Federal Public Service Financeがこの事例で活用した製品 • SAS® Visual AnalyticsとSAS® Visual Statistics (いずれも実行基盤はSAS® Viya®)
ベルギーの財務当局、SAS® Viya® を活用して税制改革の影響に対する理解を向上
不公平な税制ほど確実に国民の抗議を巻き起こすものはない。しかし、税法の小さな変更でさえ、膨大かつ多様な人口に及ぶその影響を予測することは、やっかいな取り組みになりかねない。ベルギーの個人所得税の場合は特にこれが当てはまる。計算が非常に複雑だからだ。
平均的なベルギー人は、個人所得税の申告を完了させるために、まずフォーム内の10~20個のフィールドを記入し、その後、最終的な税金額を計算するための2または3ページの書類を受け取る。技術的な観点から言うと、税申告は3,000の異なる申告コードで構成され、その計算処理には65,000行のビジネスロジックが含まれている。さらにそこに、納税申告者数の700万を掛け算することになる。
ベルギーの財務当局は、ブリュッセルにあるFederal Public Service Finance(FPS Finance)という組織だが、その研究部門で租税政策ユニットの責任者を務めているアドリアン・ルイテン(Adriaan Luyten)氏の話によると、将来の税制改革の潜在的影響をより的確に把握することは、公共政策立案への貴重な貢献になるという。彼と彼のチームは、法規を制定する前にその “勝者” と “敗者” をプロファイリングする業務を担当してきた。
極めて正確な結果や極めて希少な税制の分析が必要なときは常に、Aurora(SAS Viyaベースのシステム)を使います。我々の推定が優れているほど、より的確な情報が政策立案者に届きますから、その結果も向上することになります。 Adriaan Luyten Head of the Tax Policy Unit Federal Public Service Finance
デジタルツイン・テクノロジーのメリット
「個人所得税の計算は、運用面では長年にわたり問題なく実行されてきました」と、ルイテン氏は言う。伝統的に分析は母集団からのサンプリングに基づいていた。なぜなら、これほど大規模なデータセットを分析するのは難しく、時間もかかるからだ。しかし、サンプリングの使用は、分析結果にバイアスが含まれる可能性が高いことを意味する。「ですから、その時点で、現実の部分的な説明しか手にしていないのです」(同氏)。
将来の税制改革がもたらす影響の真の姿をとらえるためには、FPS Financeのデータサイエンティストたちには、“母集団を構成する個々の小さなセグメントにズームインできる精密さと、700万件の申告のすべてを素早く分析できるパワフルさを兼ね備えたアナリティクス・ツール” が必要だった。
同当局の新しいツールであるAuroraは、そうした柔軟性を提供する。Auroraは、ベルギーの所得税を処理する計算機のデジタルツインであり、そこには “ベルギーの個人所得税データ、複雑な計算式、大量のビジネスルール” のコピーが含まれている。SAS Viyaをベースに構築されているAuroraは、シミュレーションの適用範囲に関係なく、迅速に正確な結果を提供する。
Auroraの導入前、政策立案者たちが頼っていたのは、納税者データの標本(サンプル)に基づき簡略化された計算モデルの出力だった。しかし、データサイエンティストたちが母集団のマイクロセクション(微小な部分集合)に対する税制改革の影響を評価しなければならない場合、標本は “彼らが研究したいと思っている特定の部分集合” を正確には代表しない。そのため、彼らは母集団全体を調べる必要がある。
ルイテン氏は言う。「極めて正確な結果や極めて希少な税制の分析が必要なときは常に、Auroraを使います。我々の推定が優れているほど、より的確な情報が政策立案者に届きますから、その結果も向上することになります。」
FPS Financeに関する事実と数字
1,150万
ベルギーの人口
700万
個人所得税申告書の件数
65,000
申告書の計算に使われるビジネスルールの数
動的なビジュアル・レポート
データサイエンティストが的確な情報を掌握することは重要だが、その詳細を政策立案者が理解できることも極めて重要だ。「私はSAS Viyaのプレゼンテーション機能も気に入っています」と、ルイテンは言う。「SAS Viyaのおかげで、私のチームは動的なビジュアル・レポートを作成して、適切な情報を適切な対象者層に届けることができます。ミーティング中でも、特定の納税者グループにズームインして、さらなる詳細を確認することが可能です。」
ビジュアライゼーション(視覚化)機能とプレゼンテーション機能は、このような複雑な分析の結果をレポート利用者が理解する上で重要だ。
「データから数多くの結果が得られますが、それを視覚的に提示できる必要があります」と、同氏は言う。「また、影響を受ける納税者の地域、年齢、タイプなどのデータに関する疑問を解決できるようにするには、ドリルダウン操作を行える必要もあります。タブレットやスマートフォンのようなモダンなデジタルデバイス上で適切なグラフ ── 視覚的に訴求するグラフ ── を組み合わせることにより、データは、情報利用者にとって極めて価値の高いものとなるのです。」
国家と国民のためになる、より的確な意思決定を実現
FPS Financeのデータサイエンティストたちは、正確性が大きな違いを生み出す分野においてベルギー政府が高精度な予測を作成できるよう支援するために、アナリティクスを活用している。その結果、同国、ひいてはその国民にメリットをもたらすような、より的確な意思決定が実現している。
FPS Financeでは、Auroraの影響評価が正しかったかどうかを遡ってチェックすることもできるという。どれくらい正確なのだろう? ルイテン氏による回答は次の通りだ。「総額が約670億ユーロのところ、誤差は67億ユーロでした。しかも、これには “丸めマージン” の影響も含まれています。」
この事例は、AI Heroes ページとそれに付随するFPS Finance 事例ビデオ群に基づいて執筆されました。
本記事に掲載された導入効果は、各企業によって異なる状況やビジネスモデル、入力データ、業務環境に固有のものです。SASの紹介する顧客体験は、各企業に固有のものであり、業務面や技術面の背景もそれぞれ異なるため、各事例に掲載されたあらゆる証言は、導入の典型例を示すものではありません。導入にともなう金銭的効果、導入結果、ソリューションのパフォーマンスなどの特徴は、個別の顧客のコンフィグレーションや使用条件に左右されるものです。本事例は、すべてのSASの顧客が当該事例と同じ導入効果を得られるとするものではなく、そうした効果を保証するものでもありません。SAS製品および提供サービスの保証内容は、各製品・サービス向けに締結された契約書内の保証条項に記載された内容に限られます。したがって、本事例に掲載された内容は、それらの保証内容をなんら補足するものではありません。事例に掲載された顧客は、各事例をSASとの契約にもとづいて提供しているか、SASのソフトウェアの導入成功にともなう体験を共有しているものです。