日本アムウェイ合同会社
ビジネスユーザーが必要な分析を迅速かつ容易に行える環境を構築し、 企業全体の分析力向上へ
―多様な分析ニーズに対応し、ディストリビューターの販売活動を支援―
日本アムウェイ合同会社(以下、日本アムウェイ)は、ディストリビューターの活動をサポートする意思決定支援システムとして1990年代にDWH専用データベースとフロントツールを導入し、長く運用してきた。しかし、このフロントツールは拡張性を欠き、データ処理量が増加するに伴ってパフォーマンスが低下してきた。そこで同社はSAS®Enterprise Guide®を導入し、アナリティクス経験の少ないビジネスユーザーでもGUIを介して容易にデータを加工 ・ 分析できる環境を目指した。意思決定スピードの迅速化や分析担当者の負担軽減などを実現する情報活用基盤としての利用を始め、近く運用が始まるグローバルDWHのフロントにも活用する構想だ。
ビジネスの特性に合わせた分析で営業効率を高める
日本アムウェイは、消費者の日々の生活を豊かにするさまざまな商品を取り扱う企業だ。 歴史ある家庭用洗剤や主力の栄養補給食品や化粧品だけでなく、素材を厳選した味噌や醤油、塩などを「12ヶ月の食卓」ブランドとして国内で展開するなど、グローバル企業でありながら、市場に求められる商品を提供していることが特長だ。
同社では、独立事業主のディストリビューターを通じて販売を行うダイレクト・セリング方式をとっている。ディストリビューターはアムウェ イブランドの商品を仕入価格で購入し、標準小売価格などで小売りしたときの差額を収入として受け取ることができ、購入額が一定の水準を超えると実績に応じてボーナスが支払われるインセンティブの仕組みもある。また、小売り活動をしない消費者向けに、商品を購入するショッピングメンバーという会員制度も設けている。ディストリビューターとショッピングメンバーは、国内で約86万人を数える。 すべての購買行動は、ディストリビューター/ショッピングメンバーから同社への注文で始 まる。こうしたビジネスの特性上、ディストリビューター/ショッピングメンバーにひも付く製品購買履歴やボーナスの支給累計額など、極めて広範囲の情報は、精度の高いデータとして社内システムに蓄積されてきた。
それらのデータを活用すべく、同社は1990年代半ばに国内独自の意思決定支援システムとしてDWH専用データベースとフロントツールを導入。分析担当者と約数十名のビジネスユーザーがディストリビューターのビジネスを適切にサポートしたり、市場ニーズに合わせた新商品を開発したりするための分析基盤として活用してきた。しかしながらこのフロント ツールは拡張性に乏しく、ビジネスの成長とともによりニーズに合ったツールの必要性を感じるようになった。
グローバルで共有するDWHのインタフェースにSAS Enterprise Guideを据える事が決定しています。社内の分析スキルの底上げと平準化を推進し、実践的な分析環境を実現するにあたってSASは最大の切り札になるでしょう
五十嵐 貴子氏
ビジネス・インテリジェンス本部 カスタマー・アナリティクス・グループ リーダー
要件とのギャップを確認する入念なテストを経てSASを採用
日本アムウェイは高度な分析のために、長くSASシステムを利用してきたこともあり、課題解決のためのソリューションとしてSAS Enterprise Guideをテス トすることにした。既存DWHとのインタフェースとして利用することを前提に、GUIによる直感的な操作が可能なこと、ビジネスユーザーも迅速なデータ 加工を実施できることなどを確認した。ビジネス・インテリジェンス本部 カスタマー・アナリティクス・グループリーダー五十嵐 貴子氏は、「分析業務は思考を途切らせることなく、連続的に処理を進められることが極めて大切です。思考の連続性の分断は新たな分析視点の発見を妨げ、分析の品質を低下させてしまう要因になります。そこで、パフォーマンスもクリティカルな要件としました」と語る。
