジデントとして、製造アナリティクスを監督している。彼とそのチーム(70名以上の従業員で構成)は製造データを精査して効率性を追求しているが、その理由は、小さな改善点でも数百万ドルの節約につながる可能性があるからだ。
シャー氏によると、Georgia-Pacific社のデータ量は過去1年で5倍に増えたという。「毎日、約1テラバイトのデータを生成しています。そのすべてが機械学習モデルに入力され、どうすればオペレーションを改善できるか教えてくれるのです。」
こうした分析の主要な出力の一つはプロセスの最適化だ。合板から、ダンボール箱、紙ナプキンに至るまでの多様な製品について最新のビジネスニーズに基づき最適な生産設定を算出するために、シャー氏とそのチームは15,000以上の機械学習モデルを実行している。
「SASの高度なアナリティクスのおかげで、収益性の最大化を図るための “スピードと品質の最適なバランス” を特定できています」と、シャー氏は言う。「我々は常に、アナリティクスで実現できることの限界を押し広げようとしています。」
製造企業の場合、プロセスの最適化はそこで止まるわけではない。高度な複合施設では、さらに面倒な事態が生じる可能性もある。例えば、10ステップの製造プロセスの第4ステップが、濡れた材料のせいで停止したとしよう。すると、機械学習モデルは、すべての製品が品質低下したり廃棄処分になったりする事態を回避するために、“次善” の生産プロセスを再計算する。
施設内の他の場所では生産ラインにカメラが設置され、従業員が問題の有無を監視できるようになっている。SASとの協働により、Georgia-Pacific社は最近、これらのカメラにコンピューター・ビジョン(AIの一形態)を適用し始めた。このテクノロジーは自動的に問題を検知し、是正措置の実施を従業員に促すことができる。
SASの高度なアナリティクスのおかげで、収益性の最大化を図るための “スピードと品質の最適なバランス” を特定できています。我々は常に、アナリティクスで実現できることの限界を押し広げようとしています。 Roshan Shah Vice President of Collaboration and Support Center Operations Georgia-Pacific
稼働停止の防止
パンデミック期間中かどうかを問わず、稼働停止は製造企業にとって悩みの種だが、Georgia-Pacific社ではSASのおかげで、稼働停止を削減するソリューションも運用できている。
シャー氏とそのチームは、85,000個の振動センサーからのリアルタイム・データを用いて予測分析を実行し、“部品の故障や電気的な問題が起きる可能性の増大” が検知された場合は早期に介入することができる。この情報を設備資産パフォーマンスの過去データと組み合わせることで、彼らは機械オペレーターに対し、その設備の寿命を最適化するために何を変えるべきかの情報を提供できる。
SASプラットフォームの自動化機能は稼働停止の削減にも役立っている。同社では、ベアリング、モーター、バルブなどが故障しそうな場合は自動的にアラートが届くため、計画的な保守整備イベントにそれらの修繕作業を組み込むことができる。コントロールされた環境で機械を修繕できるため、技術者の作業の安全性と効率性も向上することになる。
「これらのツールを使い始める前は、当社の技術者たちは作業時間の大部分を、故障した設備や故障しそうな設備を探すことに費やしていました。今では、問題点を探すことにではなく、それらを解決することに時間を費やしています。これは彼らの働き方における劇的な変化です」(バカラル氏)。
この製造企業が達成した効率向上は印象的だ。「これらのツールを活用している当社の施設では、計画外の稼働停止が30%も減りました」(バカラル氏)。
また、現在の熟練エンジニアの知見を活かして分析モデルを構築することは、将来の新しい従業員との知識共有のために役立つ。「SASがあれば、従業員がキャリアを通じて獲得する知識を本質的に体系化し、それを使って新しい従業員を短期間で即戦力化することができます」(バカラル氏)。
SASは従業員たちが容易に独自のモデリングを行えるようにしてくれるため、当社ではそれが数百万ドルの価値に転換されるのです。 Tim Berryman Head of Decision Analytics Georgia-Pacific
期日通りに全数を納品
データドリブンな(データ駆動型の)組織として、Georgia-Pacific社は製造業務だけでなく幅広いユースケースにアナリティクスを適用している。商業面では、価格設定のレコメンデーション、特定品目の最適な出荷曜日の判断、顧客離れの予測にアナリティクスを活用している。
意思決定アナリティクス担当バイスプレジデントのティム・ベリーマン(Tim Berryman)氏を特に興奮させている領域の一つは、 IoT(モノのインターネットだ。Georgia-Pacific社の多くの製造施設は遠隔地にあり、それらの場所では高速接続の信頼性や費用対効果が十分でないことも多い。そのため、同社ではエッジ・コンピューティング ── ネットワークの「エッジ」(IoTデータの生成/収集が行われる場所)またはその近くで計算処理を実行する手法 ── のためのSASソリューションを活用することで、意思決定のスピードを高めている。
