株式会社ディノス・セシール

マーケティングPDCAの高速化を目的にSASを採用
分析結果を踏まえて実験的施策を展開

株式会社ディノス・セシールは、顧客分析の高度化と、マーケティングPDCAの高速化を目的にSASを導入。顧客分析によってさまざまな事実を明るみに出し、そこで推察される仮説に基づいて、実験的な施策を展開している。施策と結果はすべてノウハウとして蓄積され、次の施策に生かされる。今後はさらなるマーケティングの高度化を目指し、データ分析担当者の裾野拡大やWebデータとの連携強化にも取り組む。

販売推進部 部長代行 鳥塚 勅昭氏
株式会社ディノス・セシール
セシール事業ディビジョン 業務推進本部

マーケティングPDCAを高速に回す

株式会社ディノス・セシール(以下、ディノス・セシール)は、2013年7月に株式会社ディノスと株式会社セシールの合併により誕生した総合通販大手だ。アパレル、美容・健康商品、家具、インテリアなどの通信販売事業のほか、法人向け事業、保険事業、店舗・催事事業などを展開している。セシール事業ディビジョン 業務推進本部 販売推進部 部長代行 鳥塚 勅昭氏は、「通販業ではビジネスの特性上、ビッグデータが語られる以前から、伝統的に大量のお客様データを扱っています。通販業を営むわれわれにとって、顧客の属性や購買履歴などの情報は、まさに貴重な財産。データ活用、データ分析を活かして、お客様をより深く知ることがビジネスの出発点になります」と語る。

通信販売事業では、顧客分析によって既存顧客の休眠化・離反を食い止め、優良顧客を維持することが大切だ。顧客分析は、統計的アプローチで行う。そこで導かれる仮説を検証し、改善案を立案・実行するマーケティングのPDCAを高速に回すため、同社は2011年11月よりSAS® Marketing Automationの活用を始めた。

セシール事業ディビジョン 業務推進本部 販売推進部 販売推進課 礒野 秀二郎氏は、「SASの導入に際しては、SASのコンサルタントのサポートを得て、分析担当者がデータの取り込み方やデータ加工の方法、データモデルの作り方を学びました。また、重回帰分析やツリー分析、アソシエーション分析、クラスタ分析などの手法を、通販業におけるマーケティング事例と絡めて説明してもらったため、具体的なイメージを持って分析業務にあたることができました」と話す。

優良顧客は、どのような顧客か

ディノス・セシールがSASのサポートを得て取り組んだのは、「優良顧客」を維持・拡大するプロジェクトだ。当初は、Recency(最終購買日)、Frequency(累計購買回数)、Monetary(累計購入金額)の指標で顧客を分類するRFM分析にもとづいて、優良顧客を定義していた。しかし、たとえば累計購入金額だけに注目すると、1度だけ大量に購入した顧客層のスコアが高くなりすぎるといった問題がある。さらに分析を進めた同社は、RFMの指標だけではなく、複数のジャンルにまたがる商品を、複数のシーズンに渡って購入する顧客層が、同社にとって「長くお付き合いのできるお客様」、すなわち優良顧客であるという事実が見えてきた。取引期間が長ければ長いほど、購買頻度や年間の購入金額も大きい傾向があるのだという。

礒野氏は、「特定のジャンルの商品だけを年間に1度だけ買っていただいたお客様は、その“商品”だけを欲しいお客様と言えます。一方、アパレル、食品、美容などの複数のジャンルの商品を年間に複数回購入していただけるお客様は、“私たちの提供する”商品を好きになっていただいていると言えるでしょう」と語る。

同社は、SASによる顧客分析の結果から導かれる仮説を検証し、トライ&エラーを重ねながら改善案を立案・実行するマーケティングのPDCAサイクルを高速に回している。セグメント・マーケティングの精度を継続的に高め、優良顧客の維持はもちろん、既存顧客の休眠化・離反を防いだり、継続的な購入を促したりするための施策をより迅速に展開できるようになった。

実験的な施策でノウハウを得る

ディノス・セシールは、優良顧客の育成・拡大にも着手した。顧客の買い回りを支援する施策では、試験的に、インナー、アウター、ライフグッズ、美容健康商品、メンズファッションの5ジャンルをまたいだ商品を掲載する総合カタログを発刊するなどの手を打った。総合カタログに掲載するのは各ジャンルの目玉となる約1,000商品。うち50品目を値引きすることで試し買いしやすい仕掛けとした。

礒野氏は、「アソシエーション分析により、あるカタログで、ある領域の商品を注文したお客様層が、別のカタログのどの領域の商品を購入しやすいかを定量的に可視化しました。すると、たとえばレディースパンツを購入いただいたお客様は、メンズパンツも同時に購入していただいているなどの事例が浮き彫りになってきたのです。カタログ構成は、これらの分析結果を反映したものとし、同一ページ内に関連度の高い商品を配置することで、買い回り率を高めようとしました」と話す。

こうして、複数のジャンルをまたいで商品を買い回りやすい顧客セグメントを対象に総合カタログを送付することで、カタログの無駄打ちを防ぎ、高い反応率を達成することができた。総合カタログは約2年間でその役割を終えたが、そこで得られたノウハウは現在の施策に生かされている。

さらに礒野氏は、「SASを使えば、試行錯誤を繰り返しながら柔軟に分析モデルを開発できるため、さまざまな実験的な施策を素早く実行に移せます。また、マーケティング施策の効果を検証するサイクルと、分析モデルを開発するサイクルを並行運用することで、より精度の高い分析モデルを構築することができます」と語る。

ディノス・セシールは、データ分析担当者の裾野を広げることにも取り組む意向だ。より多くの社員が、業務とデータを理解して必要なデータ分析を行い、施策の効果を検証し、改善につなげられることが競争優位の源泉になると考えているためだ。

鳥塚氏は、「トライ&エラーを繰り返しながら分析モデルを高度化できるSASは、ビッグデータから収益拡大につながる洞察を引き出すツールとして、とても有効です。より多くの社員が活用できるのが望ましいと考えています」と話す。

また礒野氏は、「SAS活用という点では、ウェブとの連携も強化するなど、新たな領域への適用も検討しています」と加える。

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課題

既存顧客の休眠化・離反を食い止め、優良顧客を維持するためのマーケティングPDCAを高速に回すために、新たな統計解析基盤が求められた

ソリューション

利点

顧客分析の結果から導かれる仮説を検証し、改善案を立案・実行するサイクルを高速化。セグメント・マーケティングの精度を高め、最適な施策を展開している