データ収集とモデリングの改善により、予測医学の取り組みを加速
アナリティクスとAIは、予測分析の正確性向上を通じて、臨床開発の発展を促進しています。
革新的なデータ収集とデータ分析により、医薬品開発の迅速性・実効性の向上を実現
Dompé farmaceuticiがこの事例で活用した製品 • SAS® Visual Analytics • SAS® Visual Data Mining and Machine Learning(いずれも実行基盤はSAS® Viya®)
Dompé farmaceutici社、予測分析と定量的疾患モデリングのためにSAS® を活用
どの患者やどのような人口集団がどの将来の医薬品に最も良い反応を示すことになるのか? また、製薬企業はどうすれば、良好な患者アウトカムの予測に使うプロセスを加速することができるのか?
すべての起点となるのはデータだ。サイエンスドリブンなバイオ製薬企業であるDompé farmaceutici(読み方≒ドンぺ・ファルマチェウティチ)社は、未解決の医療ニーズに対する革新的な医薬品の開発に取り組んでいるが、そこでは今、SASのテクノロジーが同社におけるデータの収集方法とモデリング方法を変革しつつある。
私たち事例制作チームは、Dompé社のR&Dプラットフォームおよびサービス部門の責任者であるアンドレア・ベッカリ(Andrea Beccari)氏と、上級ソフトウェア・エンジニアであるアンナ・ファーヴァ(Anna Fava)氏にインタビューを行い、同社がこの進化する事業環境の中でどのように舵取りしているのかについて見解を伺った。
サイクル内のもっと早い段階で予測分析を行うことにより、我々は医薬品開発プロセスをスピードアップし、より迅速に患者に解決策を届けることができます。 Andrea Beccari Head of R&D Platforms and Services Dompé farmaceutici
昨今は製薬企業にとってエキサイティングな時代ですが、舵取りが難しい時代とも言えます。御社が今直面している主な課題は何でしょうか?
ちょうど今、製薬業界は転換期を通過中です。理由の一つは、いくつもの新しいプレーヤーがデジタル医療サービス市場に参入しつつあるという事実に関連しています。スマートウォッチや健康モニタリング・アプリのようなものを考えてみてください。もう一つの要因は、我々の分野におけるイノベーションを加速する必要性が切迫していることです。
この業界は現行の知識とテクノロジーで可能な最大限のことを達成済みです。今現在の課題は、腫瘍学、心臓病学、免疫学、代謝性疾患に関連する病理など、複雑かつ全身的な病理をめぐるものです。これらの病理に関しては、従来のアプローチが非効果的である徴候が示され始めています。これらの疾患に関しては、「エフェクター」(タンパク質または酵素に結びつきその活性を変更または規制する分子)が一切存在しません。そのため、我々が優れた結果を達成するためには全身的な視野を持って行動する必要があります。
今日に至るまで、我々はこのレベルの複雑さを取り扱う知識やモデリング能力を持っていませんでした。根本的な理由の一つは、データが適切に収集されたことがいまだかつてなかったことです。ですから、我々の最初のステップには、適切なデータを適切なタイミングで収集する取り組みが含まれます。
伝統医学は試行錯誤に基づいており、臨床試験にかけられた分子の97%は失敗しています。3%の分子が試験に成功する前提で医薬品を開発するのは高コストです。さらに、それらの医薬品に対する人口集団の反応に関する追跡調査は、典型的にはランダム抽出方式で行われてきました。
今日、医学は予測的アプローチへと移行しつつあります。このアプローチは、我々が「どの人口集団がどの医薬品に最も良く反応するか」を事前に理解するために役立ちます。ですから、目下の課題は、こうした予測的視点を念頭に置いてデータを収集し、それを定量的疾患モデリングに活用することです。
私たちは最近、コロナウイルスと闘うために設計された画期的なスーパーコンピューティング・プロジェクトであるExscalate4Covについて多くのことを耳にしています。この野心的プロジェクトの調整において、Dompé社は欧州の7つの国から18の機関をまとめ上げました。このことは、業界のコンソーシアムやコラボレーションの価値にあらためて光を当てているように思われます。これらの新しいエコシステムは今、Dompé社のアプローチをどのように変えつつあり、また、御社の未来をどのように形成する可能性があるのでしょうか?