IoTは、顧客にとっての価値を生み出す役割も果たす。例えばスマート・ディスペンサーにIoTセンサーを組み込むと、Georgia-Pacific社は石鹸やペーパータオルの在庫切れを事前に予測できるようになり、その結果、カスタマー・エクスペリエンスが改善されるほか、在庫切れ確認のためにトイレを調べる人件費も削減される。
OTIF(On-Time and In-full、期日通りの全数)納品は、同社の意思決定アナリティクス担当グループにとっての、もう一つの主要な重点領域だ。世界最大級の小売企業のいくつかに消費材を供給することは非常に大きな商機をもたらすが、納品の遅延や数量不足に対するペナルティも厳しい。
しかしこの能力に関しても、Georgia-Pacific社ではアナリティクスが推進力となっている。ベリーマン氏のチームはOTIF納品を確保するべく、SASを活用して、注文の納品が遅れそうかどうかを検知している。こうした検知が可能になると、分析担当者は、解決策を素早く特定するためのアルゴリズムを開発し、そこから得られた洞察を重要な関係者にフィードバックするためのフローを自動化することが可能となり、その結果、同社は契約通りの納品を達成できるようになる。
「これらのツールのおかげで、サプライチェーンの問題を早期に察知し、期日通りの全数納品を確保するための最良の是正措置を算出することができています」と、ベリーマン氏は言う。
Georgia Pacific社に関する事実と数字
30,000以上
全世界の従業員数
140
製造施設数
ジョージア州アトランタ
本部所在地
最前線の従業員のアナリティクス活用力を高め、数百万ドルの節約を達成
取り組みやすさも、Georgia-Pacific社がSAS Viyaを選んだ主要な理由の一つだ。これは「データサイエンティストたちが複数のプログラミング言語でコーティングできる」という点にも現れているが、それだけでなく、「必ずしもアナリティクスのエキスパートでない人々も同じように、このパワフルなテクノロジーのメリットを享受できる」ということも意味する。
無数のアナリティクス・プロジェクトと有限のリソースを抱えているGeorgia-Pacific社では、シチズン・データサイエンティストたち ── 分析モデルの作成は行うが主要な職務はアナリティクス以外の分野である従業員 ── のアナリティクス活用力を高めることの意義を強く信じている。Georgia-Pacific社には、深い専門分野知識はあるがアナリティクスはほとんど未経験という従業員が大勢いる。シンプルなユーザー・インターフェイスと自動化されたAIを搭載しているViyaなら、適切なトレーニングさえ受ければ、好奇心を持つ誰もが、より迅速かつ的確な意思決定を行えるようになる。
ベリーマン氏は言う。「Viyaプラットフォームなら、従業員に機械学習の使い方をトレーニングするのも簡単です。彼らは短期間で、数十億件のレコードを噛み砕けるようになり、より大きな価値を生む “ビジネス上の意思決定” を開始することができます。」
バカラル氏はこう付け加える。「当社はAWSとも戦略的パートナーシップを結んでおり、SASとAWSの組み合わせは、アナリティクス機能を組織全体のユーザーの手元に届けるために必要な柔軟性と拡張性をもたらしてくれます。」
「以前なら、これらのプロジェクトは大規模なデータサイエンスの取り組みが必要になるか、そうでなければ外部パートナーに委託していたでしょう」と、ベリーマン氏は言う。「SASは従業員たちが容易に独自のモデリングを行えるようにしてくれるため、当社ではそれが数百万ドルの価値に転換されるのです。」
SAS Education部門と提携することで、Georgia-Pacific社はこれまでに150名以上のシチズン・データサイエンティストをトレーニングしてきており、その人数は同社がアナリティクスをオペレーションに組み込み続けるなかで増えていくと期待されている。バカラル氏の見解では、この人数の増加は会社にも消費者にもメリットをもたらすという。
バカラル氏は次のように結論付けた。「当社にとって、生産性の向上は膨大な価値創出につながります。そして消費者にとっては、それが乾燥窯を通過する材木か、生産ラインから出てくるペーパータオルかを問わず、製造品質が向上し、供給量が増えることになります。極言すると、当社はSASのおかげで、より優れた製品をつくり、より迅速に市場に届けることができています。」
写真提供: Georgia-Pacific社
本記事に掲載された導入効果は、各企業によって異なる状況やビジネスモデル、入力データ、業務環境に固有のものです。SASの紹介する顧客体験は、各企業に固有のものであり、業務面や技術面の背景もそれぞれ異なるため、各事例に掲載されたあらゆる証言は、導入の典型例を示すものではありません。導入にともなう金銭的効果、導入結果、ソリューションのパフォーマンスなどの特徴は、個別の顧客のコンフィグレーションや使用条件に左右されるものです。本事例は、すべてのSASの顧客が当該事例と同じ導入効果を得られるとするものではなく、そうした効果を保証するものでもありません。SAS製品および提供サービスの保証内容は、各製品・サービス向けに締結された契約書内の保証条項に記載された内容に限られます。したがって、本事例に掲載された内容は、それらの保証内容をなんら補足するものではありません。事例に掲載された顧客は、各事例をSASとの契約にもとづいて提供しているか、SASのソフトウェアの導入成功にともなう体験を共有しているものです。