高負荷の検索実行レスポンスを測定するテストでは、旧フロントツールと比較してSASのパフォーマンスが圧倒的に高いことが明らかになった。分析モデル 構築においてもメモリリソース消費を大幅に抑えられることも確認した。同社、ビジネス・インテリジェンス本部カスタマー・アナリティクス・グループ シニアアナリスト中村 野路子氏は、「SAS Enterprise Guideは、データや分析プロセスなどといった情報基盤上のあらゆる資産をメタデータとして統合的に管理できます。ユーザーの分析プロセスを可視化できるだけでな く、作成した分析プロセスを全社で共有し、ユーザーが目的に合った分析プロセスを迅速に実行できると判断しました」と話す。
業務要件に合わせて機能を実装し、ビジネスユーザーからヒアリングした分析ニーズをシステムに反映するなどの開発作業は約2カ月で完了。SAS Enterprise Guideの本格運用に先立ち、2011年春からビジネス・インテリジェンス本部のスタッフによるパイロット運用を開始した。
分析力をステップ・バイ・ステップで高度化する
日本アムウェイでは現在、数人の分析担当者がSAS Enterprise Guideを活用し、分析業務の効率を大幅に向上することに成功した。現場にも展開すべく環 境を設定し、仕上がりや使い勝手などを確認している段階だ。近く、地域別の売上高や各ディストリビューターの商品購入履歴を可視化するデータ検索だけでなく、これまで現場が分析担当者に依頼してきたデータ分析までを幅広くカバーするツールとして約数十名のビジネスユーザーが利用することになる。同社、ビジネス・インテリジェンス本部 カスタマー・アナリティクス・グループ アナリスト吉本 明子氏は、「導入したのはSAS Strategy Managementというスイート。SAS Enterprise Guideのほかに、SAS Web Report StudioやSAS BI Dashboardなどの製品をライセンス内で利用でき、そのすべてが業務に役立つのでとても助かります」と語る。
SASの導入によって期待できる効果として大きいのは、ビジネスユーザーが必要な分析を迅速かつ容易に行えることだ。たとえば、これまでビジネスユーザーは最終購買日、購買頻度、累計購買金額の3つの指標を軸に優良顧客を判別するRFM分析、特定製品購入者の属性分析、購入見込みの高い顧客のターゲティングなどといった難易度の高いものからそうでないものも含め広範囲な内容を分析担当者に依頼し、その結果を最適なマーケティング施策の根拠にしてきた。中村氏は、「分析はステップ・バイ・ステップでレベルアップしていくことが重要です。この点でSAS Enterprise Guideは頻度が高く、定型化可能な分析について、プロセスをメタデータリポ ジトリ内に登録すればビジネスユーザーと共有でき ます。これにより、あらゆる階層のユーザーが分析モデルを再利用して意思決定スピードをアップできること、負担の軽減した分析担当者が高度な分析モデルの開発に注力できることなどの効果を期待できます」と話す。
日本アムウェイでは、米国本社が主導するグローバルDWHプロジェクトも同時並行で進んでいる。これは情報基盤をグローバルで一本化し、世界58の国・地域に及ぶ支社が共通のデータソースにアクセ スできる環境の構築を目指すもの。この中で、今回構築した分析環境を、グローバルDWHのフロント として利用することが決定している。五十嵐氏は、 「グローバルDWHにもレポーティングツールはあるのですが、SASはレポーティングの枠を超えています。豊富な機能を生かして、さらなる業務効率化を推進したいと考えています」と話している。
日本アムウェイは今後も、SASによって分析スキルの底上げと標準化を進めていく。さまざまな局面で最適な意思決定を支援してくれる戦略的情報基盤としてSASはますます不可欠な存在になるはずだ。
課題
旧フロントツールは拡張性に乏しく、データ処理量が増加するとパフォーマンスが低下してしまうなど、ビジネスの成長とともに発生する問題があった。社内のあらゆる分析ニーズに対応することも求められた
ソリューション
高品質かつ迅速なデータ検索から、旧フロントツールでは処理できず、現場が分析担当者に依頼してきた高度なデータ分析までを幅広くカバー
利点
直感的なGUIで構築した分析モデルを共有し、分析結果にもとづいた迅速かつ的確な意思決定を行える
製品
- SAS® Enterprise Guide®
- SAS® Web Report Studio
- SAS® BI Dashboard