未来はオープンデータにリンクしています。そして、オープンデータというアプローチが存在するところには、エコシステムというコンセプトも存在します。
製薬市場の中堅企業であるDompé社にとって、このような戦略的および協働的な環境の一部でいることは極めて重要です。より広大なグループに参加することで、当社には多種多様なキャパシティを持つ組織へのアクセスがもたらされます。こうした取り組みは、我々がExscalate4Covプロジェクトで実践したように、当社のポテンシャルをフルに発揮するために役立ちます。
今現在、我々は欧州における複数のプロジェクトに関与しています。例えば、間もなく始まる新しいイニシアチブでは、欧州全域のすべての医薬品の再目的化(既に使用されている医薬品の別の使用法の評価)を追求していきます。また、当社の公衆研究システムを活用してソリューションの開発を行う組織と一緒に、欧州全体の約30のプロジェクトに参加することを計画しています。多くの場合、これらの組織は臨床的エビデンスを持っていますが、臨床的検証を達成したり解決策を患者に届けたりするためのリソースが不足しています。業界コンソーシアムは、これらのハードルの克服に役立ちます。
広大なエコシステムを頼りすることで、当社のビジネスモデルは多大な好影響を受けてきました。我々は、製薬業界の成長は世界中で戦略的パートナシップを形成できるかどうかにかかっていると確信しています。これにはテクノロジーや開発モデルを共有・統合することが必要不可欠です。
こうした考え方の下、我々は最近、英国のバイオ製薬スタートアップであるEngitix社と提携しました。当社は、同社が線維症や特定タイプのがんに対する新しい治療法を特定できるよう支援するために、当社のExscalateプラットフォームへのアクセスを提供しました。Engitix社は、研究を開始するための “匿名化済み患者データ” を提供しました。この提携が新薬の開発および商業化の迅速化につながることを願っています。両社は協力して、未解決のニーズを抱えている患者のための新たな解決策の提供を目指します。
Dompé farmaceutici社に関する事実と数字
イタリアのミラノ
本部所在地
800以上
従業員数
6,000万
年間の製造ユニット数
このシナリオでは、御社におけるSASのデータ・アナリティクス・プラットフォームの活用法はどのように進化しているのでしょう?
SASのアナリティクス・ソリューションは、当社の医薬品設計・開発プロセスの進化と緊密に統合されています。これらのプロセスには安全性の考慮が必須です。そのため、我々は現在、予測分析(予測的アナリティクス)を使って毒性と副作用を予測しています。
サイクル内のもっと早い段階で予測分析を行うことにより、我々は医薬品開発プロセスをスピードアップし、より迅速に患者に解決策を届けることができます。
各種のアナリティクス技法 ── これには人工知能(AI)も含まれます ── を組み込むことで、我々は、提案された治療法の毒性や副作用を予測して有害事象を回避することができます。当社がSASで成し遂げた最大の導入効果は、新しい分析モデルを迅速に本稼働環境に組み込めるようになったことです。これにより、従来の手間のかかるプロセスが加速され、新しい医薬品をより迅速に市場に投入できるようになっています。
モデルの検証は、SASが役立っている基本的タスクの一つです。予測分析のためにモデルを定義する際は、モデルの開発段階と適用段階の間で不整合が生じるリスクが常にあります。言い換えると、モデルを開発しても、それが実世界でどのように利用されるかという観点からすると “意味をなさない” 可能性もある、ということです。
COVID-19のパンデミック期間中は、未検証のモデルから予測が生成されたことが原因で多大な混乱が生じました。何の統制もありませんでした。それなのに、複数の予測が科学コミュニティ、医師、一般市民によって共有されたのです。
モデルを検証したり、シミュレーション分析の結果に統制を適用したりできる能力は、「当社が市場に投入する医薬品」や「その開発を支えるアナリティクス・エコシステム」にとって不可欠な構築要素です。SASは、これらの機能を、技術スタッフによる優れたサポートと一緒に提供してくれます。これこそまさに、「より効果的な治療法の実現に向け、研究を強化および加速する」という当社のミッションを追求していくために我々が必要としていることです。
本記事に掲載された導入効果は、各企業によって異なる状況やビジネスモデル、入力データ、業務環境に固有のものです。SASの紹介する顧客体験は、各企業に固有のものであり、業務面や技術面の背景もそれぞれ異なるため、各事例に掲載されたあらゆる証言は、導入の典型例を示すものではありません。導入にともなう金銭的効果、導入結果、ソリューションのパフォーマンスなどの特徴は、個別の顧客のコンフィグレーションや使用条件に左右されるものです。本事例は、すべてのSASの顧客が当該事例と同じ導入効果を得られるとするものではなく、そうした効果を保証するものでもありません。SAS製品および提供サービスの保証内容は、各製品・サービス向けに締結された契約書内の保証条項に記載された内容に限られます。したがって、本事例に掲載された内容は、それらの保証内容をなんら補足するものではありません。事例に掲載された顧客は、各事例をSASとの契約にもとづいて提供しているか、SASのソフトウェアの導入成功にともなう体験を共有しているものです。