大和証券株式会社/株式会社大和総研

SASのAIテクノロジーの活用により営業提案力を強化、
商品購入率の2.7倍向上を実現
証券EBMのさらなる高度化へ

大和証券株式会社(以下、大和証券)は、AIなどのテクノロジーを活用した提案力の強化と業務効率向上を図るためにAI推進室を設置。SASを活用し、顧客分析の結果にもとづいた最適なアクションを営業員に配信する仕組みを実現した。これにより顧客一人ひとりのニーズに最適な商品提案が可能となり、商品購入率2.7倍、離脱率半減など大きな成果をあげている。短期間での成果には、株式会社大和総研(以下、大和総研)のデータサイエンスチームによる業務知識に基づいた的確な支援と、SASの豊富な実績に基づくコンサルティング・サービスも貢献している。

顧客ごとの状態変化を分析・予測し、その結果にもとづいた最適なアクションを全国の営業員に配信しています。結果、商品別購買予測に基づく顧客ニーズにあった商品提案や、顧客離脱予測に基づくタイムリーな顧客フォローが可能になりました

長谷川 理氏
AI推進室長

高い操作性と豊富な分析機能、そして豊富な実績

大和証券は、日本を代表する総合証券会社だ。店舗やコンタクトセンター、インターネットでの営業員によるきめ細かい顧客サポートを提供しており、「Passion for the Best」をスローガンに、顧客に寄り添う金融機関として、圧倒的なクオリティナンバーワンの確立を目指している。

そのためにはより深い顧客理解にもとづいた提案力の強化が不可欠であり、高度な顧客分析が行える環境が必要だった。同社は2015年4月、営業企画部にAI推進室を設置し取り組みを開始した。

AI推進室長 長谷川 理氏は、「以前はMicrosoft Accessなどで分析を行っていましたが、処理時間やファイルサイズの点で限界が来ていました。顧客分析を行うために統計解析ツールを導入したこともありましたが、使い勝手の問題でユーザーが増えず、本格的に活用するには至りませんでした」と当時を振り返る。

導入に際してはSASを含む4製品で検討し、SASが機械学習をはじめ豊富で高度な分析手法を提供していることや、専門知識がないビジネスユーザーでも簡単に操作できるユーザーインターフェースでETL作業を実行できること、そして大量データを高速に取り扱えるハイパフォーマンスな処理エンジンを兼ね備えている点などが評価され、SASの導入が決定した。

さらにこうした製品の特長以外にも大きな判断要因があった。AI推進室 次長 大堀 崇志氏は、「SASは国内外の銀行・証券をはじめとする金融機関で豊富な実績があり、専門性の高いコンサルティング・サービスも提供しています。手探り状態からスタートする私たちにとって頼りがいのあるパートナーでした」と話す。

現場の満足度84%を獲得した仕組み

SASの活用を始めたのは、2015年9月。大和証券AI推進室の4名に加え、SASのコンサルタント、さらに2016年1月には、新たに発足した大和総研フロンティアテクノロジー本部からもメンバーとして加わった。

長谷川氏は、「私自身は入社以来、企画部門や新規事業の立ち上げを担当してきました。大堀はITの専門家。他のメンバーもさまざまな部署での業務を経験しています。大和総研のデータサイエンスの専門家とSASのコンサルタントにサポートしてもらいながら、それぞれのバックグラウンドに基づく視点を通してデータから浮かび上がる事象を判断しています」と話す。

データ整備と並行して進めたのが、SASのAIテクノロジーを活用した営業員のサポートシステムの構築だ。顧客ごとの状態変化を分析・予測し、その結果にもとづいた最適なアクションを全国の営業員に配信する仕組みである。これにより商品別購買予測に基づく顧客ニーズにあった商品提案や、顧客離脱予測に基づくタイムリーな顧客フォローなど、顧客一人ひとりに最適な商品提案と情報提供が可能となった。

例えば担当営業員のCRMシステム画面には、保有商品に重要な値動きがあった顧客や、運用報告書の初回郵送タイミングが近づいている顧客など、今、対応が必要な顧客リストと内容が表示される。さらに顧客からの受電時や来店時には、分析結果に基づき、その顧客に提案すべき商品や情報も一覧で表示されるのだ。

「郵送される運用報告書をあまり読んでいないお客様もいらっしゃいます。そうしたお客様に初回送付の前に適切にアドバイスをすることで、満足度も大きく向上します。継続保有いただいたり、買い換えていただいたり、といった意思決定もより効果的にサポートできます」(同氏)

この仕組みは、現場からも好意的に受け止められた。営業員の満足度は84%と高い。収益面からの成果も見られた。購入率は2.7倍に増加し、離脱率は半減した。

「表示されるアドバイスの表現や言い回し、お勧めすべき商品の粒度には注意を払っています。分析結果に基づいて詳細な商品名までを表示するよりも、お勧めする商品についてはある程度、現場の判断に任せた方が高い効果が出たケースもあります。」(同氏)

大和総研フロンティアテクノロジー第一部 次長 原田 辰彦氏は、次のように話している。

「プロジェクトでは現場からのフィードバックを大切にしながら、AIによる分析結果と現場の知見のバランスにも気を配って進めています」

人を活かすための“AI”活用を目指して

導入当初はAI推進室だけだったSASのユーザーも、一年半が経過し全社複数部門に増加、今後もさらに拡大が見込まれる。SASの導入によって、ほぼ全ての金融商品が予測対象として網羅され、顧客の特性や取引状況に応じて、ピンポイントで最適な商品提案を行えるようになった。

今後は、上場企業の有価証券取引書や適宜開示情報といった社外の公開データの活用も検討している。また、さらなる顧客理解を進めるとともに、対面営業とデジタルチャネルの融合やカスタマージャーニーの最適化、証券EBMのさらなる高度化なども視野に入れている。

「我々の強みは、やはり、経験豊かな営業員の存在です。お客様に安心してご利用いただくためにも、弊社で口座を開いてくれるお客さまが、店頭であっても電話であっても、必ず“その先に人が居る”と感じて頂けるサービスを展開する。そのためには、AIをはじめとするテクノロジーを活用した顧客理解と効率化は不可欠です」(長谷川氏)

事実、データサイエンスへのニーズとテクノロジー活用の必要性は高まるばかりだ。大和総研 フロンティアテクノロジー第一部 上席課長代理 森岡 嗣人氏は、「現在はグループ内の支援を中心に行っていますが、今後はグループ外へのサービス提供も積極化していく予定です」と話している。

課題

より深い顧客理解にもとづいた提案力の強化が求められ、高度な顧客分析を行える環境が必要だった

ソリューション

利点

顧客一人ひとりのニーズに最適な商品提案が可能になり、商品購入率は2.7倍に増加し、離脱率は半減した